長野県信用組合 様

金融機関の窓口機能をスマホアプリで実現
セキュリティと操作性を両立し非対面の顧客接点を強化

長野県を営業エリアとする長野県信用組合は、都市部への人口流出に起因する若年層の減少などへの対応を重要な経営課題ととらえ、新たな非対面の顧客接点について検討を始めた。その結果、スマートフォンでほぼすべての窓口機能を提供する「スマホ窓口」を構想。「FUJITSU 金融ソリューション Finplex 金融フロントサービス基盤 FrontSHIP(以下、FrontSHIP)」を活用することで、迅速に専用アプリケーションとその運用基盤を構築した。新たなサービスや機能を容易に追加できるため、今後の事業を支えるサービス基盤として様々な活用が進んでいる。

課題
効果
課題若年層のお客様流出を食い止めたい
効果県外でも利用できる非対面取引で顧客接点を拡大
課題スマートフォンで利用できる金融サービスを充実させたい
効果金融に特化したクラウドサービス利用で新サービス展開が容易に
課題短期間でサービス提供を実現したい
効果クラウドサービス利用とアジャイル開発により短期間で構築

背景

非対面でも取引が継続できるしくみを目指し
Fintech研究会を発足

長野県信用組合は、長野県全域を営業エリアに持つ、全国でも有数の信用組合である。「地域の魅力をプロデュースし、地域社会の発展に尽くします」をスローガンに、地域で活躍する企業や個人が、さらに個々の持ち味を発揮できるよう、金融面からサポートしている。

同組合が拠点とする長野県は、他の地方と同様人口減少という課題に直面している。長野県信用組合 理事長 黒岩清氏は、「特に大学進学を機に他都市へ引っ越した若者が、Uターンすることなく流出してしまうケースが多く、当組合にとっても取引先の減少につながっていました。そこで、引っ越しても継続して取引を続けてもらえる非対面のシステムを構築できないかと、2016年2月Fintech研究会を立ち上げました」と語っている。

Fintech研究会は、主に若者に利便性を感じてもらえる非対面のサービスを検討するため、各部門の若手中堅職員を集めた。そこに基幹系システムを始めとするシステム構築や運用をサポートし、同組合の経営課題を共有していた富士通も参加。最新技術動向や他社事例の紹介、技術的なアドバイスなどを行った。同研究会は、月1回のペースで計8回実施。メンバーによる自発的な勉強会を開催したり、同業他社の視察を行うなど精力的に調査・研究を進め、徐々に目指すシステムの姿を明らかにしていった。

長野県信用組合
理事長
黒岩 清 氏

経緯

「金融フロントサービス基盤 FrontSHIP」の
迅速かつ柔軟な拡張性を評価

当初は、インターネット支店をイメージしていた同組合だが、さまざまな他社の取り組みや技術動向などを検討するうち、若年層との接点を強化するにはスマートフォンの活用が不可欠と考えるようになった。そこで、預金通帳の閲覧や、店舗やローンなどの情報の取得、口座開設やカードローンの申し込み、さらにはホームページへのアクセスなどをすべてスマートフォンで行えるアプリケーション「スマホ窓口」を構想。実現方法を模索していたところに富士通から「スマホ窓口」の構想にマッチした具体的な提案があり導入を決定した。富士通の提案は、「金融フロントサービス基盤 FrontSHIP」を活用したシステムである。FrontSHIPは、スマートフォンを金融サービスのチャネルとするための「モバイルポータル」機能や、勘定系システムや最新のFintechサービス、他システムなど多様なシステムと連携可能な各種APIなどを備えた金融サービス基盤をクラウドで提供するサービスである。各機能を個別に一から開発する必要がないため、迅速な構築が可能。もちろん、金融機関向けに用意されたプラットフォームなので、セキュリティや堅牢性には最大限の配慮がされている。

その選定理由について黒岩氏は、「FrontSHIPを利用することで、新しいサービスを柔軟かつスピーディーに提供できると判断しました。クラウドサービスなので、拡張性や他システムとの連携にも優位性を感じています」と評価している。

ポイント

容易に新サービスの機能追加が可能な
ポータルを短期間で構築

システム開発は、2017年1月にスタート。同年8月28日にはアプリケーションの提供を開始した。今回のシステムは、フロントエンドのアプリケーション開発がメインとなる。開発するアプリケーション「スマホ窓口」はお客様接点の顔となるポータルであり、ユーザー目線での操作性や使いやすさが求められた。金融機関の基幹系システムとの連携も必要となる。そこで富士通はアジャイル型で開発をすすめ、要件を柔軟に取り込みつつも短期間での構築を行なった。「スマートフォンでサービスを提供するために必要な機能や他システムとの連携に必要なAPIはFrontSHIPに揃っていたため短期間での構築が実現できました。迅速なサービス開始は曲げられないところだったので、期日通りに完成してもらい感謝しています」(黒岩氏)。

スマホ窓口は、同組合の口座を持っていなくても誰でもダウンロード可能。預金があればスマホ通帳から過去の取引履歴をすべて閲覧できる。黒岩氏は、「ネットバンキングの利用には契約が必要で、ログインが大変とか、取引履歴が過去数カ月しか見られない、といった問題点があります。そこで、スマホ窓口ではセキュリティは担保しながらログインを容易にし、取引履歴については期限なく、全履歴を閲覧できるようにしました」と語っている。グラフ機能も搭載しており、出入金の時系列による推移などをグラフ表示可能。通帳だけではわかりにくいお金の流れを直感的に把握できるようになった。

サービスを提供するためには、誰でもアプリを気軽にダウンロードできるよう、App StoreとGoogle Playに登録する必要がある。その手続きは思いのほか手間がかかったという。アプリケーションそのものをバージョンアップする方法では、バージョンアップごとに登録申請が必要で、気軽に機能追加することが難しくなる。その点、FrontSHIPのモバイルポータル機能は、アプリケーションとコンテンツが分かれているため、一度登録すればアプリケーションはそのままにコンテンツだけを更新すれば機能追加が可能で、サービスの拡張が極めて容易だ。

「スマホ窓口」を支えるオープンAPI基盤「FrontSHIP」 モバイルポータル機能とAPI基盤により、アプリの更新なく新たなサービスを柔軟に追加できる。

効果と今後の展望

スマホ窓口をプラットフォームに
新サービスを続々と計画中

長野県信用組合のスマホ窓口は、サービス開始から順調にダウンロード数が増えている。スマホ窓口経由の新規口座申込数は、サービス開始から約2カ月の10月末現在で59件と、新規獲得にもかなり貢献をしている。

利用者からの評判もよく、「画期的で使いやすい」、「銀行の窓口でできることとほぼ同じメニューがそろっているので、これがあればほとんどのことができる」、「グラフ機能により、月ごとの入出金がわかりやすい」といった声が寄せられている。

スマホ窓口は、プッシュ通知機能も備えており、登録した利用者に対してキャンペーンなどのお知らせをタイムリーに通知できるようになった。「プッシュ通知の活用も、非対面での顧客接点のさらなる強化につながると期待しています」と黒岩氏。

また、今回のプロジェクトは同組合にとって初めてともいえる部門横断のプロジェクトであり、その点でも画期的であった。若者がメインターゲットとなるサービスだったこともあり、若手が自発的に勉強会を実施するなど職員の意識改革にもつながっている。

今回長野県信用組合は、スマホ窓口という非対面の顧客接点となるツールを獲得した。黒岩氏は、「スマホ窓口は、作って終わりではなく、新たなサービスをどんどん付加できる今までにない仕組みです。現在新しいサービスも計画しており、これからもお客様に喜んでいただけるサービスを追加していきます」と締めくくった。

長野県信用組合の「スマホ窓口」アプリ 通帳記入をはじめ、新規口座の開設、ローンのシミュレーション機能など、店舗に来店しなくても様々なサービスを手軽に利用できる。

長野県信用組合 様

本社所在地 長野市新田町1103-1
設立 1954年(昭和29年)11月20日
ホームページ https://www.naganokenshin.jp/新しいウィンドウで表示
事業概要 設立以来、地域を大切にする金融機関として、社会的責任や公共的使命を果たすことにより地域住民・企業の信頼を育んできた。預金、融資、為替業務を中心に、多様化・複雑化する金融ニーズに対応するさまざまなサービスを展開している。

[2018年2月掲載]

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