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Fujitsu

Japan

富士通が取り組むBtoBデジタルマーケティング
多様化するコミュニケーションへのチャレンジ

BtoBの領域では、企業は常に新規の顧客開拓に頭を悩めている。どのように企業のキーパーソンとコンタクトし、自社の製品やサービスを購入する見込み客へとナーチャリングしていくのか。Web、SNS、リアルイベントなど顧客との接点が多様化・複雑化するなか、マーケティング施策を有機的に連動させ、シナジー効果を高めていくためのポイントとは何か。

2017年11月に実施したFujitsu Insight 2017での講演「富士通が取り組むBtoBデジタルマーケティング」の内容を元に、富士通が取り組むデジタルマーケティングから活動を紹介します。

拡大するIT部門以外のお客様との接点をどう作るか


富士通株式会社
マーケティングコミュニケーション本部
本部長

富士通が毎年開催している『富士通フォーラム』では、従来IT部門の担当者の来場が多かったが、近年は「LOB(Line of Business:非IT・現場部門)」の来場者も増えており、2017年は来場者の75%がLOBだった。テーマを絞って開催した『Fujitsu Insight 2017』でも75%を占め、デジタルマーケティングのテーマでは、じつに81%がLOBとなっている。この現象は富士通のみならずIT企業全般が直面している課題ともいえる。米国におけるITプロジェクトのうち80%がLOBが関係するものになっているという。

つまり、以前であればIT部門が起案していたプロジェクトが、今はLOB主導でスタートする。たとえば「物流のデジタル化」に関して、物流の担当者が予め調査などを進め、案件が煮詰まってからIT部門に話が行くという状況になってきている。拡大するLOBのお客様に対して、富士通の既存のやり方だけではアプローチできない。富士通がデジタルマーケティングに注力するようになった背景には、富士通が相対するお客様が、こうして拡大したことがある。

デジタルマーケティングと合わせたコンテンツ起点のコミュニケーションへ

富士通が取り組んでいるマーケティングコミュニケーションでは、情報収集段階でのLOBへのダイレクトアプローチ、営業部門と事業部門で個別に管理していたお客様との「接点」を一元管理し、データドリブンへのシフトが課題であった。

LOBのお客様やCxOなど、ビジネスキーマンやインフルエンサーとのコミュニケーションを形成していくために、「プランニング」「コンテンツ」「プロモーション」「デジタルマーケティング」という4つの事業部を統括したマーケティングコミュニケーション本部を立ち上げた。この中で、「デジタルマーケティング」、「コンテンツ」、「グローバル」の3点を特に強化して活動を行っている。

これにより、オンラインとオフラインを組み合わせたコンテンツ起点のマーケティングコミュニケーションとデータドリブンのデジタルマーケティング実践によってLOB顧客へのアプローチを拡大し、さらに日本と海外の区分をなくしてグローバルでコンテンツと施策の共有を行うことで、一貫した活動へと進めていくことができる。

コンテンツに関しては先だって2014年からオウンドメディア『FUJITSU JOURNAL』を作り、2015年は富士通公式FacebookやTwitterというソーシャルメディアの活用は進めていた。そして2016年からデジタルマーケティングの実践として、MA(マーケティングオートメーション)やプライベートDMP(Data Management Platform)の活用に取り組んでいる。

デジタルマーケティング実践は、組織横断型のプロジェクトとして推進している。これはマーケティングコミュニケーション本部に加えて、IT部門と営業部門のメンバーで構成されている。当初は営業が懐疑的だったが「まずは進めていこう」ということで取り組みを開始した。

社内散在のデータからいかにリードを育成するか

デジタルマーケティングは、データ活用とシナリオ型アプローチを両輪として進めている。社内に散在する各種データをプライベートDMPに集約・一元化し、分析を実施。データ分析に基づいてプロモーション計画を立案やターゲットごとのコミュニケーションシナリオを策定し、プロモーションの実行いている。MA(Marketo)を活用してリード獲得と育成を行い、ホットリード(見込みのある顧客)を営業に渡して案件のパイプライン投入を進めている。

実践は簡単ではなかった。まず、データ集約と一元化に関しては22万人ほどの集約を行ったが、集約には「名寄せ」が必要となる。データの集約に関しては自動化が行えるようになったが、実際に取得する際の項目の取り方に関してはまだまだ試行錯誤の段階だ。

集約を容易にするためには、お客様に情報として記入していただきたいが、氏名と企業名、役職のほかに「どのような業務で」など入力項目を増やすとそのWebページからの離脱を促してしまう。このため、お客様にお伺いする項目については、今でもディスカッションをしながらチューニングしている。

ターゲットとなるお客様の検討状況に合わせたシナリオを立案して、個別に実施していた広告からWeb、ワークショップやセミナーなどのコンテンツを連動し、MAを活用した育成を実施している。商品ごとにマスタープランを立て、1シナリオ当たり30種類ぐらいの各種コンテンツを組み合わせてナーチャリングしている。現在、9つのテーマに対し合計4万4000件のリードを育成中だ。

データ活用は「タイムリーな見える化」をして次の手を打っていくが、これも、実はうまく行かない点が多い。考えすぎずに機能的にできることを繰り返し実施し、すぐに次の手を打って結果を見るのがポイントとなる。また、ダッシュボードで担当者がリード育成状況を把握し、どれだけホットリードになっているかを時系列で把握し、営業に引き渡すタイミングの判断を「目で見て」行っている。

富士通は元々アカウントプランに基づく営業活動を行っている。そのためアカウントベースでの営業をデジタル武装する活動として、BtoBマーケティングで注目のABM(Account Based Marketing)の手法も取り入れたマーケティング活動も開始している。

社員自らが取材し、書き、制作ディレクションをすることが全体のレベルアップに

デジタルマーケティングを成功させる重要なポイントのひとつにコンテンツがある。お客様の検討ステージに合わせて、デジタルとアナログを組み合わせてコミュニケーションをどう行っていくのかが肝心だ。

特にWebマガジン『FUJITSU JOURNAL』はオウンドメディアとして重点的に強化し、2か国語、マルチデバイス対応で発信している。ニュースや事例のほか、スペシャリストのインタービュー、イベントレポートなどのコンテンツをテクノロジーとお客様業種切り口などで紹介し、できるだけお客様の興味をひけるよう意識して進めている。さらに富士通社員が自分で取材をして記事を書くという取り組みも始めた。社員だから取材できることある上、自分たちで記事を書くとコンテンツに対する意識がレベルアップする。徐々にではあるがコンテンツのクオリティが上がってきたと感じている。

リアルイベントをどうマーケティングに活かすか

リアルイベントも大きなコンテンツであり、『富士通フォーラム』は東京・大阪・名古屋とドイツで行ったほか、2017年からはトレンドテーマイベント『Fujitsu Insight』を4テーマで開催。そして『ワールドツアー』は欧州を中心に19ヶ国、『アジアカンファレンス』も10ヶ国。さらに業種向け・個別セミナーとたくさんのイベントを実施している。


DTCでのワークショップの様子

また、ワークショップも並行してスタートした。デジタル革新やAI、IoTといった新しい切り口の取り組みについては、お客様もよく理解できないケースが多い。共通理解のものとで部門横断の新しい取り組みを行うにはワークショップが適している。ワークショップを専門に行うスタジオ「Digital Transformation Center(DTC)」を東京・浜松町に2016年4月に開設し、1年3カ月の間にワークショップを660回開催した。2017年8月には大阪にも開設し、今後 ニューヨークとミュンヘンにも2018年3月に開設する。ワークショップは、海外でも回数を増やして行っていくよう、人材育成を含めて準備をしている。

DTCでのワークショップは、共創型でお客様と一緒にアイディアを出し、富士通も技術者・コンサルタント・デザイナーなどが参加する。デザイン指向で「どうなりたいか?」をお客様と議論し、我々が色々なご提案を行って次のステップに向かうというものだ。これまでの開催の約半数がしっかりとした商談に結び付いているという実績もできている。

グローバルで同じ施策を同時に進める

富士通では、マーケティングにおけるグローバルな展開を全体的に同期、連携させる取り組みを進めている。日本が先行しているが並行してヨーロッパでもデジタルマーケティングの導入を始めており、ほか地域でも2018年度からスタートする。コンテンツも同一の枠組みで揃え始めている。各国のWebサイトを共通化し、基本的なコンテンツの編成を同じにするよう進めている。

イベントやワークショップも共通してコンテンツや運用、効果測定の方法を共有化して、同じやり方で効果の出たもの、出ないものというものを共有し、人材の交流も含めてトータルで進めていこうと考えている。

本格的にデジタルマーケティングを初めて1年が経過したところだ。毎日お客様とどういう接点で、どうリレーションを構築し、どれだけのお客様にお伺いできるのか。「Everyday FUJITSU」。これはマーケティングコミュニケーション本部の仕事ぶりを私なりに表現した言葉だ。常に意識しながら、これからもデジタルマーケティングをしっかり実践していきたい。

※資料掲載は、講演者から了承をいただいたセッションのみとなります。一部セッションは提供しておりませんのでご了承ください。

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