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サプライチェーンの変革を加速させ、生産性、レジリエンス、持続可能性を 高めよう

数十年にわたる経済のグローバルな進化、それに続くデジタル化の広がりは、ビジネスチャンスの拡大や生産性の向上をもたらしました。また、経済のグローバル化に伴い、サプライチェーンもグローバル的に拡大し、世界の隅々まで行き渡るようになりました。その一方で、多様化・変化する顧客ニーズへの迅速な対応といった課題や、サプライチェーンの寸断といったリスクも増加しています。そのため、2010年代半ばから、エンドツーエンドの次世代デジタルサプライチェーンの構築に関する議論が盛んに行われています。

2020年に発生したCOVID-19パンデミックによる経済活動の混乱が現実のものとなり、サプライチェーンのデジタルトランスフォーメーション(DX)の大きな原動力となっています。さらに、地政学的リスクの増大、自然災害の頻発、サイバー攻撃の増加によるシステム障害などを考えると、サプライチェーンの寸断リスクは今後も存在し続けるでしょう。産業界は、リアルな現場を含めたグローバルサプライチェーンのビジネスモデルの再設計と、リスクマネジメント手法の再構築が必要です。

また、地球規模での環境・温暖化問題の解決への危機感、デジタルデバイドや所得格差の拡大、労働者や技術者の不足などから、持続可能性やヒューマンセントリックなどの新しい価値の実現が社会から強く求められています。つまり、エンドツーエンドのデジタルサプライチェーンの構築、レジリエントなサプライチェーンの設計、サプライチェーンの持続可能性の実現が、次世代グローバルサプライチェーン変革の核となります。本稿では、上記3つのサプライチェーン変革に関する考察を行い、次世代サプライチェーンに向けた3つの提言をまとめます。

エンドツーエンドのクローズドループ型 デジタルサプライチェーンの実現

1980年代以降に進展した経済のグローバル化は、ヒト・モノ・カネの世界的な移動を促しました。効率を追求するため、サプライチェーンを含む企業経営がグローバルに拡大し、生産地と消費地の分離も進みました。また、進展するIT技術は、企業経営にグローバル化を増幅させるツールとして機能するようになっています。
需要面では、インターネットの普及が進み、デジタルにエンパワーされた消費者のニーズが多様化し、変化のスピードも加速しています。

サプライチェーン・トランスフォーメーションに関する活発な議論

一方、世界の隅々まで張り巡らされたサプライチェーンの効率化を図ることが難しくなり、顧客ニーズの多様化や変化にどう対応するかが新たな課題として浮かび上がってきました。
つまり、サプライチェーンは、オペレーションの最適化(生産性の向上)と、柔軟性、可視性、透明性に対する顧客の期待の高まりを同時に満たすことが難しくなっています。

2010年代半ばから、サプライチェーン変革の一環として、エンドツーエンドの次世代サプライチェーンの構築が議論されるようになりました。議論された次世代サプライチェーンの主な特徴は、デジタル化、オンデマンド、常時接続の3点でした(※1)。つまり、市場がサプライチェーンの効率化だけでなく、俊敏性や柔軟性を求める中、自動化とデジタル技術を うまく組み合わせ、優れたパフォーマンスを発揮する次世代モデルが期待されています。

図1は、従来の線形サプライチェーンモデルから統合されたデジタルサプライチェーン(クローズドループ)を示しています。従来のサプライチェーンは直線的に展開するため、サプライチェーンの各構成プロセスは前後の関連プロセスにのみつながります。そのため、サプライチェーン全体の情報や出来事をリアルタイムに把握することはできません。いわゆるブルウィップ効果が発生しやすい。つまり、サプライチェーンをさかのぼるたびに需要の変動が増幅されるため、正確な情報が歪められます。

※1  MHI(2017)“Next-Generation Supply Chains: Digital, On-Demand and Always-On”

従来のサプライチェーンモデル図と統合されたデジタルサプライチェーンエコシステム図
図1 従来の線形サプライチェーンからデジタルにエンパワーされたサプライエコシステムへ

出所:Nada R. Sanders & Morgen Swink “How to Build a Digital Supply Chain: Focus On Capabilities”を参考に著者が修正・作成

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【目次】
サプライチェーンの変革を加速させ、生産性、レジリエンス、持続可能性を高めよう

  1. エンドツーエンドのクローズドループ型 デジタルサプライチェーンの実現
  2. 顧客と消費者の価値最大化を目指すレジリエントなサプライチェーンの構築
  3. サステナビリティを実現するサプライチェーン変革の推進
  4. 次世代サプライチェーン変革への3つの提案
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