株式会社IHI 様

航空機用ジェットエンジンの空力解析の統合計算機システムに富士通を採用
稼働率の大幅向上および運用コストを削減

株式会社IHI 航空・宇宙・防衛事業領域 技術開発センターでは、航空機用ジェットエンジンの空力解析・シミュレーションを担う計算機システムのリプレースを実施。これまでも長く技術開発センターを支援してきた富士通による、最新のPCクラスタおよび細やかな付加提案を採用した。これにより解析性能は従来システムの5倍に、ジョブスケジューラを利用することで稼働率も9割にまで向上した。

課題
効果
課題乱立した計算機システムを統合したい
効果富士通の最新PCクラスタ導入による計算機システムの統合
課題計算機システムの稼働率を高めたい
効果ジョブスケジューラ活用により稼働率を大幅に改善
課題解析性能を従来の3倍以上に向上したい
効果最新PCクラスタの性能向上により解析性能が5倍に向上

導入の背景

日本のジェットエンジン生産のリーディングカンパニー

株式会社IHIの創業は嘉永6年(1853年)。日本初の近代的造船所「石川島造船所」を起源とする同社は、造船で培った技術をもとに、陸上機械、橋梁、プラント、航空エンジンなどの分野で事業を展開し、日本の近代化に大きく貢献してきた。現在の同社は総合重工業グループとして、資源・エネルギー、社会インフラ、産業機械、航空・宇宙・防衛の4つの事業分野を中心に、グローバルでビジネスを展開している。

IHIの事業の柱の一つである航空・宇宙・防衛は、航空エンジン事業や宇宙開発事業において世界最先端を探求する技術力と組織力により、空と宇宙の新たな可能性を切り拓いている。なかでも航空機用ジェットエンジンの分野では、日本のジェットエンジン生産の約70%を担うリーディングカンパニーだ。

航空機用ジェットエンジンは実用化までに、要素技術の研究、解析、実験など長い年月が必要だ。「当社はさまざまな新しい技術の研究開発を常に続けています。最近では、エンジンを含む航空機システム全体のエネルギーマネジメントを最適化する『航空機・エンジン電動化システム(MEAAP)』の実現を目指す研究開発も推進しています」と話すのは、株式会社IHI 航空・宇宙・防衛事業領域 デジタルトランスフォーメーション推進部 情報システムグループグループ長の石田 士朗氏だ。

株式会社IHI航空・宇宙・防衛事業領域デジタルトランスフォーメーション推進部 情報システムグループグループ長石田 士朗 氏株式会社IHI
航空・宇宙・防衛事業領域デジタルトランス
フォーメーション推進部 情報システムグループ
グループ長
石田 士朗 氏

選定理由

乱立したシステムの統合と性能向上、稼働率の改善が課題

そうした航空・宇宙・防衛事業領域における、新しい技術の研究開発を担っているのが技術開発センターである。株式会社IHI 航空・宇宙・防衛事業領域技術開発センター 要素技術部 システム・基盤技術グループ 主査の谷 直樹氏は、同センターについて「基礎技術の研究から応用、実用化まで、さまざまな技術開発を担っています。ジェットエンジンの空力などの解析・シミュレーションを行うためには大型の計算機システムとスピードの速い計算ソフトが必須です」と話す。IHIでは2004年に設計解析用にPCクラスタによる並列コンピューティングを導入。2010年にはリプレースを実施して富士通が採用されている。以来、富士通のPCクラスタを基盤に解析業務を行ってきたが、10年が経過し新たな要望が生まれていた。

「プロジェクトごとに計算機システムが乱立する状況になっていたため、業務効率的な観点とコストの面から、統合したいと考えていました。また、システムを統合することで、稼働率の差を軽減し、コストパフォーマンスの向上も期待していました」と話すのは、株式会社IHI 航空・宇宙・防衛事業領域 技術開発センター要素技術部 システム・基盤技術グループ 課長代理の後藤 尚志氏だ。稼働率が半分を切るシステムもあり、統合と運用による改善が求められていた。

もちろん解析性能の向上も必要だ。「乱立したシステムを統合しつつ、性能も向上させることで、トータルでのコストパフォーマンスを高めたいと考えました。性能向上は、当初は3倍を目指していました」と谷氏は説明する。

株式会社IHI 航空・宇宙・防衛事業領域 技術開発センター 要素技術部 システム・基盤技術グループ 主査 谷 直樹 氏株式会社IHI
航空・宇宙・防衛事業領域 技術開発センター
要素技術部 システム・基盤技術グループ
主査
谷 直樹 氏
株式会社IHI 航空・宇宙・防衛事業領域 技術開発センター 要素技術部 システム・基盤技術グループ 課長代理 後藤 尚志 氏株式会社IHI
航空・宇宙・防衛事業領域 技術開発センター
要素技術部 システム・基盤技術グループ
課長代理
後藤 尚志 氏

導入プロセス

最先端のPCクラスタと既存ベンダーならではの安心感のある提案を高く評価

複数のベンダーに提案を求め、検討を行った結果、新たな統合計算機システムとして採用したのが、従来システムのベンダーでもある富士通の提案だ。富士通では今回、Intelの最新CPUであるXeon Gold 6248プロセッサー (コード名Cascade Lake-SP)を搭載したPRIMERGYサーバによるPCクラスタを統合計算機システムとして採用。十分な演算性能を実現するとともに、基盤となるネットワークやファイルサーバ、ジョブスケジューラ、さらにSEによる運用サポートなども合わせて提案した。

「提案内容や金額などを評価して決定しましたが、富士通を採用した大きな要因の一つが最新の機器、基盤を導入できることです。発表されたばかりの最先端システムの提案を高く評価しました。加えて、これまでのシステムでのしっかりとしたサポート実績がありましたので安心感も大きかったです」と後藤氏は富士通採用の理由を語る。

さらにポイントとなったのが、要件を満たした上でのさらなる付加提案だった。富士通では既存システムのベンダーとして、今後課題になると想定される事項とその支援についても提案を行った。「要件以外の部分でも細や かなサポートなど、プラスアルファで考えてもらった点も、私たちとしては心強いと感じました」と谷氏。

新たな統合計算機システムの導入は、既存のサーバを一気に入れ替えるのではなく、順に入れ替えていくことで解析業務を止めることなく実施された。「サーバルームが手狭なこともあり、ラックを整理しつつ導入を行いましたが、スペースを最大限効率的に活用できるように計画から一緒に考えてくれました。そのお陰で、大きなトラブルもなく稼働をスタートできました」と評価する。

効果と展望

解析性能は5倍に、システムの稼働率も9割まで向上して大幅に改善

 稼働後は、大きなトラブルもなく安定して解析業務に活用されている。要件となっていた性能についても、「当初目標の3倍はクリアしていますし、パラメータなどをチューニングにすることで5倍程度にまで性能が向上しています」と谷氏は効果を語る。

 稼働率については、導入したジョブスケジューラが大きな威力を発揮している。これまでには稼働率が半分以下というシステムもあったが、「9割近くまで向上し、想定以上でした」(後藤氏)。

今回の導入について石田氏は、「技術開発センターの案件だけでなく、富士通とはメインフレームの時代から長い付き合いがあります。計算機システムだけでなくその基盤となるネットワークから運用サポートまで、安心してお願いできる、良い導入ができたと思います」と語った。

 IHIでは今後、今回導入した統合計算機システムの活用を同社内にさらに広げていく構えだ。「当社には解析計算を必要とする部門が多くありますが、現状、当システムは私たちの利用がほとんどです。近年のモノ作りには解析が必須ですので、他の部門でも一緒に活用できるようにさらに基盤を整備していきたいと思います」と谷氏は展望を語る。すでに他の解析業務を行う部門からも今回導入の統合基盤システムについて問い合わせもあり、将来的には 全社的に解析の基盤をさらに集約・効率化し、より性能を高めていくことで海外との競争にも勝ち抜いていくことのできる基盤を作って行きたいと語った。

導入システムの全体概念

株式会社IHI

所在地〒135-8710 東京都江東区豊洲三丁目1-1 豊洲IHIビル
代表者代表取締役社長 井手 博
創業1853年12月5日
資本金1,071億円
従業員数7,741名 連結対象人員:28,964名(2020年3月末)
事業内容産業機械、車両用過給機、物流システム、環境保全装置、発電用ボイラ、各種プラント、航空機用エンジンなどのエンジニアリングおよび製造・販売
ホームページhttps://www.ihi.co.jp/

[2021年1月掲載]

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