【セキュリティ人材の育成】実践的なセキュリティ訓練の“演習場”「CYBERIUM(サイベリウム)/Shinagawa」

初心者から専門家まで、リアルな体験を通じてセキュリティレベルを向上させる富士通の実践的な訓練施設をレポートする。

サイバー攻撃を疑似体験できる「サイバーレンジ」

「セキュリティ技術に関する演習を安全かつ効率的に実施するために、その環境を仮想化技術により提供する「サイバーレンジ」として富士通が独自開発したのが「サイベリウム」だ。サイベリウムには、仮想環境上に実際の業務データの流れを構築し、攻撃側と防御側に分かれて疑似体験できるコンテンツが豊富に用意されており、初心者から専門家の育成まで幅広いニーズに応えることが可能となっている。

「対サイバー攻撃のための”仮想演習場”と考えていただけるとイメージしやすいでしょう」と富士通ラーニングメディアの古川勝久氏は説明する。

サイベリウムでは、日本のセキュリティ技術者に求められる役割・スキルに合わせた多様な教育・演習環境を提供しているが、それを可能にしている理由の1つがその基本アーキテクチャだ。

例えば教育用セットでは、自社ネットワーク全体は見えるが潜伏している攻撃は見えない「防御側ビュー」と、最初はファイアーウォールとProxyサーバしか見えないところからスタートする攻撃側ビューが用意され、攻撃が進むに連れてそれぞれの立場からはどのように状況が見えるのかなどを理解できるようになっている。

そして2017年7月、富士通ラーニングメディアが開設した「CYBERIUM/Shinagawa」では、サイベリウムを活用し、富士通グループのセキュリティ人材育成ノウハウをベースとした実践的な内容を盛り込んだ研修を、最新のテクノロジーとともに学ぶことができるようになっている。実際にサイバー攻撃の脅威を体験し、訓練を通じて新たなビジネス創出のチャンスに変えてゆくための発想力を養う場が提供されるのである。

富士通の佳山こうせつ氏は、「ちょっとした企業1つ分ぐらいの環境を仮想的に構築していますので、サイバー攻撃を受けると何がどのように起きてしまうのかをリアリティをもって体感できるようになっています」と話す。

富士通が現場で実践する技術を顧客に提供

多くの企業に向けたセキュリティ教育はもちろんのこと、富士通社内でのセキュリティ人材育成にもサイベリウムは活用されている。

富士通の奥原雅之氏は、「サイバーセキュリティに関する技能を持った富士通グループの人材を発掘・育成する『セキュリティマイスター認定制度』の教育で蓄積した技術やノウハウをお客様にも提供していこうというのがサイベリウムの趣旨の1つです」とコメントする。

例えばサイベリウムで開催するセキュリティ教育コースのうち「サイバーレンジによる実践的インシデント訓練」コースでは、セキュリティインシデント発生時における初動対応を実現するために、簡易的な調査や分析が行えることを確認し、また「サイバー攻撃手法と攻撃検知手法」コースでは、APT攻撃(高度な標的型攻撃)を模した攻撃演習シナリオに沿って、攻撃者の立場で実際に企業ネットワークに模した環境に攻撃を実施するとともに、防御側の立場で実際に攻撃の痕跡を検知する。

CYBERIUM (サイベリウム)/Shinagawaの様子

技術の習得とコミュニケーションを通じた人材育成

デジタルビジネスを推進する人材育成を狙いとした「FUJITSU Digital Business College」(注1)の研修でもサイベリウムは活用されており、例えば「Securityコース」ではCSIRTコマンダー育成に向けた高度な演習なども実施されている。

富士通ラーニングメディアの高橋正幸氏は、「研修では、実践的なセキュリティ技術が身につくのに加えて、参加者同士のコミュニケーションを通じて組織を越えた横のつながりも構築できます」と説明する。

受講生からは、「これまでにイントラ環境へ侵入後の攻撃者の行動に不明な点が多かったが侵入拡大や権限昇格またその手口を知ることができて良かった」など、前向きな声が数多く寄せられている。

「サイベリウムでは様々なセキュリティ研修をご提供しており、国内ではラインナップが充実していると自負しています。まずは一度訪ねていただきたいですね」と高橋氏は呼びかけた。

  • (注1)
    19年度以降は複数コースを組み合わせ、セキュリティ専門家や一般の技術者向けなど対象に応じ広くご提供します。
サイベリウムで実施されるセキュリティ教育コースの一覧
富士通株式会社
サイバーセキュリティ事業戦略本部
サイバーディフェンスセンター
センター長
奥原雅之氏
富士通株式会社
サイバーセキュリティ事業戦略本部
サイバーディフェンスセンター
シニアマネージャー、
セキュリティマイスター、CISSP
佳山こうせつ氏
株式会社富士通ラーニングメディア
取締役兼執行役員
ナレッジサービス事業本部長
古川勝久氏
株式会社富士通ラーニングメディア
ナレッジサービス事業本部
第ニラーニングサービス部
プロジェクト部長
高橋正幸氏
  • (注)
    本特集は日本経済新聞出版社の許可を得て、「日経MOOK」3月12日号『まるわかり!サイバーセキュリティ』(日本経済新聞出版社刊)に掲載された内容より転載したものです。
    記事作成時点の情報のため、その後予告なしに変更されることがあります。あらかじめご了承ください。

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