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デジタル革新を支える人工知能Zinrai


雑誌FUJITSU 2018-7

2018-7月号 (Vol.69, No.4)

富士通は,2015年11月にAI技術ブランドとしてFUJITSU Human Centric AI Zinraiを発表し,2017年4月からZinraiプラットフォームサービスの提供を開始しました。
本特集では,実践事例,ソリューション,最先端テクノロジーという三つの観点から富士通のAIへの取り組みについてをご紹介します。

論文関連情報

論文

巻頭言

総括

富士通のAIビジネスへの取り組みと最先端テクノロジー (713 KB) 関連情報
山影 譲, 丸山 文宏, p.2-7
近年,新たなAI(人工知能)技術やAIを活用したサービスが続々と登場し,企業や生活者を取り巻く環境が大きく変わりつつある。この大きな変革の時代に対応するために,富士通は30年間にわたるAIの研究によって得られた成果を活用し,人を中心に考えたICTをお客様や社会に提供し,その技術をFUJITSU Human Centric AI Zinraiとして体系化している。Zinraiは,これまで以上に人にやさしいICTの実現を目指し,富士通の学習技術,感性メディア技術,知識技術,および数理技術を体系化したものである。
本稿では,Zinraiのソフトウェア,サービス,インフラ,ハードウェアそれぞれの取り組みについて述べる。また,富士通のAIビジネスの展開を紹介する。

AI技術を駆使した実践事例

ビジネスをAIで変革するZinraiディープラーニングの基礎知識と適用事例 (1.01 MB ) 関連情報
上田 昌伸, 永井 浩史, p.8-14
近年,熟練技術者が必要とされる作業にDeep Learning(以下,DL)を導入したい,または既存の業務アプリケーションの一部に組み込みたいという要望が,お客様の現場で高まっている。DLは,例えば業務に関する大量のデータを学習して,そのデータに埋もれている様々な特徴量を学習モデルに変換でき,その学習モデルを活用して業務データを解析することで大幅な業務改善効果をもたらす可能性がある。一方,DLの導入によって予想される具体的な効果をあらかじめ理解しておきたいという要望が多い。これを解決するため,富士通はZinraiディープラーニング基盤と,その導入を支援するテクニカルサービスを提供している。
本稿では,Zinraiディープラーニング基礎知識と,監視セキュリティ分野,流通小売分野,および社会インフラ分野の三つのDLの適用事例を紹介する。
AI技術による申請審査業務の改善と市民サービス向上 ~大阪市様戸籍業務への専門分野別意味検索AI技術の適用~ (726 KB) 関連情報
津森 芳美, 小田 樹, 吉田 智, 畠山 聡, 松田 雄高, p.15-19
お客様からの問い合わせへの対応業務(窓口・コールセンターなど)においては,人員の入れ替わりも多いため,ベテランの知見がなくともナレッジを活用し,一定のレベルで対応できることが求められている。このようなナレッジ活用のニーズに対して,FAQを活用する方法や構造化された知識情報を活用する方法がある。この度,大阪市様の戸籍業務において,富士通の専門分野別意味検索AI(人工知能)技術を用いて,戸籍業務書籍やマニュアルの膨大なデータから必要な情報を検索できるようにし,ベテラン職員でなくとも効率的な業務を行うことを可能とした。この手法により,FAQを活用する際に必要としていた膨大な学習データの準備が不要となった。
本稿では,専門分野別意味検索AI技術の概要と,大阪市様の戸籍業務への適用事例を紹介する。
MICJET MISALIO子育てソリューションへのマッチング技術の適用とさいたま市様における実証実験 (867 KB) 関連情報
宮崎 俊也, 春木 研一, 河野 大輔, 岩下 洋哲, p.20-25
多数の人間がサービスや仕事に割り当てられる際に,社会における利害が必ずしも一致しない人々の関係を合理的に解決しなければならないシーンが存在する。たとえ複雑な制約条件があったとしてもその解決が求められるため,従来は表計算ソフトなどを使った人手による処理に膨大な時間を要していた。また,全員が満足する結果をもたらすことも困難であった。この問題に対し,富士通はゲーム理論に基づいて数理モデル化し,マッチング技術(数理最適化技術)としてMICJET MISALIO子育てソリューションに適用した。これにより,従来は数十人で数日を要していた割り当て作業を,数秒で行えるようになった。
本稿では,本技術の概要とさいたま市様の保育所入所選考のマッチング問題に応用した事例について述べる。
安定した予測精度と運用効率化を両立するAI需要予測 ~動的アンサンブル予測~ (796 KB) 関連情報
渡部 勇, 芳林 徹, 今岡 干城, p.26-34
メーカー・卸業者・小売業者がサプライチェーンを構成する流通業界において,商品開発・生産管理・物流・販売などの企業活動は需要予測を起点としている。そのため,需要をより正確に捉えた経営改善・改革が各企業の重要な経営課題となっている。しかし近年,消費者需要の多様化,商品の多品種化,ライフサイクルの短期化が進み,需要の正確な予測がますます難しくなっている。一方,少子高齢化を背景に人員確保が難しくなっており,昨今のAI(人工知能)技術の進展に伴い,AIを活用した需要予測の自動化・高度化への期待が高まっている。これに対して,富士通研究所ではAIを活用して需要予測を行う動的アンサンブル予測技術を開発した。本技術は,モデル統合の手法により,多種多様な商品の特性に柔軟に対応する安定した高精度予測を実現し,更に自動チューニングによる運用負荷軽減をも実現する。また,過去の販売や出荷の実績データがない新商品の販売予測技術である属性分解モデルも併せて開発した。
本稿では,動的アンサンブル予測技術と属性分解モデル技術を紹介するとともに,本技術を活用したソリューションの取り組みと適用例について述べる。
Imagification技術とDeep Learningによるブレード非破壊検査支援:製造現場への適用のためのDigital Co-creation (938 KB) 関連情報
古屋 早知子, Ali Sanaee, Serban Georgescu, Joseph Townsend, Peter Chow, Bjarne Rasmussen, David Snelling, 後藤 正智, p.35-41
風力発電は再生可能エネルギーの中でも期待が大きく,急速に成長している。発電の最重要部品であるブレードには非常に大きな荷重がかかるため,製造工程における品質検査基準は厳しい。品質検査では超音波による非破壊検査を実施しており,例えば全長75 mの画像から数cmの欠陥可能性箇所を検出するために,検査技師が細かく分析している。これは長い時間を要する作業であり,ヒューマンエラーが発生する懸念もあった。欧州富士通研究所では,独自開発したImagification技術と画像認識用Deep Learningエンジンを組み合わせて,検査量の削減とヒューマンエラーを予防するための欠陥検知支援システムを開発した。更に,お客様が持つ画像データの知見・知識をデジタル化して統合し,品質検査支援ソリューションを構築した。
本稿では,欠陥検知支援システムの開発の概要と実用化に向けて行ったDigital Co-creation(デジタル共創)について述べる。
画像認識AIを活用した外観検査の自働化 (1.08 MB ) 関連情報
廣野 慎一, 内部 剛志, 村田 寿憲, 伊東 信之, p.42-48
島根富士通は,ノートPCとタブレットのプリント板実装から装置組立,出荷までを一貫して行っている。個々のお客様のニーズに対応した1台単位のカスタマイズ製品をタイムリーに出荷するため,人と機械の協調生産を推進している。その中で,装置製造ラインでは画像認識技術による自働外観検査機を展開し,製品品質の安定化に努めてきた。しかし,昨今の製品仕様の多様化・マスカスタマイゼーションの進展に伴い,検査画像における特徴量の登録作業で負担が急増している。更に,従来のパターンマッチング処理では検出が困難な不良パターンが発生しており,アルゴリズム作成作業の簡素化と不良品の検出精度向上が課題となっていた。これらの課題を解決するため,富士通独自の画像認識AI(人工知能)であるFUJITSU Manufacturing Industry Solution COLMINA Service AI-Proを活用した検査アルゴリズムの自動生成技術により,従来は困難だった良否判定を可能とし,アルゴリズム作成の属人性排除および検査検出精度の向上を実現した。
本稿では,AI-Proを活用した量産ラインにおける自働外観検査機の実践事例と展望について述べる。

AIソリューション

スマート都市監視を実現する富士通のDeep Learning技術 (1.13 MB ) 関連情報
木下 修平, 若槻 政幸, 堀之内 省吾, 田辺 聡, 東 明浩, p.49-56
安価なIPカメラの普及により,世界中のあらゆる都市で監視カメラの台数が爆発的に増加している。これを有効活用するため,AI(人工知能)によるスマート都市監視が注目されている。富士通では,2018年3月にスマート都市監視用ソリューションFUJITSU Technical Computing Solution GREENAGES Citywide Surveillance V2の提供を開始した。Citywide Surveillanceを支える基盤技術はDeep Learningであり,これをビジネスに適用するには,基本性能となる解析精度,処理速度,および導入コストを満足することが重要である。更に,Deep Learningのみでは顧客に価値を提供することは難しいため,その周辺技術も併せて整備する必要がある。
本稿では,上記の精度,速度,コストを満足するための富士通の技術および顧客に価値を提供するための共創型の取り組みについて述べる。また,Citywide Surveillanceのビジネスへの活用事例を紹介する。
チャットボットの会話テクニック (816 KB) 関連情報
倉知 陽一, 川上 真一, 宮澤 孝彰, p.57-62
AI(人工知能)などのデジタルテクノロジーを活用することで,顧客とのエンゲージメント(絆)を強化する「感情的価値」の提供,つまり,ポジティブなサービス利用体験(カスタマーエクスペリエンス)による顧客の心の満足の実現が求められている。そこで注目されているのがチャットボットである。まるで人のように会話し,「そこに知能がある」と人に錯覚させることができるものがチャットボットの本質である。
本稿では,「どのように実装すれば,うまく人に錯覚してもらえるようになるのか」という観点で,チャットボット実装に活用できる会話のテクニックを紹介する。

Zinraiを支える最先端テクノロジー

お客様ビジネスのデジタル革新を加速するZinraiプラットフォームサービス (871 KB)
土屋 哲, 阿部 雄一, 谷本 亮, 岩崎 靖, 森井 理吉, p.63-69
富士通が提供するZinraiプラットフォームサービスでは,AI(人工知能)の要素技術ごとに「知覚・認識」「知識化」「判断・支援」の3分野に分類された基本API(Application Programming Interface)と,要素技術を利用シーン別に組み合わせてお客様の業務においてAIをより容易に活用できる機能やナレッジで構成した目的別APIを提供している。基本APIは,画像認識や音声認識,文字情報からの知見の抽出,製造現場での異常発見などを可能とする基本機能を提供するが,データ整備やパラメーター調整などが必要な場合は手間がかかるという問題があった。そこで,特定の問題解決に必要な機能や設定をあらかじめ整備・調整した目的別APIも提供し,企業向けのAI適用を支援する。
本稿では,Zinraiプラットフォームサービスの主な機能や特徴を紹介する。また,プラットフォームのサービス機能構成の考え方を解説した上で,活用事例を基に企業における本サービスの有用性について述べる。
Zinraiディープラーニングが提供する深層学習システム開発環境 (795 KB)
藤井 崇志, 佐々木 卓, 吉田 裕之, p.70-76
AI(人工知能)の分野で中心的な技術となったDeep Learning(深層学習)は,ニューラルネットワークを多層にしたものであり,従来技術より認識精度が高く,研究開発のみならずビジネスへの活用も期待されている。一方で,高い認識精度を得るためには,学習に用いる大量の教師データを準備し,ニューラルネットワークなどを選択した上で,利用者自身が様々なパラメーターをチューニングしながら何度も学習させる必要がある。更に,この学習には高速演算可能な計算リソース(GPU:Graphic Processing Unit)を確保する必要もある。富士通では,これらの課題を解決するための深層学習システム開発環境「Zinraiディープラーニング」を2017年4月から提供している。
本稿では,Zinraiディープラーニングがどのように上記の課題を解決しているかについて述べる。
組合せ最適化問題を高速に解くデジタルアニーラの活用技術 (820 KB) 関連情報
左尾 将隆, 渡邉 裕之, 武捨 悠一, 宇都宮 啓宏, p.77-83
我々の社会には,災害復旧の手順や投資ポートフォリオの最適化など,様々な要素の組み合わせの中から最適なものを選択する「組合せ最適化問題」が存在する。組合せ最適化問題は,要素の数が増えると組み合わせの数が爆発的に増えるため,問題によっては汎用コンピュータでは現実的な時間内で解けないものがある。このような組合せ最適化問題を高速に解くアーキテクチャーとして,量子コンピュータの研究開発が進んでいる。しかし,現在の量子コンピュータは,安定動作や対応可能な問題の規模に課題がある。また,量子コンピュータに問題を解かせるためには,組合せ最適化問題をイジングモデルに変換する必要がある。これらの課題を解決するために,富士通は量子コンピューティングに着想を得た新しい計算機アーキテクチャーによる「デジタルアニーラサービス」を2018年5月にリリースした。
本稿では,お客様が抱える組合せ最適化問題をデジタルアニーラで解決する技術である問題の数式化と,QUBO(Quadratic Unconstrained Binary Optimization)への変換について解説する。また,デジタルアニーラによって新しいコンピューティング市場をグローバルに創生していく富士通の取り組みについて述べる。
AI時代の新しいスーパーコンピュータに向けた富士通のアプローチ (728 KB) 関連情報
田原 司睦, 笠置 明彦, 荒川 敬, 吉岡 祐二, 林 秀範, 伊藤 欣司, p.84-89
現在,日本国内ではAI(人工知能)技術の研究開発と研究成果の社会実装を加速させるという政府方針により,AI処理向けスーパーコンピュータ(以下,AIスパコン)の整備が急速に進んでいる。従来のスパコンとは異なり,AIスパコンには新たな要件が求められる。それは,深層学習処理における学習精度と学習速度に着目した標準的な性能評価方法に基づいたサイジング,および頻繁に更新されるフレームワークにタイムリーに対応できるアプリケーション実行環境である。富士通および富士通研究所は,AIスパコン向けの新たな性能評価方法や運用技術を考案した。これを従来のスパコン技術と組み合わせて,産業技術総合研究所様および理化学研究所様向けの世界トップレベルのAIスパコンに実装し,今後のAIスパコンのリファレンスとなるシステムを納入した。
本稿では,AIスパコンの概要と動向,運用課題への取り組み,およびAIスパコンに求められる性能評価方法について述べる。更に,開発した技術のAIスパコンへの適用とその効果を述べる。
Deep Tensorとナレッジグラフを融合した説明可能なAI (1.12 MB ) 関連情報
富士 秀, 森田 一, 後藤 啓介, 丸橋 弘治, 穴井 宏和, 井形 伸之, p.90-96
近年のAI(人工知能)の最も大きな成果の一つは,深層学習による機械学習精度の大幅な向上である。しかし,深層学習は膨大なデータから巨大なニューラルネットワークを学習するため,たとえ正しい推定ができたとしてもその理由や根拠を示すことが難しい。そのため,金融や医療などの信頼性が求められるビジネス分野へのAI適用を妨げる原因となっている。筆者らはこの問題を解決するため,独自の深層学習を発展させた機械学習技術であるDeep Tensorと,ナレッジグラフと呼ばれる過去の文献やデータベースから構築したグラフ型の知識ベースを融合し,Deep Tensorの推定結果に対する理由や根拠を論理的に説明するAI技術を開発した。
本稿では,この説明可能なAIを実現する技術をネットワーク侵入検知とゲノム医療に適用した事例に基づいて紹介する。
トポロジカルデータアナリシスと時系列データ解析への応用 (950 KB) 関連情報
梅田 裕平, 金児 純司, 菊地 英幸, p.97-103
近年,AI(人工知能)技術の実用化が急速に進んでおり,その牽引役であるDeep Learningをはじめとする機械学習技術に注目が集まっている。しかし,機械学習技術のベースとなっている統計手法を用いたデータ解析によって,データが本来持つ情報が失われることも知られるようになってきた。こうした情報を十分に活用するために,筆者らは「データの形」が持つ情報に着目し,それらの情報を解析するトポロジカルデータアナリシス(TDA)技術を基にした機械学習技術を開発した。
本稿では,新しいデータ解析技術であるTDAと,その応用技術であるTDAを用いた時系列データ解析技術のうち,時系列Deep Learning技術,時系列異常検知技術,およびその適用事例として橋梁(きょうりょう)劣化解析について述べる。
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