1947年創業以来、暮らしと地球環境の向上に貢献する積水化学グループ様。グループにおける高機能プラスチックス事業の基幹工場となる滋賀水口工場は、働き方改革の一環として安全性と生産性の向上を目指し、設備保全管理システム「FUJITSU Enterprise Application PLANTIA(以下PLANTIA)と振動測定センサーとを連携した仕組みを構築。センサーの活用により、回転機器の点検測定から危険性を回避するとともに、従来月1回の点検では見ることができなかった日々稼働する設備の状態把握、データに基づく点検業務の平準化を実現した。同社は今回の成果を受け、他工場への展開も検討している。さらにモバイル日常点検ソリューションも導入し、1人1か月あたり平均300分の労働時間の削減を図っている。
[ 2019年10月10日掲載 ]
業種: | 製造業 |
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ソリューション: | 設備保全管理(IoT/センサー活用、モバイル日常点検) |
製品: | FUJITSU Enterprise Application PLANTIA |
1 | 設備点検業務の見える化を実現したい | 15分周期にセンサーデータを収集し、データをもとに回転機器の状態をグラフ化。目視できない装置内や高温部分の測定も可能に。安全性を確保しながら精度向上により故障を未然に防止 | |
2 | 設備点検業務の平準化を図りたい | 閾値を設定しグラフの色の変化により注意喚起を促すなど、新人でも異常の発見が可能に。属人化を解消し点検業務の平準化を実現 | |
3 | 日常点検業務の時間削減、点検漏れの防止を実現したい | 紙の点検表をペーパーレス化し、モバイル端末からの登録により1か月で1人あたり平均300分(5時間)の時間削減を実現。QRコードの活用により点検履歴の見える化を実現 |
城下 健一 氏
積水水口化工株式会社
設備・UTTグループ
保全課 課長
1947年創業、「住・社会のインフラ創造」と「ケミカルソリューション」のフロンティアを開拓し続け、暮らしと地球環境の向上に貢献する積水化学グループ。社会的価値を創造するService(サービス)、スピードをもって市場を変革するSpeed(スピード)、際立つ技術と品質で社会からの信頼を獲得するSuperiority(スペリオリティ)の社是3S精神のもと、住宅、環境・ライフライン、高機能プラスチックスの3つの事業をグローバルで展開している。
積水化学グループは企業活動において、環境、CS(お客様満足)品質、人材の3つの“際立ち”を大切にしている。「事業の原動力となる人材の“際立ち”では、『自ら手をあげ挑戦する』人を応援する人材方針や企業文化がグループの強みとなっています」と、積水水口化工(株) 設備・UTTグループ 保全課 課長 城下健一氏は話す。積水水口化工(株)は、積水化学工業(株)の高機能プラスチックス事業で基幹工場となる滋賀水口工場にて世界トップシェアの複数製品(中間膜、ファインケミカル製品、機能性樹脂)の製造・検査・出荷を担っている。
積水化学グループでは多様性や個性を尊重するダイバーシティを推進するため、時間をかけて成果をあげる働き方と決別し、限られた時間で成果を最大化する生産性の高い働き方を追求している。積水水口化工(株)は富士通の設備保全管理システムPLANTIAとセンサーを連携させ、保全業務の働き方改革に取り組んでいる。
古泉 京将 氏
積水水口化工株式会社
設備・UTTグループ
保全課 機械係
保全業務における従来の課題について、中間膜グループ 中間膜製造課 製造技術係 織田雄也氏はこう話す。「当社では回転機器を装備する設備が大半を占めています。安全性には十分配慮していますが、駆動部分を測定するため危険とは常に隣り合わせでした。また従来、回転機器の点検は、1つの生産ラインで200程の点検個所があることから、月に1回、ベテランのスタッフが数日に分けて振動測定器を使って点検に回っていました。1か月に1度ではトラブルを発見できても、部品の摩耗が進み過ぎるなど手遅れになっているケースもありました」。
富士通から安全性や生産性の高い働き方を実現するべく、PLANTIAとセンサーを連携する仕組みの提案を受けた積水水口化工(株)は、2017年4月に実効性を検証するためPoC(概念検証)を実施。その内容について設備・UTTグループ 保全課 機械係 古泉京将氏は振り返る。「富士通の支援のもとPoC用の装置を作って、これまで蓄積してきた事象をもとに様々なトラブルが発生する状態を再現し、異常を検知できるかを検証しました。検証の結果、従来の振動測定器と差異がほとんどなかっただけでなく、従来は測定できなかった低速領域まで検出できることがわかりました」。
従来の振動測定器との決定的な違いについて織田氏はこう付け加える。「センサーの場合、15分周期でデータを収集するため、これまで月1回の点検データでは見ることのできなかった機器の状態を常に把握することができます。例えば回転機器単体の故障ではなく外部的な要因の場合、振動データが急激に上昇するといった傾向を見える化できることも実証できました」。目視できない装置の内部や、触れることのできない高温部分などにもセンサーを設置し検証を行い、異常を検知できることも確認できたという。「回転機器の点検測定から危険性を回避するとともに、人が立ち入ることができない装置内部の軸受までセンサーにて測定できることで、点検における範囲拡大と精度の向上が図れます」(城下氏)。
織田 雄也 氏
積水水口化工株式会社
中間膜グループ
中間膜製造課 製造技術係
PoCでの検証結果を評価し、2018年1月に1つの生産ラインにおける70台の装置に330 個のセンサーの取り付けを完了、2018年3月に実稼働した。稼働後、1年が経過し導入効果が明確にあらわれてきていると織田氏は話す。「2018年度下期のみでセンサーのデータを活用し10件の故障を未然に防止できました。当社は稼働率が高いため、故障による数時間の停止でも生産に大きく影響し、お客様にご迷惑をおかけします。当社で稼働している設備の多くが回転機器であり、計画外停止のうち70%が回転機に起因すると想定しており、センサーデータに基づくメンテナンスによる未然防止には大きな期待を寄せています。働き方改革の観点では振動測定の自動化により毎月120分の時間削減が図れました。また閾値を設定し、故障が発生する前にグラフ上での色の変化により注意喚起を促すなど、新人でも異常に気づくことを可能とし、点検業務の平準化による生産性向上を図っています。現在、管理室の大きなモニターにグラフを表示する“見せる化”も検討中です」。
概要図 センサーデータと設備管理システムの連携
今中 友美子 氏
積水水口化工株式会社
設備・UTTグループ
保全課 電気係
今回、積水水口化工(株)ではIoTの活用とともにPLANTIAと連携するモバイル日常点検ソリューションを導入した。従来、点検記録をPLANTIAに登録する場合、実施対象の点検表を印刷し、点検を行い、その結果を点検表に記入、事務所に戻って点検表を見ながらPLANTIAへ入力していた。導入効果について設備・UTTグループ 保全課 電気係 今中友美子氏は「紙の点検表をモバイル端末での登録にしたことで、ペーパーレス化し二重登録などがなくなり、1か月で1人あたり平均300分(5時間)の時間削減が図れました。また転記ミスや点検漏れの防止にもつながっています」と話し、PLANTIAとのデータ連携によるメリットについて言及する。「異常値を設定しており、新人でも異常を発見できるため、その場で修理案件の情報を入力し修理部門に対応を依頼することができます。また点検現場で保全履歴を検索したり、回転機器に設置したセンサーデータのグラフを見て確認することで、不具合の早期発見や判断精度の向上が図れます」。
モバイル日常点検リューションは、設備に添付したQRコードを読み込むまで点検ができない仕組みとなっている点も特徴だ。「海外工場に対しては、未実施でも点検済みとならない仕組みや、点検履歴を見える化することでより高い信頼性を保てます。また国内工場では、点検が早い人の作業動線を見える化できることで、生産性の向上に役立てています」(織田氏)。
川口 健志郎 氏
積水水口化工株式会社
設備・UTTグループ
保全課 機械係
2018年4月、積水水口化工(株)では働き方改革を加速させるべく、PLANTIAを軸とする工場内と社内グループの横断的IoTプロジェクトを立ち上げた。IoTプロジェクトのもとセンサーの利用シーン拡大も進めていると、設備・UTTグループ 保全課 機械係 川口健志郎氏は話す。「従来、巡回点検の際、人間の耳を使って音による点検を行っていましたが、五感による点検は個人差があることに加え、新人教育も困難です。音響センサーを導入することで、五感に頼らず、データにより周波数の見える化を実現できます。また温度、冷却水の流量、電流値など様々なセンサーの導入を検討中です。『こういうことがやりたい』という私たちの思いを富士通に伝え、かたちにしていただき、“限られた時間で成果を最大化する生産性の高い働き方”を実現する保全業務システムを一緒につくりあげています」。
今回の導入成果を受け、積水化学工業では全社的に水平展開を進めていく計画を立てている。また海外工場への適用も目指しており、すでにいくつかの工場に導入済みだ。城下氏は最後にこう締めくくる。「富士通には、保全業務における私たちの挑戦に耳を傾け、営業と技術が一体となってサポートしていただき、感謝しています。これからは変わらぬサポートに加え、当社の保全業務への深い理解のもと様々な課題を解決する先進的な提案も期待しています」。
富士通はこれからも先進技術と総合力を駆使し、「世界にまた新しい世界を。」のグループスローガンのもとイノベーションの創出に取り組む積水化学グループの挑戦を支援していく。
本社所在地 | 大阪本社
〒530-8565 大阪府大阪市北区西天満2-4-4 東京本社 〒105-8450 東京都港区虎ノ門2-3-17 |
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代表者 | 代表取締役社長 髙下 貞二 |
設立 | 1947年3月3日 |
資本金 | 100,002百万円 |
従業員数 | 26,486名(2019年3月期連結ベース) |
事業概要 | 住宅、環境・ライフライン、高機能プラスチックス
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ホームページ | https://www.sekisui.co.jp/company/project/ |
本社所在地 | 〒528-0056 滋賀県甲賀市水口町泉1259 |
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代表者 | 代表取締役社長 武智 昌裕 |
設立 | 2002年4月1日 |
資本金 | 1,000万円 |
従業員数 | 371名(2019年4月現在) |
事業概要 | 以下の製品の製造、検査、出荷等
車輛用・建築用合わせガラスに用いられる「中間膜」、セラミックスバインダー等に用いられる「機能性樹脂」、液晶ディスプレイ等に用いられる「プラスチック微粒子」「導電性微粒子」「感光性樹脂」 |
ホームページ | https://www.sekisui-minakuchi-kako.com/ |
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