国立大学法人 北陸先端科学技術大学院大学 様

より快適なVDI環境を
高性能サーバと仮想GPUの採用で実現

「狙い通り、スタンドアロンのGPU搭載PCと同等のパフォーマンスが仮想デスクトップで得られるようになりました。実際にベンチマークをとっても、遜色ないスコアが得られています。今までVDIでは使用をあきらめていたアプリケーションの制限がなくなりました」

宇多 仁 氏
北陸先端科学技術大学院大学
遠隔教育研究イノベーションセンター 准教授

北陸先端科学技術大学院大学は20年前から、事務部門の職員が日常業務に用いる環境、教職員および学生向け学習環境として提供するデスクトップ環境の仮想化に取り組んできた。近年はOSやアプリケーションなどの進化、取扱いデータサイズの増加、動画や画像などデータ種類の変化が進み、仮想デスクトップでの処理能力不足が課題となっていた。そこで、VDI(仮想デスクトップ基盤)をNVIDIAのvGPU(仮想GPU)を搭載した富士通のサーバ「Fujitsu Server PRIMERGY RX2530 M6」で刷新。処理能力が大幅に向上し、動画や音声がスムーズに再生でき、業務が円滑に遂行可能となった。他にも高度なアプリケーションを幅広く利用できるVDI環境を実現している。

課題
効果
課題仮想デスクトップ上での処理能力を高めたい
効果高性能サーバと仮想GPUの採用で高い処理能力を実現
課題VDI環境で行う業務の継続性を向上したい
効果充実したサポート体制と高信頼性サーバにより高可用性を確保
課題VDIの運用管理と環境強化を最小限の工数で行いたい
効果vGPU導入により強化した環境をこれまでと同等の管理工数で運用

導入の背景

大学職員の業務継続性向上と均一な学習環境を提供するために

世界トップの研究大学を目指すとともに、グローバルに活躍できる人材を育成し続けている北陸先端科学技術大学院大学(以下、JAIST)。独自のキャンパスと教育研究組織を持つ日本最初の国立大学院大学として、1990年に創立された。もともと分かれていた情報科学系、知識科学系、マテリアルサイエンス系の学系を統一し、横のつながりを強めて領域横断的な研究を推進する。また、在学生の40%以上が海外約20か国からの留学生であり、多くの授業が英語で行われるなど、ダイバーシティ豊かな環境で研究・教育を実践している。
JAISTは研究・教育にITシステムは非常に重要であるという考えのもと、その拡充に開学以来注力している。学生や教員が最先端のITを利活用できる環境を提供し、かつ、大学事務部門の職員の業務効率化も図る。

その取り組みの一例がデスクトップの仮想化だ。20年前という仮想デスクトップサービスの黎明期から、学生・教員の教育・研究や職員の業務へのより良い活用法を模索し、提供し続けてきた。さらに約10年前からは、仮想デスクトップと利用者を一対一に紐づけ、スタンドアロンのPCを利用する感覚でデスクトップ環境を使用できるVDIを導入し、全学的に提供している。北陸先端科学技術大学院大学 遠隔教育研究イノベーションセンター 准教授 宇多 仁 氏は次のように話す。

「VDIの導入目的としてまず挙げられるのが、全学のデスクトップ環境の一元管理です。重要な情報の漏えい防止などセキュリティを強化します。同時に、限られた人数の職員で効率よく管理可能とし、質の高いサービスを教職員や学生に提供します」(宇多氏)

学生への均一な学習環境の提供も導入目的のひとつである。

「学生個人所有のPCを使うと、授業で必要なアプリケーションがインストールされていない事態が生じます。それを避けるため、VDIによって必要な環境を全学生に提供します。加えて、本学は留学生が多いことから、OSは日本語と英語、キーボードも日本語と英語を選べる多様な仮想デスクトップのインターフェースを用意しています」と宇多氏は続ける。

さらにVDI導入で職員の業務継続性向上も図った。北陸先端科学技術大学院大学 情報環境・DX統括本部 情報社会基盤研究センター 技術専門職員 福島 清信 氏は、「スタンドアロンのPCだと、機器が故障したら業務が止まってしまいます。同じ環境の再手配には手間がかかり、業務再開までに多くの時間を費やします。VDIはその点、クローニングによって同じ環境を即提供し、すぐさま業務を再開できます」と語る。

北陸先端科学技術大学院大学 遠隔教育研究イノベーションセンター 准教授 宇多 仁 氏北陸先端科学技術大学院大学
遠隔教育研究イノベーションセンター
准教授 宇多 仁 氏
北陸先端科学技術大学院大学
情報環境・DX統括本部
情報社会基盤研究センター
技術専門職員 福島 清信 氏

業務の傾向の変化を受けVDIの処理能力不足が課題に

このようにVDIを有効活用してきたJAISTだが、近年は職員向けの環境で、仮想デスクトップの処理能力不足が課題として浮かび上がっていた。

「最近は職員の業務の傾向が変化し、業務用PCに求められるスペックも変わっています。例えば、本学からの情報発信やリサーチ、職員のオンライン研修やWeb会議など、業務で動画を頻繁に使うようになりました。ところが、従来の仮想デスクトップでは処理能力不足で、動画や音声が頻繁に途切れてしまい、業務に支障をきたしていました」(福島氏)

約20年前のVDI導入当時、スタンドアロンのPCはそれほどスペックが高くなく、VDIの方がCPUはサーバ用でメモリも潤沢など、高スペックであった。現在ではスタンドアロンのPCの方が高スペックな場合もあり、従来型の仮想デスクトップでの業務にストレスを感じる職員も少なくなかった。

JAISTがVDIの処理能力向上の具体策として注目したのがGPUである。
「動画再生の快適化などに有効なのが、グラフィックス処理を強化できるGPUです。最近のPCは標準でGPUを積んだ製品が多く、アプリケーションもGPU前提のものが増えています。本学のVDI環境にもGPUを導入できないか模索していました」と宇多氏は振り返る。

実はJAISTでは既にGPU自体、計算サーバなどで部分的に導入していた。しかし、いずれも高速計算用途の製品であり、VDIには不向きであった。
「最初に導入したGPUは、そもそもパフォーマンスがあまり出ませんでした。その後、ソフトウェアによって仮想的に分割して使える仮想GPUタイプの製品も導入しましたが、同時利用できる仮想デスクトップの台数が少なく、VDIでの大規模展開には不向きでした」と明かす宇多氏。福島氏も「別に検討したGPU製品は、私たちが求める性能は出るものの、サーバへ固定的に組み込む形式であり、リプレースできない点がネックでした」と話す。
同時に、業務継続性のさらなる向上も課題であった。
「VDIは本学の職員の業務を担う基幹のシステムの一部でもあり、安定稼働が何よりも一番のポイントです。VDIのサーバが停止すると業務の継続が困難になります」と宇多氏は述べる。
そして、システム構築・管理に携わる職員が限られているなか、必要最小限の職員によって、VDIの性能と可用性の向上およびその運用管理の効率化を実施することも求められた。

導入のポイント

NVIDIAの仮想GPUを搭載した富士通のサーバを導入

それらの壁を乗り越え、VDIの性能や可用性の向上、運用管理効率化のためにJAISTは、NVIDIAの仮想GPUテクノロジー(vGPU)を搭載した富士通のサーバ「Fujitsu Server PRIMERGY RX2530 M6」(以下、PRIMERGY RX2530 M6)を採用。同学の3世代目となるVDIの更改にあわせて、このたび導入した。

NVIDIAのvGPUは、サーバに搭載されたGPUのメモリを仮想GPUとして分割して、複数台の仮想マシンで高いコア性能を効率的に最大限共有しながら利用可能にする仕組みである。ベアメタルに近いパフォーマンスを得られるとともに、仮想化による管理や設定の柔軟性、冗長化やセキュリティなど多くのメリットを享受できるソリューションだ。GPUには今回、「NVIDIA T4」(以下、T4)を採用した。

「NVIDIAのvGPUは導入前にテストで実際に触って、動画を快適に再生できるなど、仮想デスクトップ上で十分なパフォーマンスを発揮できると手ごたえを得られました。その上、同時利用できる仮想マシンの台数も本学のVDI環境の規模に適しており、しかも、物理サーバ間での冗長化、vMotionなどのライブマイグレーションにも対応しています。まさに私たちの要件をすべて満たした製品でした」(宇多氏)

VDIの性能向上は、vGPUを含めサーバ全体で実現するもの。PRIMERGY RX2530 M6は優れた性能・拡張性、高密度省スペースで、システムのさらなる高速化を実現する2WAYラック型サーバである。宇多氏も福島氏も同製品について、性能に加え信頼性も高く評価している。

「富士通のサーバはVDI用途に限らず、昔から本学内で使っていますが、可用性が高く品質には大きな信頼を置いています」(宇多氏)

「そもそも装置として故障しにくいうえに、仮に障害が発生してもダウンタイムを最小化できる点が基幹システムに最適ですね。製品自体の品質に加え、富士通は拠点が本学に近い金沢にもあり、何かあればフットワーク軽くすぐに駆けつけてくれるなど、充実したサポート体制に安心できます」(福島氏)

富士通は全国を網羅したかたちで拠点を構え、万全の保守体制を敷いている。NVIDIA vGPUを含むハードウェアおよびソフトウェアのトータル一括サポートを提供し、顧客のミッションクリティカルなシステムを支える。

富士通サーバ「Fujitsu Server PRIMERGY RX2530 M6」富士通サーバ「Fujitsu Server PRIMERGY RX2530 M6」

導入のプロセス

柔軟に対応した最適なシステム構成を富士通が提案

今回のVDIを含む基盤更改のスケジュールは、2021年に各ベンターから提案を募り、9月に入札を実施。落札後から構築をスタートし、2022年3月にカットオーバーした。

大まかなシステム構成は、サーバはPRIMERGY RX2530 M6をVDI用に10台、他業務も含めた仮想化基盤用に17台導入した。それぞれのVDI用サーバには、NVIDIA T4を3枚ずつ搭載し、vGPUソフトウェアで仮想GPUを実現。各仮想デスクトップに1GBメモリのvGPUを割り振れるため、パワフルな処理能力が得られる。VDIソフトウェアには「VMware Horizon」を用いている。

これらのシステムの提案から導入、運用管理まで、富士通は同学のシステム構築・運用管理を長年支援し続けている。

「富士通は本学のシステムや業務を熟知しており、いつも最適な提案をしてくれます。今回私たちが求めるVDIの性能、使用時の快適さといった要望を出したところ、vGPUを用いた構成をすぐに提案してくれました。さらには、vGPUで性能がアップしたぶん、別の箇所のスペックを下げても、全体では必要な処理能力が得られる構成にしてコストを抑えたなど、柔軟さもよいですね」(宇多氏)

「提案内容がユーザー数など本学の規模感にぴったりなところもうれしいですね。例えば機器の選定なら、オーバースペックでも不足でもなく、最適な製品を選んでくれます。また、他の機器との兼ね合いも熟慮して、どこか1箇所だけ突出するでも劣るでもなく、全体のバランスがとれた構成を考えてくれます」(福島氏)

構築・運用管理フェーズでのスムーズなやり取りでも富士通を高く評価する。「私たちからの要望などを取りまとめて、富士通のサーバ製品の担当部署やNVIDIA社と密に連携して、構築・運用管理を行ってくれます。いちいち私たち自身で関係各社に連絡や確認をする必要がなく、ワンストップで進められるので話の流れが早く、プロジェクトを円滑に進行できて助かりました」と福島氏は目を細める。

システム構成図システム構成図

導入の効果・メリット

動画再生や大容量データ処理も円滑なVDIを含む仮想化基盤を
物理サーバ40台から27台に集約

JAISTはNVIDIAのvGPU(NVIDIA T4)を搭載した富士通のPRIMERGY RX2530 M6の導入によって、従前に直面していたVDIの課題を解決できた。

「VDIの処理能力を期待通り向上できました。動画や音声が途切れることがほぼ皆無になるなど、職員の快適性が大幅に上がりました。その上、Excelの大きな表がストレスなく扱えるようになったなど、Officeソフトの動作もより快適になりました。職員から感嘆の声があがっているほどです」(福島氏)

「当初の狙い通り、スタンドアロンのGPU搭載PCと同等のパフォーマンスが仮想デスクトップで得られるようになりました。実際にベンチマークをとっても、遜色ないスコアが得られています。今までVDIでは使用をあきらめていたアプリケーションの制限がなくなりました」(宇多氏)

より高信頼なPRIMERGY RX2530 M6の導入と富士通グループのサポートによって、VDI環境での業務継続性の向上も果たした。なおかつ、システム運用管理面でもメリットを得られている。

「vGPUを新たに導入したにもかかわらず、VDIのサーバ全体の運用管理工数は以前とほぼ変わらない点もポイントです。vGPUだからといって面倒なタスクは一切なく、ユーザーも含め意識することなく使えています」と宇多氏は話す。

さらには高密度なPRIMERGY RX2530 M6によって、物理サーバ集約化も実現している。
「更改前は仮想化基盤もあわせ、物理サーバが計40台あったのが27台に減りました。台数が減ったぶん、故障のリスクが低減し、業務継続性の向上に直結しています。消費電力も減り、PRIMERGY RX2530 M6の効率的な冷却機構などとあわせて、省エネをより達成できます」と福島氏は語る。
また、NVIDIAのGPUのライセンスサーバは、従来は自前で立てる必要があったが、今回導入したvGPUではクラウドで提供されるため、その構築・運用の業務負荷が皆無になったという副次的な効果も得られている。

今後の展開

より高度なアプリケーションを利用
VDIを活かして研究・教育を推進

今後は性能向上を果たしたVDI環境を活かし、動画再生やWeb会議、Officeソフトだけにとどまらず、さらに幅広い用途のアプリケーションにも対応させていく。

「施設関係の部署の職員が仮想デスクトップ上でもCADを快適に使用できる環境の準備を現在進めている最中です。他にも動画編集など、より処理能力が必要となる高度なアプリケーションも利活用可能になるよう、VDI環境を拡充していきます」(宇多氏)

並行して、VDIの枠を超え、ユーザーの選択肢を増やす切り口でも環境整備を進めていく。
「仮想デスクトップや物理PCにはそれぞれのメリットがあります。利用する場所やアプリなど、ユーザーが利用する状況に応じて適切に使い分けができるような環境を整備したいと考えています。」と福島氏は構想を述べる。

さらに将来、リアルの世界とサイバー空間を相互で運用し再現する「デジタルツイン」、および、サイバーとリアル要素を接続して組み合わせる「サイリアル」の研究などにも、NVIDIAのvGPUを搭載した富士通サーバの活用が期待される。

「富士通とNVIDIAには、今のソリューションのクオリティを維持するとともに、最新技術の情報提供、製品の有効活用方法の提案など、私たちの研究や勉学の刺激にもなるようなご支援をこれからもお願いします」(宇多氏)

世界トップの研究大学へ向けて、一歩一歩着実に歩みを進めるJAIST。VDIをはじめとする同学の情報システムは、これからも富士通とNVIDIAが支えていく。

担当営業、担当SEメッセージ

【担当営業メッセージ】
本案件は単にJAIST様が求める機能や性能を満たすだけでなく、大学業務のシステム基盤として安定稼働の観点から、PRIMERGYを選定し提案しております。
導入時から現時点までに大きなトラブルもなく、JAIST様の信頼を得ていると感じております。
今後は富士通グループの技術力と安定性を前面に、大学インフラシステムだけでなく、幅広くお手伝いさせていただきたく存じます。

【担当SEメッセージ】
今回、保守を担当しているJAIST様システムのリプレースに提案から携わることができました。
VMware Horizon 8とNVIDIA vGPUの組合せにより高速なイメージ展開が実現し、安定稼働継続と運用負荷軽減に加え、ユーザー様にハイパフォーマンスな仮想デスクトップを提供できるVDI環境が、無事に稼働できたこと大変嬉しく思います。

今後もJAIST様システムの安定稼働はもとより、さらなる発展に貢献できる提案を行っていきたいと思っています。

(右)富士通Japan株式会社
ソリューション開発グループ
文教・地域ソリューション開発本部 第二基盤システム事業部 内田 遥平
(左)富士通Japan株式会社
パブリック&ヘルスケア事業本部
中部公共ビジネス統括部 中部教育ビジネス部 田島 究

*2023年4月現在

国立大学法人 北陸先端科学技術大学院大学

所在地石川県能美市旭台1丁目1番地
学長寺野 稔
設立1990年10月
概要JAISTは、先端科学技術分野における国際的水準の研究と教育を行うため、学部を置くことなく独自のキャンパスと教育研究組織を持つ、我が国で最初の国立大学院大学です。
ホームページhttps://www.jaist.ac.jp

[2023年6月掲載]

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