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それぞれの持てる強みを持ち寄って競争力を世界レベルで強化しよう――2つの鉄鋼メーカーの思いが一つになり、2003年4月、JFEスチール株式会社が誕生しました。 同社はまったく新しい経営環境のもと、システムにおいても統合と変革を同時に実行しようと、変化に強い柔軟な鉄鋼システムをめざして、3年計画の新統合システム「J-Smile」開発プロジェクトに着手。そこで最重要視されたのがデータモデリングで、実際のシステム開発においても、データベース設計部分は専門チームが実施しました。そこでのデータモデリングツールとして採用されたのが、日揮情報システム(現:富士通エンジニアリングテクノロジーズ)の販売するデータベースの論理・物理設計をビジュアルで表現可能なデータベース設計・管理支援ツール「ERwin Data Modeler」でした。
JFEスチールが正式にスタートを切ったのは、2003年4月のことでした。今日、企業活動を推進するにあたって、情報システムの高度活用は不可欠です。特に鉄鋼メーカーにおいては、そのシステムについて他の業界にはない大きな特長を有しています。それは鉄鋼生産に要するデータ項目約9万項目、データ量が約10TB(テラバイト)と、非常に膨大なデータボリュームが注文から出荷まで一貫して流れるということです。たとえば、薄板と呼ばれる鉄鋼製品では、顧客から要求されるデータ項目だけでも約3000にも上ります。規格・用途ごとにさまざまな鉄鋼製品を生産する必要があり、それに製造プロセスの中できめ細かく対応し、また最後にはそれが要求どおり生産されたことを保証するため、数多くの品質検査を行わなければいけません。つまり、非常に複雑かつ高度な要求に応える企業情報システムが必要でした。
同社は、経営統合時点では、旧川崎製鉄、旧NKKのシステムを互いにブリッジして利用しましたが、最終的にはJFEスチールとしての新基幹システムを3年かけて一から構築しなおすことを決断しました。旧両社の鉄鋼システムは構築から20年以上経過して時代の要請に合わせにくくなっており、2つのシステムのブリッジ利用では複雑さは増すばかりです。この機会に、とりまく事業環境が時々刻々と変わっていく現代に対応するべく、変化に柔軟かつ迅速に対応できるシステムを実現しようと考えました。「J-Smile」と名づけられた新統合システムは、システム統合によりマネジメントや業務の統一を図るとともに、変化するビジネスモデルへの対応を行うという変革をも同時に実行するものとなったのです。
この新統合システムの構築で最も重要視されたのが、概念データモデリングです。たとえビジネスが時代に合わせて変化したとしても、データそのものは変わりにくいという点に着目し、鉄鋼ビジネスの根幹をなすデータとデータ間の関連をモデル化し、変化に強いデータベース構造を確立することをめざしたのです。3年計画のシステム開発プロジェクトのうち、最初の1年間はこのデータモデリングに専念するという力の入れようでした。
また、システムにおいてデータが最も重要な資産であるという考え方に基づいて、システム開発プロジェクトの体制づくりにおいても、販売・生産・流通、経営管理、購買といった個々の業務アプリケーションを開発するチームとは別に基盤グループの中に、データベース基盤の整備やハードウェア/ソフトウェア基盤の整備を専門に行うメンバーを情報基盤チームとして配しました。その数はピーク時で約30名にも上りました。
この情報基盤チームでは、その作業を効率化するためにデータモデリングツールを採用することになりました。複数メンバーで同時並行的に開発を進めるために設計成果物を共有するリポジトリが必要で、テーブル数にして約7000にも上ったデータベースの物理設計において、データ定義言語(DDL)作成の効率化が目的でした。 情報基盤チームは、ツールの選定に当たって5つの要件を掲げました。
1つ目は、複数のデータベース管理システムのサポートとDDLの作成が可能であること。新統合システムでは、本番のデータベース環境としてメインフレームのIBM DB2が採用されましたが、開発環境のOSはUNIXおよびWindowsでDB2 Universal Databaseを利用することになっており、データモデリングツールはこの双方に対応している必要がありました。 2つ目は、複数メンバーによる同時並行開発作業が実現できること。つまり、チーム開発を前提としたツールでなければなりませんでした。 3つ目は、設計成果物をプロジェクト内で共有できること。設計に携わるすべてのメンバーが正しいアクセス権限の中で、設計成果物を自由に閲覧できることが重要でした。 4つ目は、実装段階において、応急処置的にデータベース構造の非正規化にも対応可能であること。 5つ目は、並行して利用するデータ定義管理ツールとの連携機能を有していること。 これら複数の要件を見事クリアして選ばれたのが、日揮情報システム(現:富士通エンジニアリングテクノロジーズ)が販売するデータベースの論理・物理設計をビジュアルで表現可能なデータベース設計・管理支援ツール「ERwin Data Modeler」でした。
JFEシステムズ株式会社 東京事業所 新統合グループ 主任部員(課長) 亀谷成氏はその理由について次のように語ります。 「ERwinは、今回対象となるデータベース、OS/390 DB2 V7、DB2 Universal Database V8の双方を2003年10月の検討時点でサポートしており、他の候補ツールと違ってチーム開発が可能であるという点で最も大規模開発向けだと判断したのがERwin選定理由です。また、画面の設計がよくできていて、これを使えばこういうことができるというのが直感的に理解でき、使い勝手がいいと思ったのも大きな要因です。バッググラウンドの異なるさまざまなメンバーが利用するので、わかりやすいツールであることは非常に大切でした」
さらに、ERwinは国内外でのマーケットシェアが高いことから、情報も多く適切なテクニカルサポートが受けられるという期待を持てたのも採用の一因だったといいます。 実際のシステム開発段階では、業務アプリケーション開発チームはデータベースに関わる作業は一切行わず、情報基盤チームが彼らからの要請を受けて、データベースの物理設計を行いました。毎週金曜日にその週の受け付けを締め切って、翌週の金曜日に成果物をリリースします。木曜日には品質デグレーション防止テストを行うため、実際の設計作業は月曜日から水曜日までの3日間しかなかったのですが、ERwinを利用することで、一人が複数の依頼案件を効率よくこなすことができました。ピーク時には一週間で1000近くの依頼があったといいますが、約30名のメンバーですべてを無事こなすことができました。 新統合システムはテーブル数にして約7000とそれだけでも膨大ですが、テスト段階ではその環境をピーク時で9つ作成したといいます。したがってテーブル数は7000の9倍です。 「ERwinのDDL作成支援機能がなかったら、とてもそのようなテスト環境は構築できなかったでしょう」 JFEスチール株式会社 IT改革推進部 基盤グループリーダー 主任部員(部長) 原田敬太氏は、当時を振り返ってこう語ります。
また情報基盤チームは、データベースにアクセスするための専用ソフト部品「データベース・アクセス・オブジェクト」(DAO)を作成し、業務コンポーネントからデータベースにアクセスする際には、必ずDAOを利用するルールを設けました。この際、DAOのクラス自動生成に、ERwinの物理データベース設計をXML化する機能が利用されました。もともとはレポートやドキュメント作成を目的として用意された機能ですが、情報基盤チームが独自の視点で転用、これも開発生産性の向上に大きく役立ったといいます。
2006年12月、3年プロジェクトの最後の開発案件であった流通基地システムがカットオーバーを果たし、鉄鋼板ERPを作るほどの大事業といわれた「J-Smile」は無事にゴールを迎えることができました。データモデリングに重きを置いた新システムは、早くもさまざまな場面でその効果を発揮しています。 「たとえば、年に一度の組織変更の際、従来なら、関連するデータベースの変更に1、2ヶ月はかかっていましたが、2006年度は1週間で切り替えが完了しました」(原田氏) 新統合システム開発の目標であった、“変化に強い柔軟なシステム”がまさに実現されたといえます。今後は、製鉄所ごとに存在する複数の生産管理システムをさらに変化対応型と進化させるために、新しい開発プロジェクトをスタートさせる予定だとのこと。グローバルな大競争時代を勝利すべく、前例のない大規模システム開発に果敢に挑み続けるJFEスチールから目が離せません。
※役職は2007年現在のものです
グローバルな大競争時代を勝ち抜くために、川崎製鉄、NKKという二つの大手鉄鋼メーカーが両社の持てるリソースの共有をより深めることによって、一層のコスト削減、操業の効率化などを推進しようと歴史に残る企業統合を実現しました。そうして誕生したのがJFEスチール株式会社です。同社の企業理念は、社会全般に必要不可欠な鉄鋼製品を常に世界最高の技術をもって提供し、社会に貢献することです。めざしているのは、「21世紀のエクセレントカンパニー集団」です。