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VCS(Virtual Cluster Switching) Fabricとは

データセンターでは従来、階層型ネットワーク設計が行われていました。しかし、仮想化が進むにつれて、従来の階層型ネットワークでは様々な問題により十分なパフォーマンスが得られなくなっています。最近ではその問題を解決し、トラフィック効率化を図るためにイーサネットファブリックの導入が進んでいます。イーサネットファブリック技術の一つに、Brocade社のVCS(Virtual Cluster Switching) Fabricがあります。

階層型ネットワークとは

これまで大規模なキャンパスネットワーク(複数のLANから構成されるネットワーク)やデータセンターネットワークでは、階層型のネットワーク設計が行われてきました。複数のサーバやスイッチをグループ化し、スイッチでまとめることで階層的なトポロジを形成する設計です。多くの場合は、コア層・アグリゲーション層(またはディストリビューション層)・アクセス層の3層で構成されることが一般的です。

階層型ネットワークにおける各階層の役割

コア層WANやインターネットなどに接続するバックボーンとなる階層。大量のトラフィックを高速に転送する役割を担う
アグリゲーション層
(またはディストリビューション層)
複数のサブネットワークを集約する階層
アクセス層サブネットワークのサーバやストレージを接続する階層

ネットワークを階層化することで、その階層に応じた性能および機能を持った装置を導入できる、他の階層に影響を与えずに構成や設定を変更できるといったメリットが得られてきました。

階層型ネットワーク 概要図

仮想化の普及により浮上した階層型ネットワークの問題点

近年仮想化の波が押し寄せ、サーバやストレージの仮想化が進むと、従来の階層型ネットワークではいくつかの問題が浮上してきました。

水平方向へのトラフィックの増加
階層型ネットワークで物理サーバのみで構成される場合、クライアントからサーバへの要求に対し、サーバからクライアントに応答を返すといったように、トラフィックは主に上下、つまり垂直方向に流れます。また、サーバ間通信もコア層を介して行われることが一般的でした。
しかし、仮想化が進み、物理サーバ上で複数の論理サーバが動作するようになると、論理サーバのマイグレーション(論理サーバを停止せずに他の物理サーバ上に移動する機能)や論理サーバ間の通信量増大などにより、サーバ間の水平方向のトラフィックが大量に増えることになります。階層型ネットワークではサーバ間は直接接続されていないため、仮想化によって増大した水平方向のトラフィックは、そのまま水平には流れずに上の階層(スイッチ)を通して他の物理サーバに流れるので効率が悪く、パフォーマンスの低下や帯域の圧迫といった問題を引き起こします。
STPによるパフォーマンスの低下
さらにSTP(スパニングツリープロトコル)がこの問題に拍車をかけます。STPは、ネットワークのループ防止のためのプロトコルです。複数スイッチを導入してそのまま接続すると、物理的な接続がループ状になることで障害が発生することがあります。イーサネットでは特別なフレームをブロードキャスト(注1)してMACアドレス(注2)を学習するため、接続がループ状になっているとそのフレームが延々と転送され続けるブロードキャストストームが発生してしまいます。STPは、フレームを転送しないブロッキングポートをスイッチで指定することで、接続を論理的にツリー状に構成してブロードキャストストームを回避します。
STPでは、フレームが流れるアクティブなパスは一つになり、そのパスに障害が発生するとブロッキングポートを変更して別のパスをアクティブにします。つまり、実際には複数のパスがあっても、アクティブなパスは常に一つであるため、大量のトラフィックが発生すると著しくパフォーマンスが低下します。また、切替には数秒から数十秒かかるため、その間にサービス断が発生するリスクを伴います。
さらに、仮想化により各階層での構成が複雑になり、設計・設定・運用のそれぞれの手間が大きくなるといった問題もあります。
こういった問題から、サーバやストレージが仮想化されている環境では、階層型ではなくフラットなネットワークが適しているということになり、イーサネットファブリック技術に注目が集まっています。

Brocade社によるVCS(Virtual Cluster Switching) Fabric

イーサネットファブリックという技術は、イーサネットの基盤上で、ファブリック技術を活用することを指しますが、TRILL(Transparent Interconnect of Lots of Links)やSPB(Shortest Path Bridging)などをベースに、現状では各スイッチベンダーが標準規格+独自技術で提供を行っています。
VCS(Virtual Cluster Switching)Fabricでは、TRILLをベースにBrocade社独自のイーサネットファブリック技術を拡張しており、同社のBrocade VDX シリーズに使われています。

VCS(Virtual Cluster Switching) Fabricによるイーサネットファブリック 概要図

VCS(Virtual Cluster Switching) Fabricの特長

VCS(Virtual Cluster Switching) Fabricでは、複数のスイッチを1台の論理スイッチとみなし、トポロジーフリーで接続が可能です。論理スイッチ部分にはスイッチを自由に接続できるため、例えばリーフ・スパイン構成を用いることで、柔軟にスケーラビリティを向上させることも可能です。その他にも次のような特長があります。

TRILLによる冗長化
冗長化技術として、TRILL(Transparent Interconnect of Lots of Links)を採用しています。
TRILLでは複数のパスが存在する場合、最短距離のパスを選択するので、すべてのパスを効率的に利用できます。また、ECMP(Equal Cost Multi Path)をサポートしているので、距離が同じ複数のパスにトラフィックを分散し、広帯域化と冗長化を実現しています。
マスターレス構成による可用性
論理スイッチ部分のスイッチはマスターレスで構成されます。すなわちすべてのスイッチの統合管理ができつつ、スイッチごとに管理が独立して行われるため、スイッチのいずれかに問題が発生してもサービス影響なく短期間での回復が可能となっております。
論理スイッチによる管理の手間とコストの削減
複数のスイッチを1台の論理スイッチとして扱うため、スイッチの設定作業だけでなく、ログ収集やファームウエアの入れ替えも個別に行う必要がなく、管理工数や作業時間と運用コストの削減が可能です。

仮想化やSDNに必須のイーサネットファブリック

イーサネットファブリック自体は標準化技術をベースに各社で拡張されており、現在はベンダー主導で標準+独自の技術でのご提供が進んでいます。また、SDN(Software-Defined Networking)とも連携して利用できるため、FabricとSDNの組み合わせによるキャンパスネットワークへの適用や、SDDC(Software-Defined Data Center)での活用によるニーズが増大すると予想されます。

富士通はこうしたお客様の様々なニーズに応えるために、VCS(Virtual Cluster Switching) Fabric対応のコンバージドスイッチとして、Brocade VDX seriesを提供しています。

(注1)フレームを不特定多数の相手に送信すること。
(注2)LANカードなどのネットワーク機器に一意に割り当てられるアドレス。イーサネット上で機器を特定するために使われる。

掲載日:2015年8月5日

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