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第4回「IFRS適用による管理会計への影響」

第4回「IFRS適用による管理会計への影響」

2010年7月公開

IFRSは、「国際財務報告基準」という名前からも明らかな通り企業の財務報告についての基準であって、管理会計について定めるものではありません。

しかし、IFRS導入後は従来と異なった尺度で業績を評価されることとなり、投資家・株主など利害関係者は新たな尺度で評価された情報に従ってそれぞれの行動を決定することとなります。従って、IFRSの導入は財務報告に関するルールの変更であると同時に、企業のマネジメント環境の変化でもあるので、IFRS導入後の環境に即した管理会計制度を構築する必要があります。

財政状態計算書(貸借対照表)重視

IFRSの特徴の一つとして資産・負債アプローチが挙げられ、その結果従来の日本基準による業績評価と比較すると、財政状態計算書(貸借対照表)項目の重要性が増すこととなっています。

財務指標としてROE、ROAなどを通じて貸借対照表項目が使用されることはあったものの、一般的には損益計算書項目と比較して軽視される傾向にあり、特にセグメント別では貸借対照表項目が十分把握されていないことも少なくありませんでした。

しかし、IFRS導入後には従来以上に財政状態計算書項目を重視する必要があり、またセグメント別KPIにも財政状態計算書項目を用いることの検討も行う必要があります。

区分損益に与える影響

従来、管理会計に用いる主要業績指標(KPI)には純損益だけでなく「営業利益」や「経常利益」などの区分損益が用いられることも多く、特に我が国では「経常利益」が重要な業績指標として広く用いられてきました。

しかし、IFRSでは、臨時かつ巨額な損益であっても「特別損益」として処理できないこととされており、その結果「経常利益」という区分が存在しないこととなっています。

もちろん、IFRSで「経常利益」が無いからといって、管理会計上でも「経常利益」を用いてはならないということではありません。事実、IFRS導入に先行して取り組んでいる企業においても、臨時損益を区分して把握できることが必要と考えている例も少なくありません。

逆に、IFRS適用を機に従来の「営業利益」、「経常利益」という区分に拘らず、企業グループのマネジメント目的により即した区分損益を導入しようという試みもあります。具体的には、限界損益、EBIT (注1)、EBITDA (注2)など、シミュレーションや経済性分析と親和性の高い評価指標をKPIとすることなどを検討する機会となるでしょう。

日本基準による業績指標とIFRSによる業績指標

個別財務諸表を日本基準に従って作成しつづけるとなると、企業グループの中では日本基準による業績指標とIFRSによる業績指標が混在することとなります。IFRS適用後は、場合によっては日本基準による売上高や利益とIFRSによる売上高や利益が異なることとなり、そのような中で予算管理、中長期経営計画などを含めた管理会計において日本基準による業績指標とIFRSによる業績指標を用いるのか検討する必要があります。

また、IFRS業績指標を使用することとした場合、過去データとの比較をどの程度担保するのかという問題も生じます。可能な限り遡ってIFRS業績指標を把握し過去データの参照ができるのは望ましいことですが、一方でセグメントごとの遡及修正など実務的な負担も少なからず生じるため、企業グループにとって適切な過去データの範囲を考える必要があります。

IFRSへの取り組みが先行している企業を見ても、IFRS適用後の管理会計をどのように構築、運用するかについてはまだ試行錯誤の状態のようです。

しかし、財務会計と管理会計の関係、特に財務会計と管理会計の一致をどこまで図るかなど、管理会計に関してもIFRS適用による影響は避けられないようです。

講師紹介

公認会計士 森川智之氏

監査法人トーマツに勤務後、独立。 IPO支援、管理会計、ファイナンス等のコンサルティング業務から税務業務などを幅広く行う。
公認会計士、森川アンドパートナーズ会計事務所代表、有限会社フォレストリバー代表取締役。

用語解説

注1: EBIT

Earnings Before Interest and Taxes:利払い前の税引前当期利益。

注2: EBITDA

Earnings Before Interest Taxes Depreciation and Amortization:利払い前・税引き前・減価償却前・その他償却前利益。

公認会計士が語る IFRS対応のヒント

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