BtoB企業を中心として、マーケティングオートメーション・ツールを導入する企業が増えています。ただ、ツールを導入したものの成果を挙げられない企業が多いようです。
富士通総研が年商上位1万社を対象として実施した「デジタル化への認識とデジタルマーケティングの実態調査」(2016年9月実施)によると、デジタルマーケティングに取り組んでいる企業は平均で35.3%でした。さらに、今後取り組む予定または検討中の企業も38.1%あり、デジタルマーケティングは注目されているテーマです。
デジタルマーケティングに取り組んでいる企業のうち、マーケティングオートメーション(MA: Marketing Automation)を実施しているのは10.8%です。業種別で見ると、BtoBサービス業(25.0%)やBtoB製造業(22.6%)の導入比率が高くなっていました。
デジタルマーケティングの取り組みはBtoC企業の方が進んでいるというイメージがあるかもしれません。確かに、ネット広告やソーシャルメディアメディアマーケティングの実施はBtoC企業の方が多くなっています。ただ、リードの管理・育成を行うMAはBtoB企業の方がマッチしているようです。BtoB企業のデジタルマーケティングの目的は、新規顧客の獲得が多く、この目的を実現する手段としてMAツールが導入されています。
では、BtoB企業はMAツールを効果的に使いこなしているのでしょうか。MAツールを導入している企業をインタビューしたところ、「MAツールを導入したが、高機能のメール配信ツールとしてしか使えていない」、「リードを獲得・育成しようとしたが最適なコンテンツがなかった」といった声が聞かれました。ツールを導入したものの、その価値を活かせていない企業があるようです。
MAツールは、シナリオに応じた個別メールの配信など、マーケティング活動における手間のかかる施策を自動化するものです。「オートメーション=自動化」という名前が付いていますが、ツールを導入すればすぐにマーケティング活動全体を自動化してくれる訳ではなく、成果を挙げる道筋の準備が必要です。
多くのBtoB企業では、訪問型の営業や展示会などのイベントは行なっていますが、本格的なマーケティングは行っていないことが多いでしょう。そんな企業が、いきなりMAツールを導入しても成果は挙げられないのかもしれません。
では、どのような準備をしていけばいいのでしょうか。まず、デジタルマーケティングに取り組む必要性や目的が社内で共有されていないと、協力が得られなかったり過大な期待をかけられたりします。この段階の企業は、ワークショップなどでキーマンや関係者の「意識共有」を行ってから次のステップに進んだ方がいいでしょう。
例えば、BtoB企業ではマーケティング部門だけで営業プロセスが完結することは少なく、営業部門や販売代理店などとの連携が欠かせません。その際、マーケティング部門が選ぶリード(MQL:Marketing Qualified Lead)と、営業部門が対象としたいリード(SAL:Sales Accepted Lead)は異なります。このため、関係者の理解や合意が重要になります。
また、MAツールの導入だけであれば、マーケティング部門だけで出来るかもしれませんが、MAツールとSFAを連携させたり、社内にある顧客データを一元管理するには、情報システム部門の協力が必要になります。早い段階から、社内の情報システム部門との意識共有を行っておいた方がいいでしょう。
MAツールを既に導入したものの成果が挙がっていない企業の場合は、「本格実施」ステップから、シナリオとコンテンツを検討・制作する「施策検討」ステップに戻って、ターゲットと営業プロセスの分析からやり直した方がいいでしょう。
MAツールはクラウド型が多いので、ツールは直ぐに導入できるかもしれません。しかし、成果を挙げるには、各社の状況に応じた準備が必要です。リードの誘導で必要になるコンテンツの種類も、商材や営業体制によって個社毎に異なります。自社の状況に応じてステップ毎の適切な準備をすることが、成果を挙げる早道です。
MAツールは、パーソナライズを活用したリード獲得やABMにも使われようになってきました。さらに、機械学習などのAIを組み合わせ、より高度化し始めています。マーケティング活動の目的を明確にして、効果的な手段としてMAツールを使いこなしてください。
(株式会社富士通総研 田中 秀樹)
株式会社富士通総研(FRI)
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