指紋認証「指紋センサー」

ご利用にあたっての注意
この講座の内容は、2005年当時の情報です。予告なしに更新、あるいは掲載を終了することがあります。あらかじめご了承ください。
最終更新日 2005年12月7日
指紋認証ってなんだろう
指紋認証とは、パスワードの代わりに、指紋を利用して本人確認をすることです。
パスワード入力の場合
パソコンにログインする為パスワード入力をする場合、時にパスワードを忘れてしまい、書き留めておいた手帳で確認するなんてことがあります。
ふん、いい気味よ
大体、パソコンにログインするときに、女性の名前や生年月日をパスワードにするなんて許せないわ。
しかも、パスワードを手帳に書いておくなんて、もってのほか。誰かに見られて、悪用されていたらどうするのかしら、他に人に見られては困る重要な情報だっていうのに、まったく。
それにしても、パスワード入力って、自分で設定したパスワードを覚えておかないといけないから面倒よね。しかも、複数の場合、それぞれに違うパスワードだと、何がどのパスワードだったかわからなくなってしまうし、かといって、すべて同じパスワードでは、覚えやすいけどセキュリティが不安。
ここはやっぱり指紋センサーが必要ね。
指紋センサーを使用した場合
指紋センサーを使えば、パスワードは不要だし、指紋は一人ひとり違うので、他人が代行できないからセキュリティ面でも優れているわ。
あとは、このワタシが指紋認証管理をするから、任せなさい
おぉ、センサーの上に指を置けば、手入力せずにログインできるんだ。これならパスワードを覚える必要もないし、手帳にも書きとめておかなくて済むから便利だね。
その他、扉の開閉にも利用できるのよ。IDカードを忘れたり、無くしたり、壊したりなんて心配からも開放されるわ。
これらのように、指紋認証って言うのは、指紋を利用して本人確認する技術なのよ。どう、便利でしょ。
指紋認証の原理
指紋認証の手順
1. センサーに指を置きます。
2. 指紋を読み取ります。
50ミクロン間隔で指の指紋の凹凸を検出して電気信号に変換します。
3. 指紋を照合します。
登録してある情報と一致するか判定します。
指紋読取(よみとり)の原理 -半導体式-
指紋センサーの構造
センサーの内部を見てみると・・・
表面の硬い保護膜の下に、縦300画素、横300画素、計9万個の電極があり、表面に近づくものに応じて電荷がたまります。
指紋の読み取り方法
指をセンサーの上に置いたときの電極の電荷の変化を見ます。(拡大図参照)
電極に電荷がたまる割合は、指紋の凹凸(おうとつ)によって異なります。この電荷の量を変換して画像にします。
電極と皮膚の距離が遠いと電荷は少なく、近いと電荷は多くなります。
ポイント
実は、指紋を読み取っている過程で個人によって微調整しています。
- 汗ばんでいる人の指は電荷がたまりやすいので、読取時間を短くします。
- 指が乾燥していたら凹凸(おうとつ)がわかりにくいので、読取時間を少し長くします。
電荷の量を数値(ボルト)に変換し、さらに画像(デジタル)に変換します。








指紋照合の原理
特徴点の抽出
特徴点の種類
特徴点とは、指紋の模様の特徴を表す場所で、主に4種類あります。個人によって位置や向きが異なるので、個人を識別する判断材料になります。
- 中心点・・・指紋模様の中心
- 分岐点・・・指紋の凸部模様の枝分かれ
- 端点・・・指紋の凸部模様の行き止まり
- 三角州・・・三方向からの集まり
読み取った指紋がぞうから特徴点を抽出し、データ化します。登録する時・照合する時ともに、抽出方法は、ほぼ同じです。
これらを、全部で20~40ヶ所程度抜き出します。(中心点は1つだけ)
本人判定
登録しておいた指紋データと照合する指紋データ、それぞれ特徴点のデータを比較します。
- 特徴点の種類
- 特徴点の向き
- 中心点からの座標
- 識別度を向上させる工夫(秘密です)etc
同じ指紋であると判断すれば、本人と判定できます。判定レベルを厳しく設定することにより、他人と違う率を100万分の1以下に抑えることができます。
特長
指紋認証は、本人識別能力が高いのが特徴です。
- 本人受理率99%以上、他人受理率0.0002%以下の高い照合性能
- 平均約300バイトという少ない指紋特徴データ
- 平均照合時間0.3秒
応用
指紋のような生体情報を使った本人認証技術(バイオメトリック認証技術)は、入退出管理のみならず、IT化の急増に伴い、ネットワーク上の本人認証・パスワード代りとして活躍しています。皆さんが使っているパスワードの数を数えてみてください。幾つありますか、忘れてしまったものはありませんか。覚えきれずにメモ書きしてパソコンや財布の中に入れていませんか。
指紋などの生体情報を使った本人認証技術は、皆さんを面倒なパスワードの管理から開放してくれます。システム管理者も、利用者が安易なパスワード(名前や電話番号)を設定することに頭を悩ませなくてすみます。
- ノートパソコンのアクセス管理
- 電子決裁・電子商取引の本人認証
- ネットワーク/データベースにアクセスするときの本人認証
- クレジットカードの本人認証(カードの暗証番号)
- 暗号化用の鍵のアクセス管理
など、様々なシーンでの幅広い活躍が期待できます。
小話1
一卵性双生児も指紋は違います
指紋についてよく聞かれる質問に、「双子の指紋は同じですか」というものがあります。その答えは「一卵性双生児でも違います」です。(ただし、渦の形(紋様)は似ています)。指紋を構成している山線(隆線といいます)は、汗の穴(汗腺)の出口が開いている部分が互いに連続して隆起するために出来ます。そして、その汗腺の相互の位置関係や数は、一生変わりません。やけどや怪我をした場合でも皮下組織まで破壊されていなければ、指紋は元通りに再生します。一卵性双生児でも違うということは、遺伝子も指紋の形状を完全には支配していないようです。たとえ、クローン人間が、本人になりすまそうとしても、指紋で別人と判断できます。
指紋の歴史
指紋を有力な本人確認の証拠として使う習わしは、古くから、中国・エジプト・トルコ・インドでありました。これが科学的に研究されたのは19世紀後半以降です。1858年にインドのベンガル地方の民政事務担当だったイギリスのハーシェルは、恩給支払いのときに、受給者の指紋で個人識別をしていました。その後、彼はその結果を、1880年11月22日に科学雑誌「Nature」に投稿しました。また、これよりわずかに先んじて、同年10月28日にスコットランドの医師フォールスが同じ雑誌に指紋のことを投稿しています。フォールズは日本の病院で働いているときに、日本での拇印(等)の慣習に興味を持ち、研究を始めたそうです。その後、多くの人たちが研究を行っています。
おまけ~色々な認証~
牛の鼻には、「鼻紋」があります。人間の指紋同様、一頭々々模様が異なります。これを利用して牛を識別することができます。
違いが分かりずらい黒牛の管理に便利
小話2
現実はそう甘くはない
技術を開発している人は、朝から晩まで試行錯誤の連続ということが多いと思います。指紋認証技術の開発も、多分に漏れず、一日中パソコンに向かって、あれやこれやと試行錯誤します。つまり自分で考えた画像処理方法や指紋認識方法がうまく働くかどうかを自分の指や他人の指で何回もチャレンジするわけです。自分でアイデアを出して・・・、時間をかけて作って・・・、ドキドキしながら動かして・・・、それが上手く動くようになると、すごく嬉しいものですよね。皆が知っているモノ作りの楽しさです。でも、モノ作りには、必ず"落とし穴"があります。そう、誰もが発する言葉、「こんなはずじゃなかったのに~(涙)」
こんなはずじゃなかったのに~その1
現在の指紋照合技術の開発者は、入社半年で指紋技術の方式担当になりました。(指紋認証装置に新しい方向性を持たせたい&若気の至り)で、新しい方式を一生懸命考えました。それまでと違う画像処理方式を考え、指紋認証方式を考え、そして、自分の10本の指で何度も評価していました。そして、OKの照合性能が得られる方式が出来たと思いました。しかし、彼は落とし穴にはまりました。はまった落とし穴とは、「彼はまだ20代だった・・・」。
彼の指は、
- 瑞々しく、指先はいつもいい感じに潤っている
- 指の皮膚に皺(シワ)がない
- 水仕事なんてしないから、肌が荒れない
- (若さとは関係ないですが)指紋の判別に利用する指紋特徴点の数が多い
だったのでした。つまり、指紋は理想的な指紋だったのです。出来たといって喜んで他の研究員に色々やってもらうと、予想外の照合結果がどんどん発生しました。そして、彼の自信は脆くも崩れていくのでした・・・(涙)
世の中にはいろんな人(ゆび)が居るんだなぁと身にしみた彼でした。
こんなはずじゃなかったのに~その2
研究室内の評価では合格点の、うまく動く指紋認識方法が出来ました。次は、研究室外の多くの人の指紋画像を使って、指紋認証性能を測る番です。そのためには、社外の多くの人から指紋画像を集めなければなりません。さすがにこれは開発者の手では出来ないので、外部の会社に発注します。委託会社がこちらの支持に従って指紋画像を集めてくれました。
そして、集められた指紋画像を用いて指紋照合の実験をしようとすると・・・
予想外に指紋の映っている領域が狭い!その理由は・・・。
我々の普段の生活では、指先を使うことは多々ありますが、指紋を採ることは減多にありません。指先でボタンを押す場面はあちらこちらで登場しますが、指紋を写すような指の腹を使う置き方をすることは、まずないと思います。
指紋画像を集めるときは、パソコンを使って自動処理で指紋画像の収集を行います。つまり、被験者にパソコンの指示に従って指紋センサーに指を置いてもらい、指紋画像をどんどん蓄えていくのです。この時、被験者には「指紋センサー上に指を置いてください」とアナウンスします。ここで、「指紋を押捺して下さい」と表現すると、良くないイメージを抱かせる可能性があるため、「指を置いてください」と表現しました。そうすると、被験者の皆さんは、素直に指を指紋センサーに置いてくれるのですが・・・、日ごろのように通常ボタンを押す気持ちで指紋センサーに指の先の部分を押し当てるのです!そのため、指先の指紋しかセンサーに入力されないのです・・・(涙)
指紋画像収集前に指の置き方例を示しても、なかなか上手く伝わらないようです。何気なく指を置いても、指紋全体が指紋センサーに接触するような指紋センサーデザインが必要ということでした・・・。