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第1回「IFRS適用と次世代IFRS」

第1回「IFRS適用と次世代IFRS」

2010年4月公開

現在、多くの上場企業がIFRS適用の検討を開始していますが、大半の企業は事前調査・勉強段階にとどまり、全体的にはIFRSへの意識は高まりつつも情報収集をしながら様子を見ているという状況のようです。確かに、IFRSが強制適用されるか否かさえ確定していない現時点においては、様子見というスタンスそのものはあながち間違いとはいえないかもしれません。

しかし、IFRS対応を考えるに当たっては、2015年以降の強制適用をゴールとした計画だけでは十分ではありません。IFRS対応は、将来の強制適用に対しての課題というだけでなく過去から今後も続く大きな流れの中にある現在進行形の課題なのです。

継続される日本基準とIFRSのコンバージェンスプロジェクト

IFRS強制適用のロードマップ案が示されてから影が薄くなってしまっているコンバージェンス・プロジェクトですが、現在も日本基準とIFRSとの差異を埋めるための日本基準の改訂プロジェクトは続いています。

そのため、日本基準とIFRSとの差異の多くは2015年以降の強制適用時に一斉に対応するのではなく日本基準の改訂に合わせて段階的に対応していくものとなっています。

例えば、昨年12月「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」が公表されたことにより、過年度遡及修正への対応はIFRS適用時でなく2012年3月期までに行うこととなり、IFRS強制適用時には考慮する必要はなくなりました。

また、過年度遡及修正のようにコンバージェンスの結果日本基準とIFRSとの差異がほぼ無くなる項目もありますが、その一方で日本基準が改訂された後にもIFRSとの差異が残る可能性がある項目もあります。

例えば、包括利益など財務諸表の表示については、2011年または2012年に新しい日本基準に対応することに加えて、IFRS強制適用時にも日本基準とIFRSの差異への対応が必要となる可能性があります。

IFRS対応計画を考えるにあたっては、強制適用へ向けての課題だけでなく、日本基準の改訂へ向けての課題や日本基準の改訂がIFRS適用に与える影響なども踏まえ、手戻りや二度手間を防ぐことができる効率的なプロジェクト運営への配慮が必要です。

IFRSと米国基準のコンバージェンス・プロジェクトの影響 - 次世代IFRSへの対応

コンバージェンス・プロジェクトは、日本基準とIFRSの間だけでなくIFRSと米国基準との間でも進められており、そのプロジェクトの成果として多くのIFRS基準の新設、改訂が予定されています。特に2011年には、財務諸表の表示、収益認識などを含んだIFRSの大幅な改定が予定されており、「次世代IFRS」が公表されるとも言われています。日本企業にIFRSが強制適用されるのは早くても2015年ですので、その時には次世代IFRSが適用されることとなります。

現在は次世代IFRSの内容は確定しておらず、IFRSに対応しなければならないにも関わらず対応すべきIFRSの内容が明らかになっていないという状況です。実際にIFRS対応の検討を進めている企業からも、次世代IFRSの中身が確定しない状況では業務やシステムの要件を固めようがないという不安の声も上がっています。

ただ、幸いにして日本基準、IFRSともに基準の改訂は所定の手続に従って行うこととされており、公開草案などの公表されている文書により改訂作業の方向性を知ることはできます。また過去の例では、基準が改訂される場合には企業が対応に要する期間も考慮して新基準の適用時期が決定されており、実務上の混乱が生じないように配慮されています。未確定の事項が存在しているということだけで必要以上に神経質になる必要はないでしょう。

とは言っても、未確定事項がある中で不確実な情報に基づく思い込みや見切りによってプロジェクトを進めていくことは避けなければなりません。IFRS対応を進めるにあたっては、課題整理や計画策定を行った時点での未確定事項や変更が予定されている事項はきちんと把握し、変更などが生じた場合の影響も考慮して、予め不測事象に対応できる計画を策定しておくことは必須です。

しばしば改訂が続くIFRSへの対応は「動く的を射るようなもの」と表現されますが、日本基準の改訂に対応しながらIFRS対応作業を行うということは、いうなれば「馬に乗りながら動く的を射る」ようなものです。

IFRSへの対応は、現在(あるいは将来のいずれかの時点)におけるIFRSの影響を調査し、調査結果に基づく計画を金科玉条としてプロジェクトを進めていくというような、硬直的なプロジェクトの進め方に陥らないよう気をつけなければなりません。

講師紹介

公認会計士 森川智之氏

監査法人トーマツに勤務後、独立。 IPO支援、管理会計、ファイナンス等のコンサルティング業務から税務業務などを幅広く行う。
公認会計士、森川アンドパートナーズ会計事務所代表、有限会社フォレストリバー代表取締役。

公認会計士が語る IFRS対応のヒント

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