クラウド運用管理

コストを抑えてOracle Databaseをクラウド移行するには?~クラウド環境でのライセンス費の抑制と可用性の確保~

業務システムのクラウド環境への移行はますます加速しています。システムの基盤として幅広く使われているOracle Databaseもクラウドへの移行を避けて通ることはできません。このような中、「Oracle Databaseをクラウドに移行したいが、オンプレミスの場合と比較してライセンス費の負担が大きくなってしまう」というお悩みをお持ちの方も多いのでないでしょうか。
この記事では、従来とは異なる新しい方式でシステムの可用性を確保することで、性能や可用性を犠牲にすることなく、コストを抑えてOracle Databaseをクラウド移行する方法をご紹介します。

1. Oracle Databaseのクラウド移行

オンプレミス環境のOracle Databaseのクラウド移行を考える場合、以下のような様々な観点から検討していく必要があります。

  • 移行先のクラウド
  • 移行先のデータベース(Oracle Database継続/別データベースへの移行)や利用形態(IaaS上に構築/マネージドサービスの利用)、冗長化(可用性確保)の方式
  • 移行コスト、運用コスト

これらの観点は相互に関連性をもっており、ある観点での選択が他の観点での検討に制約・影響を与えます。たとえば、クラウドによって利用できるデータベースの種類や形態が異なり、データベースの選定や冗長化方式の選択によって移行コスト、運用コストも変わってきます。
クラウド移行の際にOracle Databaseを継続利用するメリットは、オンプレミスの資産を活用し、クラウド移行で必要となるアプリケーションの改修やシステム構成・運用の変更を最小限にすることで、移行コストを抑えて短期間でクラウド環境に移行できることです。しかし、この選択もメリットばかりというわけではありません。

2. Oracle Databaseのクラウド移行の課題

Oracle Databaseの利用を継続し、移行先としてAmazon Web Services(以降、AWSと記す)やMicrosoft Azure、FUJITSU Hybrid IT Service FJcloudを選択した場合に、課題となるのがライセンス費用です。これはオンプレミス環境とクラウド環境では、ライセンスの適用条件が異なるためです。以下はOracle Database Standard Edition 2のProcessorライセンスの場合の適用条件の例です。

環境 ライセンス適用条件
オンプレミス 1CPU(物理CPU)につき1ライセンス
AWS 4vCPU(仮想CPU) につき1ライセンス
注:AWS RDSなどのマネージドサービスをBYOL(Bring Your Own License)で利用する場合も同様

例えば、4コアCPUのサーバーを使用した冗長構成のシステムを考えます(図1)。この場合、オンプレミス環境で必要なライセンスは、サーバー1台当たり1ライセンス、全体で2ライセンスになります。ところが、同じ構成でAWS環境に移行すると、必要なライセンスはサーバー1台当たり2ライセンス、全体で4ライセンスと、2倍になってしまいます。これは、AWS環境ではコア数当たりのvCPU数(ハイパースレッド数)がデフォルトの設定では2であるため、サーバー1台当たりvCPU数8、全体でvCPU数は16となるためです。8コアのCPUなどコア数がより多い場合には、さらに多くのライセンスが必要になります。

クラウド移行の課題

図1: クラウド移行の課題

このように、Oracle Databaseのクラウド移行では、高コストを受け入れるか、CPU性能(vCPU数)あるいは可用性(冗長構成)を妥協してライセンス費用を抑えるかの選択を迫られることになります。この結果、場合によっては、クラウド移行自体を先送りにせざるを得なくなることも考えられます。
ミッションクリティカルなシステムで業務停止時間を可能な限り短くするためにHAクラスタ構成を取っている場合や、実装・運用面からシステム構成を変更することが難しい場合には、高コストを受け入れてでも現行構成のままクラウドに移行することが最適です。しかし、そうでない場合には、クラウド移行を先送りにしなくても、コストと性能・可用性に関するトレードオフを今すぐ解決できる方法があります。

3. Fujitsu Software PRIMECLUSTER Cloud Editionによる解決

PRIMECLUSTER Cloud Editionを利用すると、性能や可用性を犠牲にすることなく、クラウド環境でのOracle Databaseのライセンス費を抑制することができます。
PRIMECLUSTER Cloud Editionは、必要になった時に素早く仮想マシンを配備できるというクラウドの特長を活用した「動的配備方式」により、サーバー1台で高可用性を実現しています。これは、切替え先の仮想サーバーを事前に用意する従来の冗長構成とは異なり、故障発生時に初めて配備、切替えを行う方式です。
PRIMECLUSTER Cloud Editionの動的配備方式では、同時に存在する仮想サーバーは常に1台となることが保証されています。このため、切替え先用のOracle Databaseライセンスを別途用意する必要がなく、ライセンス費を抑制できます。さらに、インスタンス費用や運用コストを抑えることも可能です。
先ほどと同様に4コアCPUのサーバーを使用した冗長構成のシステムを考えます(図2)。クラウドへの移行にPRIMECLUSTER Cloud Editionを適用すると、サーバー1台当たり2ライセンス必要になるのは変わりませんが、必要サーバー数は1台に抑えられます。この結果、システム全体ではオンプレミス環境の場合と同じライセンス数でクラウドに移行できることになります。

PRIMECLUSTER Cloud Editionによる解決

図2: PRIMECLUSTER Cloud Editionによる解決

4. コスト比較例

PRIMECLUSTER Cloud Editionを利用した場合、実際にどのくらいコストが削減できるのでしょうか。AWSのRDS for Oracle (BYOL)と、PRIMECLUSTER Cloud Edition を利用して同等構成のOracle Databaseシステムを構築した場合の5年間の総コストを比較してみます(図3)。
PRIMECLUSTER Cloud Edition を利用した場合、仮想サーバー1台で構成できるため、DBライセンスおよびサポート費用に加えて、ストレージ費用、インスタンス費用も抑制できます。この例の場合、追加で必要なPRIMECLUSTER Cloud Editionのライセンス費用や、PRIMECLUSTER Cloud Editionを動作させるためのクラウドリソースの費用を含めても、システム全体費用を4割以上削減できることがわかります。

コスト比較例

図3: コスト比較例

5. システム構成・動作概要

サーバー1台で高可用性を確保できるPRIMECLUSTER Cloud Editionの「動的配備方式」は、どのように実現されているのでしょうか? AWS環境でのシステム構成および動作概要をご紹介します(図4)。
PRIMECLUSTER Cloud Edition の本体である動作監視・切替機構は、EC2インスタンス上ではなく、Amazon CloudWatch、Amazon EventBridge、AWS Lambdaなどのサービス上で動作します。また、Database用ボリュームにはAmazon FSxなどのストレージサービスを使用します。これらのサービスはAWSによって、マルチAZ対応を含め、高い可用性が確保されています。
動作監視・切替機構は以下のように動作します。

  1. 動作監視
    Amazon CloudWatchのイベントや独自の監視機構により、Oracle Databaseの動作を監視します。インスタンスやプロセスの異常はもちろん、SQL要求の定期発行によりデータベースの処理異常も検出可能です。

  2. 故障検知
    動作監視により故障が検知されると、切替え処理が開始します。

  3. インスタンス削除
    故障が発生したインスタンスを停止・削除します。これにより、同時に存在するインスタンスが1台になることを保証します。Database用ボリュームに対して複数のインスタンスから同時に書き込みが行われることもないため、データの破損・不整合も防止できます。

  4. 切替え先配備
    現用系インスタンスが使用していたシステムイメージ(AMI: Amazon Machine Image)を使用して、切替え先のインスタンスを配備します。この時、システムイメージだけでなく、セキュリティグループやロール情報など、インスタンスに付随する情報も共通になるようにします。これにより、実質的に同じ構成のインスタンスが配備できます。また、配備先には、現用系インスタンスとは異なるAvailability Zoneが選択されるため、Availability Zone全体障害にも対応できます。

  5. 通信切替え
    切替え先インスタンスの配備が完了すると、ロードバランサーの振り分け先を変更します。クライアントからデータベースへのアクセスをロードバランサー経由で行うようにしておくことで、切替えの前後でアクセスを継続できます。

システム構成・動作概要

図4: システム構成・動作概要

このように、PRIMECLUSTER Cloud Editionは、クラウドが提供する機能を最大限活用し、さらに独自の故障監視・切替機構を組み合わせることで高可用性を実現しています。

6. まとめ

PRIMECLUSTER Cloud Editionの動的配備方式でシステムの可用性を確保することで、性能や可用性を犠牲にすることなく、コストを抑えてOracle Databaseをクラウド環境に移行できます。
Oracle Databaseのクラウド環境への移行で、ライセンス費の問題にお悩みの場合には、ぜひPRIMECLUSTER Cloud Editionのご利用をご検討ください。

  • 備考
    Oracle®、Java及びMySQLは、Oracle、その子会社及び関連会社の米国及びその他の国における登録商標です。
    Amazon Web Services、AWS、Amazon CloudWatch、Amazon EventBridge、AWS Lambda、Amazon FSx、AMI、Amazon Machine Imageは、Amazon.com, Inc. またはその関連会社の商標です。
    Microsoft、Azureは、米国Microsoft Corporationの、米国およびその他の国における商標または登録商標です。
    記載されている会社名、システム名、製品名、サービス名などの固有名詞は一般に各社の登録商標または商標です。
    また、本文および図表中に記載されている会社名、システム名、製品名、サービス名などには必ずしも「TM」、「®」を付記しておりません。

本コンテンツに関するお問い合わせ

お電話でのお問い合わせ

富士通コンタクトライン(総合窓口)

0120-933-200

受付時間:9時~12時および13時~17時30分
(土曜日・日曜日・祝日・当社指定の休業日を除く)

Webでのお問い合わせ

当社はセキュリティ保護の観点からSSL技術を使用しております。

ページの先頭へ