株式会社オークワ 様

客数予測にAIを活用し、人的予測と比べ精度を2倍向上
勘と経験からの脱却、廃棄ロスと機会ロスの削減に貢献

近畿、東海を中心に地域の暮らしを支えるオークワ。同社は廃棄ロスや機会ロスの削減を目指し、発注のベースとなる客数予測値の改善に着手した。従来、人の勘と経験に頼っていた客数予測にAI(人工知能)を活用することで予測精度の向上と工数の削減が狙いだ。そこで、富士通のODMA需要予測SaaSを導入。AIが環境変化に合わせて需要予測モデルを最適化する富士通の独自技術「動的アンサンブル予測」により1カ月間の客数予測、自動チューニングによる高精度の維持を実現した。全160店舗で自動発注システムと連携し、廃棄ロスや機会ロスの削減、シフトの最適化に貢献していく。

課題
効果
課題客数予測の誤差率を低減することで、自動発注システムの精度を向上したい
効果勘と経験に頼ることなくAIにより客数予測の高精度化・自動化を実現、廃棄ロスや機会ロスの削減に貢献
課題シフト管理への活用を視野に、1カ月間の客数予測を実現したい
効果富士通の独自技術「動的アンサンブル予測」により全160店舗の特性に応じた1カ月間の客数予測を実現
課題高精度な客数予測を維持しながらも、運用負荷を軽減したい
効果自動チューニングにより人手を介したパラメータ調整などのチューニングが必要なく、運用担当者の負荷を軽減

背景

利用が進む自動発注システムの精度向上が課題に

1959年、「商業を通じて地域社会に貢献する」を信条に、和歌山県下初のスーパーマーケットとして産声を上げたオークワ。現在、近畿、東海を中心に地域や顧客層の特性に合わせ、スーパーマーケット、ショッピングセンター、高品質スーパーマーケット、ディスカウントショップなど160店舗を展開し地域の暮らしを支えている。地域密着型のオンリーワン企業として、安全・安心で優れた商品をより安く提供するために、オリジナルブランド商品の開発にも注力し、弁当や惣菜を中心に300アイテム以上を展開している。またポイントが貯まる電子マネー機能付オーカード、ネットスーパーなど、多様化する消費者ニーズへの対応にも積極的だ。

時代の変化に応じて進化を続ける一方で、創業60周年を迎えた同社において「お客様の利益や利便性を求め、お客様の幸せを追求する」という企業姿勢は、今も変わることはない。同社はお客様第一の観点から、従業員がお客様サービスに集中できる時間を創出するべく業務改革と働き方改革を推進している。その一環として導入したのが、自動発注システムだ。「今やグロサリー及び日用品、家庭雑貨品などの発注業務の90%で自動発注システムを利用しており、業務において年間数千時間の削減につながっています。次のテーマは、自動発注システムの精度向上による廃棄ロスや機会ロスの削減です」とオークワ 情報管理部 部長 大西剛氏は話す。

同社における自動発注システムの精度向上で課題となったのが、自動発注のベースとなる客数予測の誤差率低減だった。

株式会社オークワ
情報管理部
部長
大西 剛 氏
株式会社オークワ
情報管理部 システム開発課
課長
川村 崇文 氏
株式会社オークワ
情報管理部 データ分析課
課長
貴志 祥江 氏

ポイント

勘と経験に依存していた客数予測にAIを活用

従来、同社における客数予測は、店長が策定した日割予算額を昨年同曜日の客単価で割ることで算出していた。日割予算額は店長独自の経験と勘にゆだねられているため、それをもとに算出する客数値の精度も結果的に人に依存することになっていた。同社 情報管理部 データ分析課 課長 貴志祥江氏は既存の客数予測の課題についてこう話す。「これまでの実績を参考にしながら、店長が月別予算額の枠の中で日割予算額を出しています。店長個人の能力はもとより、ベテランと新人の店長ではノウハウの差が精度の差となって表れてきます。ベテランの経験に基づく知見は可視化が難しく、ノウハウの共有もできていないのが現状です。また予算はどうしても高めに設定するため、そこから割り出す客数も多くなる傾向にありました」

日割予算額はキャンペーンなどへの対応で変更される。そのたびに自動発注システムに入力した客数値を設定しなおさなければならなかったことも課題だった。「キャンペーンの日は予算を高くし、その分、例えばその翌日の予算を低く抑えるなどの調整が発生します。日割予算額を変更した場合、再度客数を割り出し自動発注システムに反映させることになっていました。しかし、店長は日々の業務に追われており、ほとんどが変更されることなく、1カ月に一度入力した客数予測値のままシステムは動いていました」(大西氏)

客数予測の精度向上と店長の負担軽減を実現するため、同社はAI活用の検討に入った。「様々なITベンダーやコンサルティング会社から話を聞きました。AI活用の用途では、画像解析や自然言語解析が多く、需要予測を行っていたのは数社でした。シフト管理にも活かしたかったため、1カ月間の客数予測が必要だったのですが、2日前、3日前が限界というお話ばかりで、唯一、富士通からのみ『できます』との回答をいただけました」(貴志氏)

「当社には、富士通の様々なシステムが導入されており、富士通の手厚いサポートや『やりきる力』をもともと高く評価していました」と大西氏は話し、こう続ける。「富士通のODMA需要予測SaaSはクラウドサービスで提供されるため、まずPoC(Proof of Concept、概念実証)で検証してみて、次にスモールスタートで成果の確認を行い、問題なければ本格的に展開、というような段階的に効果を確認しながら導入できたのでチャレンジしやすかったですね」

導入のプロセス(PoC/PoBの成果)

「動的アンサンブル予測」で人的予測の2倍の精度に向上

同社は、2017年9月から同年11月にかけて151店舗を対象にODMA需要予測SaaSを使って客数を予測するPoCを実施した。業態が異なる中で、各店舗の客数予測を可能にしたのが、富士通の独自技術「動的アンサンブル予測」である。ODMA需要予測SaaSでは特徴の異なる複数の需要予測モデルを組み合わせて利用する。同技術は、多様な店舗の特性に合わせて、AIが動的に最適な予測モデルを合成することで高度な予測を実現する。「1つの需要予測モデルを使って客数を予測する場合、高級志向や価格重視など店舗の特性によって精度にバラツキが生じます。複数モデルを組み合わせることで店舗に合った客数予測を実現していくという富士通の説明は納得できました。PoCでその真価を目の当たりにしました」と大西氏は驚きを隠さない。

PoCでは、ODMA需要予測SaaSでAIが前日までのデータを機械学習して予測した翌日の客数と実績を比較した。PoCの結果、人的予測の平均誤差率9.3%に対し、ODMA需要予測SaaSの平均誤差率4.7%と約2倍の精度向上が図れた。これはオークワの業務ノウハウと富士通のAI技術の融合によって実現されたものだ。「ODMA予測SaaSの平均誤差率は当初6.98%でした。客数に影響する気象やキャンペーンなどを数値化し活用することで精度を高めていきました。例えば、価格重視の店舗において“8の付く日のハッピーキャンペーン”を指数化し重み付けしたことで劇的に精度が向上しました。PoCを進める中で、『このイベントや催事を指数化しよう』、『ここの指数の重み付けを変えよう』など富士通とキャッチボールしながら、平均誤差率を徐々に下げていき、最終的に4.7%まで低減させました」

PoCの成果を受け、2018年2月に、実運用での検証の実施に向けた経営層への報告会を富士通同席のもと開催した。大西氏は「AIで夢物語を描くのではなく、AIを活用して今直面している課題を解決していくと説明しました。富士通にはPoCの結果であるデータに基づく地に足の着いた提案をしていただきました」と振り返る。

2018年4月から同年6月にかけて19店舗を対象にODMA需要予測SaaS と自動発注システムを連携したPoB(Proof of Business、ビジネス実証)を実施。その結果について貴志氏は「自動発注システムと連携するため、2日前の客数予測と実績を比較しました。ODMA需要予測SaaSの平均誤差率は19店舗全体で5.7%、人的予測のトップが平均誤差率5%台だったことから合格点としました。PoBにおいて在庫の最適化や廃棄ロスの削減に数字として効果が表れたのは、客数精度の向上によるところが大きいと考えています」と説明する。

■ 「動的アンサンブル予測」の概念

■ ODMA需要予測SaaSによる客数予測のPoCの概要

効果と今後の展望

自動チューニングにより高精度予測を維持、廃棄ロス削減に貢献

同社においてODMA需要予測SaaSによる客数予測サイクルは、例えば予測日が2019年2月13日の場合、同年2月13日から同年4月20日の期間を算出予測し、予測日が翌日の同年2月14日では同年2月14日から同年4月21日の期間を算出予測するというように、1日ごとに更新していく。ODMA需要予測SaaSは、AIを活用した「動的アンサンブル予測」により常に高い予測精度を維持できるという点が大きな強みだ。同社 情報管理部 システム開発課 課長 川村崇文氏は精度の高さとともに運用しやすさを評価する。「自動発注システムには、ODMA需要予測SaaSによる2日前の算出予測値を連携しています。客数予測の高精度を維持しながら、人手を介したモデル変更やパラメータ調整などのチューニングが必要なく、自動チューニングにより運用担当者の負荷を軽減できます」

予測精度の観点ではキャンペーンなどのデータ活用がポイントになったと川村氏は話す。「関係部署からキャンペーン企画について内容や期間、店舗名、実績などをExcelデータで提出してもらって、それをODMA需要予測SaaSのAIが機械学習できるCSVフォーマットに変換する仕組みを富士通の支援のもとで構築しました。店長の手を煩わすことなく、キャンペーン対応を織り込んだ客数予測を可能にしています」(川村氏)

2019年3月12日、全160店舗を対象にODMA需要予測SaaSと自動発注システムの連携を開始した。導入効果として、客数精度の向上により廃棄ロスや機会ロスの削減につながることへの期待は大きい。「当社は2019年の目標として廃棄や値引きなどロス0.3%削減、数億円のコスト削減を掲げています。2019年2月3日節分の日に、惣菜部門から恵方巻の生産個数の適正化を図るため、ODMA需要予測SaaSによる客数予測値を提示してほしいという依頼がありました。その客数予測値をもとに生産した結果、当社ではもともと恵方巻の廃棄ロスが少ない中、更なる削減ができました。今後、客数予測の精度向上により自動発注システムの精度を高めることで、ロス削減の目標達成に貢献していきます」と川村氏は力強く語る。

ODMA需要予測SaaSにおける指数化によりベテラン店長のノウハウを可視化できると大西氏は指摘する。「店舗や地域の特性、地域催事、キャンペーンなど、ベテラン店長の経験や勘に基づく“気づき”が、指数化することでデータとして見えてきます。例えば、8の付く日キャンペーンを指数化する前と後では、ある店舗の客数予測値に1,000人の差がでたことで、店舗におけるキャンペーン効果を数字で把握することができました。晴れの日にお客様が多く来てくれる店、ダイレクトメールの効果があった店と効果がでなかった店などもわかってきます。指数化や重み付けにより何がどの店でどう効いたのかに関して、富士通から情報を提供していただいています」

今後の展望について大西氏はこう語る。「ODMA需要予測SaaSによる客数予測値を活用したシフト管理や詳細なダイレクトメール効果分析はすぐに始めたいですし、客数予測値をベースに日割予算作成の自動化も検討しています。また製販一体型のオリジナルブランドに関してODMA需要予測SaaSの高精度な需要予測を利用し、発注、生産、在庫などSCM(Supply Chain Management)の最適化を図っていきたいと考えています。富士通には本格的に運用していく中で、安定稼働や精度のさらなる向上のためのサポートとともに先進的な提案を期待しています」

ODMA需要予測SaaSは、AIを活用しお客様とCo-creation(共創)することで企業それぞれに最適な需要予測に進化していく。実験ではなく実践で真価を発揮するソリューションだ。

株式会社オークワ 様

本社 和歌山市中島185番地の3
代表者 代表取締役会長 兼CEO 大桑 堉嗣
代表取締役社長 兼COO 神吉 康成
創業 昭和13年5月(創立:昭和34年2月27日、設立 昭和44年2月21日)
資本金 141億1,749万円
従業員数 15,300名(準社員を含む)
ホームページ https://www.okuwa.net/新しいウィンドウで表示
事業内容 システムによるチェーンストア経営。食料品、酒類、米類、家庭用品、住居用品、室内装飾品、DIY、レジャー用品、スポーツ用品、家庭電化製品、化粧品、医薬品、衣料品の販売

[2019年5月掲載]

本事例に関するお問い合わせ

ページの先頭へ