株式会社伊予銀行 様

セミセルフ型の「さっと窓口」を中心とした店舗改革により
10年先も顧客に選ばれ続ける銀行を目指す

長期にわたる低金利政策や人口減少による市場縮小、Fintechによる決済手段の多様化など、今銀行をとりまく経営環境は厳しさを増している。その中で生き残っていくためには、顧客に選ばれ続ける優れた商品やサービスを提供することと、業務効率化による生産性の向上が欠かせない。伊予銀行は、店舗の中心に富士通の次世代カウンタ「Quick Counter」を使った「さっと窓口」を設置し、業務を見直すことで、顧客サービス向上と効率化の両立を実現した。

課題
効果
課題現金を扱うことに対する行員の負担を軽減したい
効果「Quick Counter」の導入により現金ハンドリングレスを実現
課題お客さまの負担を軽減し、手続きの待ち時間も短縮したい
効果「さっと窓口」を中心に店舗業務を見直し顧客サービスを向上
課題店舗運営を効率化し、人員配置を戦略的に見直したい
効果事務簡素化やデジタル化により店舗運営を効率化・省力化

背景

10年先も選ばれ続けるため本気の全社BPRに取り組む

愛媛県を中心に国内148店舗を展開する伊予銀行は、10年先も選ばれ続ける銀行であるために、2015年新たに「事業戦略室」を設置。全社的な業務改革に取り組み始めた。伊予銀行 執行役員 総合企画部長 兼 関連事業室長 長田浩氏は、「これまでも事務のICT化は進めていました。しかし、今回はそれら部門ごとの施策ではなく、全社を横ぐしで通すBPR(Business Process Re-engineering)に本気で取り組みました」と説明する。

BPRの実現に向け、同行が課題として具体的に感じていたのが、まず行員が現金を扱うことへの負担感である。顧客と行員間の金額に関する認識の齟齬を減らすためには、行員が現金に触らないことが望ましい。また、窓口運営の課題としては、業務ごとに対応できる人が異なるうえ、それぞれ窓口担当、役職者、後方の事務担当と3人ずつが必要なため最低配置人数が多くなりがちで、業務量にもバラツキがあるという問題があった。

具体的に改善が必要な業務としては、事務量が多い税公金収納業務がターゲットのひとつとなった。従来顧客はATMで現金を引き出してから手書きで伝票に記入して窓口で納税する場合が多く、顧客の負担にもなっていると考えた。

株式会社伊予銀行
執行役員
総合企画部長 兼 関連事業室長
長田 浩 氏
株式会社伊予銀行
執行役員
事務統括部長
上甲 圭治郎 氏
株式会社伊予銀行
総合企画部
課長
石川 秀典 氏
株式会社伊予銀行
事務統括部
松本 一晃 氏

経緯

システム導入と業務プロセス改革を両輪で進める

方針は決まったものの、それをどのように実現するのかはなかなか決まらなかった。伊予銀行 執行役員 事務統括部長 上甲圭治郎氏は、当時について「多くの地方銀行が共同システムを利用するなか、当行は自前でシステムを運用しています。そのため、自分たちで何とかするしかなく、いくつかの先進行を見学させてもらいました。その中でも、行員がお客さまと一緒に処理を行うセミセルフ方式のATM端末を使ったある都市銀行の店舗運営は画期的で、これしかない、と思いました」と語る。

そこで、その銀行のシステム導入をサポートした富士通に相談。その後、他ベンダーとも比較検討を行った結果、ATMや営業店システム等の導入実績があり、同行の課題や目指す方向などを理解している点、システム導入だけではなく業務改革面と併せて相談や提案が期待できる点などを評価し、2016年7月、富士通の採用を決定した。

そこから具体的な要件定義、システム開発および業務プロセス設計などを進めていった。伊予銀行 総合企画部 課長 石川秀典氏は、「富士通からは、まず人の動きが重要で、専門特化の野球型から、多様なポジションに対応できるサッカー型へ移行すべきとアドバイスがありました。そこで、システムありきではなく、人と機械のベストミックスを探りました」と語る。また、伊予銀行 事務統括部 松本一晃氏は、「つい、あれもやりたい、これもやりたいとなってしまいがちですが、機械でできないところは人に任せるよう精査しました。富士通には、細かいところまで当方に寄り添ってサポートしてもらいました」と語る。

一方富士通は、伊予銀行の業務プロセス設計に合わせて、必要なシステム要件を整理し、次世代カウンタ「Quick Counter」の開発に取り組んだ。

ポイント

「さっと窓口」を中心とした新形態の店舗をオープン

同行は、2016年1月の2店からスタートし、従来型ATMを使って行員がお客さまと一緒にATMを操作する新たな窓口対応「さっと窓口」のトライアルを2018年3月まで11店で実施。そこで出て来た店舗からの要望を、新端末の機能や業務プロセスに反映させ、よりよい仕組みを目指した。「Quick Counter」が完成し、同行は新たな端末を「さっとATM」、これを使う窓口を「さっと窓口」と命名。2018年4月11日松山北支店に導入し、本格的な利用を開始した。同店は2店舗が統合してできた新店舗で、さっと窓口の利用を前提とした店舗レイアウトを備える。

店舗に入ると、明るく広いロビーが印象的だ。ロビー中央にはインフォメーションカウンターがあり、顧客が来店するとロビースタッフが声をかけ、来店目的に合わせた窓口へと促す。店内手前には従来型ATMが、その奥にさっと窓口が並び、入出金、税公金収納、振込、およびこれらの複合処理が行える。

同行は、松山北支店を皮切りに、月約3店舗のペースでさっと窓口の設置を進めている。2018年9月5日現在20店舗で稼働。遅くとも2021年3月末までに県内の全114店に設置を終えたい考えだ。

「さっと窓口」の様子。行員が顧客の話を聞きながら入力操作を行い、
画面で顧客に内容を確認してもらう。現金の投入や受け取りは顧客が直接行う。

「さっと窓口」は富士通の「Finplex Quick Counter for Banking」によって実現。

効果と今後の展望

現金ハンドリングレスと伝票レスにより事務効率向上を実現

松山北支店での本格利用開始から約半年が過ぎ、着実に処理効率は上がっている。上甲氏は、「従来型の窓口は、1日の処理件数が平均40件。それに対して、さっと窓口は120件。最大200件の処理も可能です。それだけ処理件数が増えていますが待ち時間は変化がないので、処理スピードはかなりアップしています」と説明する。

当初の大きな目的であった現金ハンドリングレスを実現し、行員の負担も軽減した。「現金をお客さましか触らないことで、お客さまと行員の認識の相違によるトラブルや、確認のため現金の出納記録を精査するようなケースがほとんどなくなりました」(石川氏)。また、現金を扱う従来型窓口の場合、責任の所在を明確にするため担当者を簡単には変えられない。その点さっと窓口は、パートタイマーでも対応可能で、担当者の柔軟な変更も可能になった。また、ペーパーレスにより環境面への貢献にもつながっている。

事務処理面では、基本的に現金はすべてATM内にあり、勘定系ホストで在高現金管理をしているため、閉店後店舗での集計や現金との突き合わせ作業などが一切なくなった。税公金収納についても、さっと窓口で簡単に支払いができ、キャッシュカードでの納税が可能になったことで、顧客は伝票の記入が不要で待ち時間が減り、行員も煩雑な事務処理から解放された。さらに、行員の負担を減らすため、ATM端末管理の子会社への移管も進め、行員が一切現金を触らない店舗も登場している。

これらの取り組みを受け、同行は2018年にスタートした2020年度までの中期経営計画で、目指す姿として「Digital-Human-Digital Bank」を打ち出している。これは、デジタル技術を徹底的に活用しながら、人にしかできない相談や提案フェーズでは人が活躍する姿を指し、顧客サービス向上と効率化の両立を目指すものだ。その実現に向け、新たな取り組みも進めている。長田氏は「現在諸手続きを行うためのタブレット端末の導入を推進中です。これにより、一部の業務では印鑑レスも実現できます。1日の来店客が150名規模の店舗を3名程度の行員で運営する機能を限定した店舗も計画中です」と話す。10年先も顧客に選ばれ続けるために、デジタルを最大限に活用した伊予銀行の改革は続く。

株式会社伊予銀行 様

本社所在地 愛媛県松山市南堀端町1番地
設立 1878年3月15日
ホームページ https://www.iyobank.co.jp/新しいウィンドウで表示
概要 愛媛県松山市に本店を置き、県内を中心に国内148店舗を擁する大手地方銀行。2018年創業140周年を迎えた。「潤いと活力ある地域の明日を創る」を存在意義とし、「Challenge & Smile」をスローガンに新たなサービスの提供や業務改革を進めている。全国の銀行で唯一、期末残高が預貸金とも20年連続で増加している。

[2018年11月掲載]

本事例に関するお問い合わせ

Webでのお問い合わせ
お電話でのお問い合わせ
ページの先頭へ