「伝える」技術
半導体レーザー

半導体レーザーってなんだろう
レーザーと聞くと、どんな物を想像しますか
半導体レーザーの用途
- (注)レーザーという名前は発明者の造語で、Light Amplification by Stimulated Emission of Radiationの頭文字をとってLASERといっています
どうして光るんだろう
原子のまわりを回っている電子はエネルギーを得ると外側の輪(高いエネルギーの輪)へ移動します。
電子が元の内側の輪(低いエネルギーの輪)へ戻る時、余ったエネルギーを放出する手段として光を発生させます。
原理
光が出るしくみ
なぜ、電圧をかけると光が出るのでしょうか
電圧をかけると、隣あったN型とP型の半導体のエネルギーの敷居が低くなり、電子が移動しやすい状態になります。すると、N型半導体の余っている電子がP型半導体の電子が足りない部分へ落ちやすくなります。落ちる時に光が出ます。
電子の移動のイメージ図
電源を入れると、電子が押し出されて前に進みます。電子が低いエネルギーへ飛び降りる位置は複数あるのですが、例えば、AとBとCの位置があるとします。励起光がいるCの位置から降りると、励起光が後を追って飛んでくれるので、電子はどんどんCの位置から飛び降りるようになります。つまり、電子は励起光の影響(誘導)によっていつも同じCの位置からジャンプするので、波長の揃った光(レーザー)がでます。
構造
レーザー部品の中身
光がでるレーザーは小さな部品です。その部品の光がでる部分を見ると、マイナス電極とプラス電極が見えます。
光通信用の半導体レーザー技術
光通信には主に2種類の半導体レーザーが使われています。DFBレーザーとFPレーザーです。
DFBレーザー
1波長の光しかでないレーザーです。通信時に光信号の波長がずれることがないので、高速・遠距離通信が可能です。(通信速度は1秒間に10Gb送れます。つまり、1秒間に100億回の光を点滅します。それは電話を1度に約15万本通話させることができる速さです。)
DFBレーザーの構造
どうしてDFBレーザーは1波長しかでてこないのでしょうか
N型半導体の山切りカットされていることがポイントなのです。
N型半導体の山切りカットされたそれぞれの山にレーザー光が当たり、跳ね返ります。
山の周期2倍の幅(0.4ミクロン)を持つ波長は、進んできた光の波と跳ね返った光の波が重なりあって、強め合います。
(山切りカットは専門用語では回折格子と呼ばれています。また0.4ミクロン幅にする理由は、1.3ミクロン帯の波長を使った光通信を例にしているからです。半導体レーザー部品内と空気中とでは、光の屈折率が違うため、波長が0.4ミクロンだったレーザー光は、空気中に出ると波長が1.3ミクロンになります。)
山の周期2倍の幅(0.4ミクロン)を持つ波長以外の光は進んできた光と、跳ね返った光の波のタイミングがずれるので、少しずつ打ち消し合います。
FPレーザー
複数の波長の光がでてくるレーザーです。そのため、通信速度がDFBレーザーよりも遅いですが、値段が安く作れます。(通信速度は1秒間に1Gb送れます。つまり、1秒間に10億回の光を点滅しています。それは電話を1度に約1万5千本通話させることができる速さです。)
FPレーザーの構造
光は反射鏡の間(結晶のへき開などで形成した反射面)に閉じこめられて往復します。(へき開とは、結晶の特定方向へ割れやすい箇所を表す結晶学用語です)
ワンポイント
波長が1つだけ出てくるDFBレーザーの通信速度は高速なのに、複数の波長が出てくるFPレーザーの通信速度はなぜ遅いのでしょうか。
DFBレーザー
1波長しかないため、0(ゼロ)と1(イチ)の信号を判断しやすいので、送信速度を速くできます。
FPレーザー
複数の波長を同時に出します。波長によって速度が違うため、送信速度を速くしすぎると信号が重なりあってしまう恐れがあるので、DFBレーザーよりも遅くなります。
山切りカットの作り方
半導体のあんなに細い山切りカットはどうやって作っているのかな。
新しい技術(量子ドットレーザー)
量子ドットレーザーってなに
- 「量子ドット」とは、ナノメートル(10億分の1メートル)サイズのとても小さい粒々のことです。
- 「量子ドット」をN型/P型半導体の間の層にはさみ、その粒から光がでます。それを「量子ドットレーザー」と呼んでいます。
- 特長は、温度による影響の少なさや低消費電力(原理的には従来の半導体レーザーの10分の1)です。
- 用途は短距離伝送、高速通信などです。
小さい粒々をどうやって作るの
GaAs(ガリウムひ素)の基板の上に、In(インジウム)原子とAs(ひ素)の原子をぶつけます。するとインジウムとひ素が混ざりあい、ガリウムひ素基板の上に薄い膜ができます。そして、ある程度厚みのある膜になると自然に丸くなります(ガリウムひ素とインジウムひ素では原子が並ぶ間隔が異なるため、安定に繋がった結晶になることができません。そのため接触面積がある程度大きくなるとインジウムひ素が自分達だけで集まろうとし、自然に丸くなります)。
このような層を5から10層積層します。
原理
「原理-なぜ、電圧をかけると光が出るのでしょうか」で紹介しました電子は1人でしたが、半導体レーザーとして使うには、もう少し強い光が必要なので、複数の電子が同時にジャンプして光を出しています。(ここでは例として3人の電子を書きました)
従来のレーザー
実際に電子達がジャンプするCの位置までに、A、Bの位置があり、そこに電子が詰まっていないとCにいかないので、余分な電流が必要です。A、Bの位置では光にならずに消えていく電子がいます。
量子ドットレーザー
電子がジャンプするCの位置しかないので、必要最小限の電流しか要りません。
どうしてCの位置しかないのでしょう。
量子ドットレーザーの場合、小さな粒の部分から光が出ます。電子君が飛び降りようとしている粒の世界は非常に小さいので、A、Bの位置がなくなってしまいます。(量子効果といいます)
富士通株式会社と三井物産株式会社で、量子ドットレーザー技術のベンチャー企業、「株式会社QDレーザ(キューディーレーザ、以下、QDL社)」を設立(2006年4月20日)し、高性能量子ドットレーザーと光デバイスの開発・製造・販売をおこなっております。
小話(レーザーの波長分布)
使用目的によって、使う波長が異なります。
クイズ
問題
2つの電球がつながった導線のスイッチをON(オン)にしたら、一体電球はどうなるでしょうか。
- 左側から点灯する。
- 右側から点灯する。
- 両方同時に点灯する。
答え
「3.同時に点灯する」を選んだあなた。
正解!!
です。クリスマスツリーの電球も同時に点灯するから一度試してみて下さい。