国立大学法人 山形大学 様

人工知能(AI)人材の育成と地域貢献を見据えた各種研究の推進に向けてGPU搭載サーバでAI教育・研究基盤を構築

「予算や納期など厳しい条件の中で、理想的なAI 教育・研究基盤を実現してもらえました。AIシステムに関する知見やノウハウもさることながら、これまでの取引を通じて富士通が本学の特性をしっかり理解いただけていたからこそと感謝しています」。

小坂 哲夫 氏
山形大学 学術研究院 教授
AIデザイン教育研究推進センター センター長

山形大学様は、AIを駆使して地域社会の課題解決に寄与できる人材の育成に向けて、富士通のGPU搭載サーバを用いてAI教育・研究基盤を整備しています。2019年度に工学部のみを対象とした導入から始まり、2021年4月に「AIデザイン教育研究推進センター」として全学規模に拡大するまで、富士通の一貫したサポートによって、文系・理系を問わず、すべての学生がAI研究に触れることができる環境を実現しました。

課題
効果
課題将来の全学展開を見据えつつ、まずは単学部向けの基盤を低コスト・短納期で実現したい。
効果AIシステムに関する知見を活かし、豊富なサーバラインナップから、最適なGPU搭載サーバをスピーディーに導入。
課題全学規模で利用可能なAI教育・研究基盤を構築したい。
効果大規模システムの構築ノウハウを駆使して、複数キャンパスにまたがる多人数が同時利用可能なシステムを実現。
課題初めてAIシステムに触れる学生にも使いこなせるようサポートが必要。
効果使いやすい数値解析ソフトを導入するとともに、使用説明会などの開催もサポート。

導入の背景

AI人材の育成に向けて「AIデザイン教育推進センター」を整備

山形大学は、県内5つの教育機関を母体として1949年に誕生して以来、70年以上の歴史を積み重ねてきました。現在では、4つのキャンパスに約9,000人の学生が通う、東日本でも有数規模の総合国立大学となっています。

「地域創生」「次世代形成」「多文化共生」という3つの使命を掲げる同校の大きな特徴が、理系科目の充実です。特に近年では、地域社会の課題解決におけるデータサイエンスの可能性に着目し、AI人材を育成するための教育・研究基盤を整備しています。

AIデザイン教育研究推進センターのセンター長を務める小坂氏は、その狙いを次のように語ります。「近年、AIを地域の課題解決に役立てようとの取り組みが活発化していますが、そこで課題となっているのがAI人材の不足です。本校でも、すでに一部の研究室では取り組んでいましたが、文系・理系を問わず全学規模でAI人材を育成・輩出することが地域の最高学府としての使命と考えました」。

山形大学
学術研究院 教授
AIデザイン教育研究推進センター
センター長
小坂 哲夫 氏

導入の経緯

まずは工学部のみで利用する環境を低価格・短納期で実現

当初から全学部を対象とする構想があったものの、AI向けのシステム基盤を導入するのは初めての経験であり、予算も限られていたことから、まずは工学部のみで実施することになったのが2019年度のこと。その際に導入したのが、2枚のGPUを搭載した富士通サーバFUJITSU Server PRIMERGY RX2530 M5(以下、RX2530 M5)でした。

「もともとAI基盤としてはGPU(※1)が必要と考えていましたが、専門的な知識がないため、どの程度の規模・スペックが必要かを情報収集していました」と振り返るのは、副センター長を務める田中敦氏だ。

「富士通はGPU搭載サーバを幅広くラインナップしており、その中から比較的、低コストで導入できるサーバを提案してもらえました。予算が限られていて、しかも2019年度予算に計上するため2020年3月までに導入しなければならないという厳しい条件下で、最適なサーバを提案いただけ助かりました」(田中氏)。

  • (注1)
    Graphics Processing Unitの略。そもそもは画像処理を高速に実行するためのプロセッサだが、近年では演算能力の高さを活かして汎用的に利用するケースが増え、AI用の基盤として評価されている。

全学規模に拡大するにあたって、管理面も含め最適なシステム体制を提案

まずは工学部のみで整備したAI基盤を、全学規模に拡大する機会は意外に早く訪れた。文部科学省より2020年度の補助金が得られたため、早々に導入が決定したのだ。「AI人材の育成は国家レベルの課題であることから、文部科学省としても力が入っていたのでしょう。急遽、AIデザイン教育研究推進センターの設立が決定。2021年4月からの運用開始に向けて、急ピッチで検討を進めることになりました」と田中氏は経緯を語る。

山形大学
学術研究院 准教授
(情報科学)
AIデザイン教育研究推進センター
副センター長
田中 敦 氏

AI基盤の拡大にあたり、当初は複数キャンパスでの並行利用が検討されたという。「2019年度に導入したサーバは工学部のある米沢キャンパスに設置しましたが、全学規模で利用するにあたっては、大学本部があって多くの学生が利用する小白川キャンパスに新たなサーバを導入し、両方で運営しようと考えたのです」と語る田中氏だが、富士通は異論を唱えた。サーバを2カ所で運用すると、それだけ管理負担も大きくなるため、工学部内でサーバを増設して1カ所で運用すべきと提案したのだ。「管理スタッフが少ない現状を考えれば、納得できる提案でした。キャンパス間をつなぐネットワークのスペックからすると、各キャンパスから工学部にアクセスする形でも問題なく運営できるとの安心材料もいただけたことで、富士通の提案を採用しました」(田中氏)。

導入時の課題

規模の拡大に加え、コンテナ技術とジョブスケジューラによる効率的な運用を実現

工学部内でAI基盤を拡充するにあたっては、ハード、ソフト両面での課題を解決する必要があった。

まずハード面では、複数キャンパスからの同時利用に耐えられるだけの環境整備だ。「工学部のみで利用していたシステムを、全学部9,000人で利用可能にするわけですから、どれだけ負荷が拡大するかは想像が困難でした。もちろん、AI関連の授業を分散させ、研究室には授業時間外に利用してもらうなど、カリキュラムを調整する計画でしたが、それでも一度に多くのジョブが集中する事態も考えられます。そこで富士通から提案されたのが、コンテナ技術(※2)とジョブスケジューラ(※3)を組み合わせたジョブ管理でした」と田中氏は語る。

富士通は、導入済みのRX2530 M5に加え、GPU8枚搭載のFUJITSU Server PRIMERGY GX2570 M5を導入し、両者をファイルサーバで連携させることで、システム規模を拡大。そこに冗長化を施したジョブ管理サーバを接続した。各キャンパスから送られてきたジョブは、まずジョブ管理サーバに送られ、ジョブスケジューラによってGPU搭載サーバ内の空いたコンテナに振り分けられ、効率的に作業を行うという仕組みだ。

  • (注2)
    1つのサーバ内に「コンテナ」と呼ばれる空間を複数作成し、それぞれでジョブを実行する仕組み。
  • (注3)
    複数のジョブの実行スケジュールを自動化するシステム。

システム概要図

AIに不慣れな学生でも使いやすい環境づくりを支援

一方、ソフト面で課題となったのがシステムの使い勝手だ。2019年度に工学部で導入した環境は、すでにAIを研究に利用し始めている研究室からは好評だったものの、まだAIに触れたことがない教授や学生からは「使い方がわからない」と積極的に利用されなかったという。

「文系も含めた全学部で利用を促進するためには、プログラミング経験がなくともディープラーニングや数値解析などのプログラムが手軽に構築できる環境整備が必要だと考えました。補助金にも限りがあるので、ハードとソフトの両立は厳しいものがありましたが、富士通には限られた予算内で最適な組み合わせを提案いただけました」(田中氏)。

結果として、文法が簡単で容易に記述できる数値解析ソフトウェア「MATLAB(マトラボ)」を全学ライセンスで導入するとともに、講習会やトレーニングなどの開催もサポートすることで、AI初心者でも容易に学習できる環境を整備できた。

導入後の評価

厳しい条件の中、ハード・ソフト両面をバランスよく整備

「工学部のみでの導入から全学規模への拡大まで、富士通には一貫してきめ細かなサポートをいただけた」と田中氏は振り返ります。「AI基盤の構築は、全国的に見ても先駆的な取り組みのため、参考となる前例もなく、仕様やスペック、運用体制など不安ばかりでした。富士通の担当者は非常に話しやすく、こちらの悩みも気兼ねなく話すことができ、理想的な環境を構築できました」。

こうした高評価の背景には、富士通が長きにわたり同校のシステム構築を支え、複数キャンパスにまたがる運営など同校独自の環境を理解していたことがある。「全学で利用するには学生・職員の認証システムと連動させる必要がありましたが、そのシステムも富士通製でしたので安心できました」(田中氏)。

「大学の予算は企業に比べて融通の利かない面がありますが、特に今回は予算や納期など厳しい条件の中で、こちらの求めるハード、ソフトをバランスよく組み合わせて、理想的なAI基盤を実現してもらえました。AIシステムに関する知見やノウハウもさることながら、これまでの取り組みを通じて富士通が本校の特性をしっかり理解いただけていたからこそと感謝しています」と小坂氏は語る。

今後の展開

産学連携も視野に、AI人材の可能性を拡げる

幅広い分野でAIによる課題解決が期待される中、全学規模でAI人材を養成しようとする山形大学の取り組みは大きな注目を集めている。その現状と今後について、田中氏はこう語る。「まだ導入したばかりなので、現在はテスト期間と位置づけ、特に制限なく利用してもらい、システムにどの程度の負荷がかかるかを検証しているところです。同時に、8枚のGPUを搭載したサーバのスペックをフル活用することで、大容量データの計算がどれだけ高速になるかなど、新たな環境が利用者の拡大だけでなく、AIを活用した研究にどのように役立つかについても検証を進めています」。

同校では、AIなどデータサイエンスに関する知識が今後の社会において必要不可欠なものと考え、各学部での授業や研究はもちろん、一般教養カリキュラムにも含めていく考えだ。「必然的に、システムを利用する人数も機会も増えていくので、その中で新たな運用課題が浮上した場合は、また富士通に相談に乗ってもらえればと思っています」(田中氏)。

「富士通への期待はシステム面だけではありません。本校では、地域課題の解決への貢献を大きなテーマとしており、今後もAIを駆使した産学連携を推進していくうえで、幅広い分野で共創してきた富士通の経験やノウハウ、人脈などをお借りする機会があるかと思っています」(小坂氏)。

富士通はこうした声を踏まえ、今後もAI人材を育成するための環境整備から、AIによる地域課題の解決まで、幅広いサポートを展開していく。

国立大学法人 山形大学

所在地山形市小白川町一丁目4-12
代表者学長 玉手 英利
創立1949年(昭和24年)
学生数学部7,398人、大学院1,237人、別科40人(2021年5月1日現在)
概要山形高等学校・山形師範学校・山形青年師範学校・米沢工業専門学校・山形県立農林専門学校を母体として開学。人文社会科学部・地域教育文化学部・理学部・医学部・工学部・農学部の6学部と6つの大学院研究科を備え、約9,000人の学生が勉学に励む、東日本でも有数規模の総合国立大学。
ホームページhttps://www.yamagata-u.ac.jp/jp/

[2021年9月掲載]

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