エースコックベトナム社 様
現地一任の物流の運用・管理を刷新
ベトナムでの物流を“見える化”し、現地ビシネスを改革
ベトナム国内の即席麺シェアNo.1の実績を持つエースコックベトナム社は、“物流改革による経営改革”を掲げ、「FUJITSU ロジスティクソリューション Logifit(ロジフィット)」シリーズをベースにした共同物流情報システムを開発し、物流の“見える化”を実現。現地企業に一任するしかなかった物流管理を自社で行うことで、適切な配車計画にもとづく効率的な運送と、納品時間の正確性や納品ミスの低減など物流品質の向上を実現した。
- 課題ベトナムの商習慣・交通事情により、物流の工程が不透明
- 効果物流工程を見える化
- 課題物流管理をしたいがノウハウがない
- 効果各車両の位置や運行情報を即時把握し、最適な運行指示を実現
- 課題複数メーカーの商品を配送できるしくみがほしい
- 効果日系企業で共同利用できるシステムを構築
導入の背景
ベトナムの複雑な交通事情
物流品質の向上が経営の鍵を握る
大阪に本社を置き即席麺の製造販売を行なうエースコック株式会社がベトナムにエースコックベトナム社(Acecook Vietnam JSC、以降ACV)を設立して、即席麺の生産・販売を開始したのは1995 年のこと。以降、「ベトナムの食品全体のレベルアップ」を目指して数々の商品を発売し、2000 年に発売開始した『ハオハオ』の大ヒットによって、その人気はベトナムの隅々にまで広がる。
「まさに出せば売れるといった状態で、とにかく、不足なく全国津々浦々にまで供給することが第一優先でした」と語るのは、ACV 社長 梶原 潤一 氏。
「経営改革を行うにあたって最も大事にしたのは、“品質”です。設立当初に目指していた、日本品質でベトナムの食品全体のレベルアップに貢献する事に取り組み、現在は、現地でも品質を確保した生産ができるようになりました。そこで次に目を向けたのが物流でした。会社経営を支えている大事な要素は、人、物、金、情報などがありますが、物流はその3つ全てが大きく関わっている。
だから物流改革を通じて経営改革を行なうと決めたんです」(梶原氏)
この“物流”に関しては、ベトナムの複雑な交通事情などの影響から、これまで日系企業は物流の運営・管理を現地企業に一任するしかなかった。
複雑な交通事情とは例えば、ホーチミンなどの都市部の場合、日中だけ2トン以上のトラックが通行禁止になるといった通行規制が存在することだ。大 型トラックが規制されれば軽トラックによる小分けでの配送を強いられ、さらにドライバーも多く雇わなければならないなど、配車計画にも大きな影響を及ぼす。他にも車両ごとに通行可能な車線が決まっているなどといった独特なルールがあり、最適な配車計画を立てるには、地理情報を含めたこうした交通事情も熟知していなければならない。
南北に細長い地形のベトナム。配送には長距離配送、短距離配送を合わせて1日平均で約500 台の車が必要だという。「原料の調達から製造工程への 配送、さらに完成した商品を各小売店へ届けるまで、すべての工程に物流が関わっています。まさに物流の効率化はサプライチェーン全体に関わる問題といえます。しかし現地の物流会社は配車計画を担当者の経験と勘に頼っている状況でした」(梶原氏)
実際、現地の物流会社は配車計画や物流に関するデータ管理など、ほぼすべてを手作業で行っており、日系企業は長らく配送実績の結果のみを受け取 るだけだった。
「ベトナムの物流事情を知った時は本当に驚きましたね」と話すのはACV 経営企画部部長 大槻 肇 氏。「商品はそれぞれの小売店まで確実に届いているのに誰がどのようなルートで運んだのかがまったく不透明なんです。まず物流の“見える化”が急務であることは明らかでした」(大槻氏)

General Director
梶原 潤一 氏

Director
大槻 肇 氏
導入の経緯
大切なのは「見える化」の先
改善に向けた取り組みが始まる
ただし、単に“見える化”が達成できただけでは、根本的な改善には至らない。効率的な運送とともに、納品時間の順守、納品ミスの減少といった物流品質全体を向上させるためにも「見える化した上で、最適な配車計画を立て、物流会社のドライバーをコントロールするといった、実際の運営面の課題をクリアしなければなりませんでした。もちろんこうした経験やノウハウを得るにはそれなりの時間がかかると考えていたので、長期化も覚悟していました」と大槻氏は当時を回想する。
転機が訪れたのは3 年ほど前。富士通の物流情報システムと出会いだ。
当時、富士通は物流情報システムのASEAN への展開に向けて、各国の地理情報システム(GIS: Geographic Information System)の整備状況を調査している最中だった。「私達の抱えている課題について相談したところ、“正確な地理情報を活用した配車計画の自動立案システムを開発しましょう”と提案いただいて、そんな夢のようなことができるのかと最初は半信半疑でした」(大槻氏)
システム開発に向けて、富士通はベトナムの地理情報の整備を進め、ACVは新たにできるシステムをベースにした運営の準備を進める。
「今回のシステムの肝はやはり、地図情報をどれくらい正確に把握できるかだと思います。やはり最適なルートを確定するにしても、正確な地図情報を把握していなければ不可能ですから」と大槻氏。こうして環境が整い、2016 年6 月から2 ヶ月間、ACV 物流データを使った試行運用が行われた。
導入のポイント
最適なルートを即座に判断
各車両へのリアルタイムな運送指示も可能
富士通はこれまで、物流の現場支援を中心としたシステムを約550 社に導入してきた。今回はこのノウハウを活かし、「FUJITSU ロジスティクスソリューション Logifit(ロジフィット)」シリーズをベースにシステムを開発。
完成した「共同物流情報システム」は出荷指示内容や道路情報などのデータから、積載条件や納品条件を順守した最適なルートを判断。車両の積載率や実車率(全走行距離における、実際に荷物を積んで走行した距離の割合)を向上させる最適な配車計画を自動立案する。
さらに各車のスマートフォンから位置情報や運送情報を入手し、リアルタイムに進捗情報を把握することができる。これによって各ドライバーへの運送指示もスムーズで、突然のトラブルにも柔軟に対応できる。
「今回のシステムでは、一瞬にして最適なルートを見つけて配車計画を自動立案してくれます。積載率や実車率、運賃などの条件によって配車計画をシミュレーションすることも可能です。」(大槻氏)
さらにユーザーインターフェースが直感的に扱えるようシンプルに設計されているのも特長のひとつだ。
「目で見て理解しやすいシステムなので、誰もが簡単に活用できます。また直感的に扱えるというのは、結果として言葉の壁もクリアにしてくれますから、海外では特に有効だと感じています」と大槻氏は語る。
効果と今後の展望
物流品質が大きく向上
今後はベトナム全体の物流改革も視野に
試験運用では、共同物流情報システムの効果的な配車計画を立案する能力とともに、納品時間の正確性や納品ミスの低減など物流品質の向上が実証され平均積載量を13 〜 18% 向上、物流コストを10 〜 20%削減の効果が出ている。
また、配送における法令順守の徹底化という効果もあった。これまでは自社で物流管理を行えなかったために、ぞれぞれのトラックがどれくらいの荷物を積んでいるのかが把握できていなかった。しかしシステムの導入によって効率的で無駄のない積載を可能にすると同時に、荷物の積載量制限の順守が徹底できるようになった。
「ベトナムでは今後、スーパーマーケットやコンビニといった小売市場が大きく成長していくと思われますが、そうした中で、ベトナムに進出している日系企業同士が質の高い物流を共同利用できる共同物流システムの果たす役割は、非常に大きなものです」と梶原氏は語る。
ベトナムの小売店に商品を納品する場合、日本のように一台の配送車に複数のメーカーの商品が積まれていることはまずなく、メーカーごとに車を用意して各小売店に納品するのが通例だ。「そのため、大きなスーパーの場合などは納品を待つトラックで大渋滞が起きています。非常に煩雑で、無駄が多いのは明らかです」(梶原氏)
今後、Logifit を活用した共同物流システムが広まり、現地企業による共同活用が行われれば、より一層のコスト削減が見込めるだろう。
「無駄を排除して効率的な物流を叶える、まさにベトナムの物流を根底から改革できるシステムです。今後はASEAN 全体にもこのシステムを浸透させていきたいですね」と最後に梶原氏は語る。
エースコック 株式会社 様
本社 | 大阪府吹田市 |
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設立 | 1954年1月20日 |
従業員数 | 5,937名 (国内 709 名 海外 5,228 名)(2015年12月末現在) |
資本金 | 19億2,435万5千円 |
ホームページ | http://www.acecook.co.jp/index.html![]() |
Acecook Vietnam Joint Stock Company 様
住所 | Lot II-3, Road No.11, Tan Binh IP, Tay Thanh Ward, Tan Phu District, HCM city, Vietnam |
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ホームページ | http://www.acecookvietnam.vn![]() |
概要 | 企業スローガンは、「Cook happiness おいしい しあわせ つくりたい」。 1954 年に「エースラーメン」を発売開始以来、即席麺、スナック麺のさまざまな ロングセラー商品を発売。1993 年にエースコックベトナム社、2015 年にエース コックミャンマー社を設立。 |
エースコック 株式会社 様[2017年5月掲載]
Acecook Vietnam Joint Stock Company 様[2017年6月掲載]
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