三菱地所株式会社様

ブロックチェーン技術を適用して企業間のデータ利活用を支援
コンソーシアムを立ち上げて新たな発見につなげる

三菱地所は、東京・丸の内エリア(大手町・丸の内・有楽町)を対象とした実証実験、「大丸有データ活用プロジェクト」を2018年5月に開始し、富士通のブロックチェーン技術を活用したデータ流通・利活用サービス基盤である「Virtuora DX」を採用。データをセキュアな環境で共有できる基盤を活用して、企業間でデータを掛け合わせることで様々な知見を得て、イノベーションを創出するまちづくりに取り組んでいる。

街の変化に応じた自己変革ができる企業であり続けるには、異業種の方々との協業を通してオープンイノベーションをさらに加速させ、新しいビジネスを創造していかなければなりません。ICTに強みを持つ富士通さんには、教えていただきたいことがまだたくさんあります。

三菱地所株式会社
街ブランド推進部
オープンイノベーション推進室長
佐野 洋志 様

背景

「大丸有エリア」をオープンイノベーションフィールドとするまちづくりを推進

三菱地所株式会社様(以下、三菱地所)は、魅力あふれるまちづくりを通じて社会に貢献することを目指しており、本店がある東京・丸の内エリアの再開発にも取り組んでいます。

「2002年の丸ビル建て替え以降、ビジネスだけの街ではなく、様々な方に訪れていただけるひらかれた街を目指して丸の内再構築を進めてきました」と街ブランド推進部のオープンイノベーション推進室長を務める佐野洋志様は振り返ります。事業に対する同社の考え方も「ショッピングや観光も含んだ総合的にライフスタイルを支える街のオペレーション」に変わってきたと説明します。

三菱地所は街に求められる機能が変化していることに先駆け、大手町・丸の内・有楽町(大丸有エリア)を対象にMarunouchi UrbanTech Voyager(丸の内 アーバンテック ボイジャー)と名付けた実証プロジェクトを2018年に立ち上げました。大丸有エリアをビジネス変革やイノベーションを生み出す街としていくために、各種の施設を整備して様々な人や業種の企業との交流を盛んにし、大丸有エリアのオープンイノベーションフィールド化に取り組んでいます。

大丸有エリアのオープンイノベーションフィールド化を進めるにあたって、先端テクノロジーは欠かせない要素でした。「商品やサービスには最新のICTを積極的に取り入れるようにしています」と佐野様は話します。検討に携わっているオープンイノベーション推進室の奥山博之様は、「Marunouchi UrbanTech Voyagerでは、まちづくりと親和性が高いAI、IoT、ロボティクスの3つを注力分野に設定して、様々な社会課題を解決するための実証実験をパートナーの方々と進めています」と語ります。

経緯

ブロックチェーン技術でデータの共有を容易にして思わぬつながりの発掘へ

2018年5月に、Marunouchi UrbanTech Voyagerの一環として大丸有データ活用プロジェクトが始動しました。このプロジェクトのねらいは、業種を超えた企業間のデータ活用によって新たなまちづくりのヒントを探ることです。三菱地所は大丸有エリアのビルの電力データや商業施設の売上データなどを提供し、ソフトバンク株式会社様は人の流れに関するデータを、東京大学の大澤研究室様はデータの活用に関する専門的な知見をそれぞれ提供し、富士通はデータをセキュアに共有できる環境を構築しました。マッチングができる企業コンソーシアムの形成と実データの共有と活用を目指して店舗・商業施設の活性化、観光の活性化、データの可視化の3つに焦点を定めて、2018年12月までに課題設定から検証までを実施して複数企業間のデータ活用の可能性を探っていきました。実証実験に使われたのは、プロジェクトメンバー各社が提供した過去の実データで、各社ともに個人情報を含むデータは匿名化して共有しました。

また、富士通はブロックチェーン技術を適用した「Virtuora DX」をデータ共有と活用のためのクラウドサービス基盤として提供しました。本基盤は、コンソーシアムに参加するメンバー同士のセキュアなデータ共有を可能とするだけでなく、東京大学の大澤研究室様が開発した、データの概要情報の共有から異分野データ活用を促進するデータジャケット(注1) と、データのつながりを可視化できるKeyGraph(注2) という仕組みを取り入れており、専門家でなくとも容易にデータ活用アイデアを発想することができます。このようなデータ共有・活用環境を提供することで、オープンイノベーションの促進とコンソーシアムの成長を支援しています。

  • (注1)
    データジャケットは、東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻大澤研究室が提唱,2013
  • (注2)
    KeyGraphは、東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻大澤教授(現)が提唱,1998

効果と今後の展望

企業、業種間の垣根を超えたデータの利活用で新たなビジネスの創出を目指す

3社と1大学から始まったこの大丸有データ活用プロジェクトは、最終的に幹事を含めて12組織まで規模が拡大しました。このコンソーシアムで得られたデータジャケットの情報は、参画した企業間で共有されています。

この実証実験を通して他企業とのデータ共有の難しさを感じたと奥山様は振り返ります。「企業間でデータを交換すると言うのは簡単ですが、実際には各社のデータの粒度や時系列データの取得間隔が違っていてそのままの状態では解析にかけることが困難でした。データを提供する人とデータを利用する人が直接話し合うことでデータの背景を理解して、うまく利活用できるようになると考えています。」

佐野様は、「街の変化に応じた自己変革ができる企業であり続けるには、異業種の方々との協業を通してオープンイノベーションをさらに加速させ、新しいビジネスを創造していかなければなりません。ICTに強みを持つ富士通さんには、教えていただきたいことがまだたくさんあります」と語ります。企業や業種の垣根を超えて、データを利活用し合うことで新たなサービスや事業の創出をこれからも目指していきます。

三菱地所株式会社

所在地東京都千代田区大手町1-1-1 大手町パークビル
設立1937年
従業員数806人、連結:8,856人 (2018年3月31日現在)
Websitehttp://www.mec.co.jp/Open a new window

[2019年掲載]

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