「やさしい」技術

ピロリン酸鉄リチウムを使った二次電池

普段の生活にかかせない電池ですが、意外と知らないしくみや新しい技術を紹介します。

電池を知ろう

一次電池、二次電池って聞いたことある?

  • 普段、リモコンやゲーム機で使っている電池とどう違うのですか?

  • 私たちが「乾電池」と呼んでいるものは、使いきりタイプの電池で、「一次電池」といいます。そして、充電して繰り返し使える電池を「二次電池」といいます。

一次電池

  • 身近な電池だけど、どうやって電気を作りだしているのでしょうか?

  • 電池は、プラス極とマイナス極と電解液(*)からできています。
    マンガン電池を例にだして説明します。
    マイナス極の亜鉛から亜鉛イオンが溶けてセパレータを通り、プラス極へ移動します。
    電子は導線にそって、マイナス極からプラス極へ移動しますので、その際に電気が流れます
    マイナス極からプラス極に移動した電子は、水素イオンとプラス極の二酸化マンガンと結びつき、オキシ水酸化マンガンができます。

  • (*)電解液って?
    イオンが溶けている液体です。このイオンが電池の中のプラス極とマイナス極の間で、電気を運ぶ役目をしています。乾電池の中では、「セパレータ」の中に電解液がしみこんでいます。

従来のリチウム二次電池

リチウム二次電池のしくみ

  • 二次電池のしくみを教えて下さい。

  • 二次電池は繰り返して使うので、「充電」と「放電(電池を使用すること)」をおこなっています。リチウムイオン二次電池を例にだして説明します。
    ①充電は、プラス極(コバルト酸リチウム)からマイナス極に電子が移動するとともに、リチウムイオンが溶けだし、マイナス極の炭素系材料へ移動します。リチウムが溶けた分だけ、電子がプラス極のコバルト酸リチウムからマイナス極の炭素系材料へ移動します。電子の流れと反対に電気が流れます。
    ②放電は、イオン、電子、電流の流れが逆方向になります。

なにが問題なの?

  • へ~、乾電池と形や材料は違いますが、しくみは同じですね。このコインのような形の電池は、ゲーム機とか、腕時計の電池として、私たちの生活の中で使われている電池ですね。このコイン電池の何が問題なのですか?

  • プラス極に、「コバルト酸リチウム」という材料を使用していますが、このコバルトは、レアメタルに指定されている金属なのです。

  • レアメタルというと貴重な金属ってことですか?

  • はい。レアメタルは、地殻中の存在量が比較的少なかったり、採掘と精錬のコストが高いなどの理由で流通・使用量が少ない非鉄金属を指しています。コバルトもその一つです。

  • 貴重なコバルトを使っているなら、リチウム二次電池は値段が高くなりますね。

  • はい。コバルトの代わりができるプラス電極用の材料を開発しました!新しいリン酸鉄系の材料のピロリン酸鉄リチウムです!

新しいリチウム二次電池

新プラス電極用材料「ピロリン酸鉄リチウム」のピロリン酸鉄って何?

  • 「ピロリン酸鉄」って何ですか?

  • ピロリン酸鉄とは、リン酸鉄系の材料で、鉄を強くするために使用される添加物です。天然の鉄鉱石から不純物を除き精製、殺菌したものです。「鉄分」を補給するために鉄分サプリや粉ミルク、ベビーフード、その他の一般食品に使われています。

  • ピロリン酸鉄の「ピロ」って?
    「ピロ」を英語で、pyroと書きます。意味は「火」です。1つのピロリン酸は2つのリン酸が"熱により"脱水縮合して生成されます。

  • ピロリン酸鉄は、身近で使われているものなんですね。このピロリン酸鉄リチウムを使った二次電池の一番の特徴は何ですか?

  • コバルトを使わない電池がいろいろと開発されているのですが、その代表的な材料が「リン酸鉄リチウム」です。それよりも高い電圧(3.8V)をだすことができることです!

ピロリン酸鉄リチウムを使った二次電池について

  • どうして従来品よりも高い電圧がだせるのですか?

  • はい。ピロリン酸鉄リチウムについて、順番に説明しますね。
    ①試作したコイン型ピロリン酸鉄リチウム電池
    ②構造(プラス極にピロリン酸鉄リチウム)
    ③電圧のグラフ
    ④なぜ高い電圧をだせるのか

  • このグラフでわかることは何ですか?

  • このグラフは、それぞれの材料で作りだした電圧の違いです。
     a-コバルト酸リチウム
     b-従来のリン酸鉄リチウム
     c-新材料のピロリン酸鉄リチウム
    新材料は、従来のリン酸鉄リチウムよりも高い電圧を作ることができます。今後、コバルト酸リチウムのように、高い電圧を長く維持できるように、結晶構造の改良に取り組みます。

「今回試作しましたコイン電池で実測した充放電容量は、1グラム当たり約105mAh/g(ミリアンペアアワーパーグラム)であり、理論値の139mAh/gやコバルト酸リチウムの137mAh/gに比べると75%程度となり、今後、解析を進めさらに改善していく予定です。」

なぜ高い電圧を出せるの?

高い電圧を出すために工夫した技術が2つあります。

1つ目の工夫

ピロリン酸鉄リチウムの結晶構造を工夫しました
(鉄原子周囲の酸素の配置をゆがんだ構造にしました)

  • ゆがんだ構造ってどういうことですか?

  • ピロリン酸鉄リチウムの材料は、「鉄」「リチウム」「リン」です。これらがくっついた状態の結晶構造を見てみると、鉄の周りの酸素の数が部分的に少ない構造があります。この部分をゆがんだ構造と言っています。

  • わかったことは、鉄のまわりの酸素構造をゆがませると、作り出せる電圧を上げることができるということです。コバルトを使わない電池作りの大きな1歩です!

2つ目の工夫

原料の配合と材料形成を精密に制御しました!
(富士通独自の技術)

  • 具体的にはどういうことですか?

  • ピロリン酸鉄リチウムの材料は、「鉄」「リチウム」「リン」にそれぞれ酸素がくっついている状態で混ぜ合わせます。その混ぜ方と、焼く温度を変えることによって、一部ゆがんだ構造(=高い電圧を出せる)になることがわかりました!

今後&関連ページへのリンク

今後

コバルト系正極材料は、スマートフォンやデジタルカメラ、電気自動車などの多くのリチウム二次電池として用いられています。コバルト系材料と同等のエネルギー密度を持つ正極材料を開発した場合、レアメタルであるコバルトを、豊富に存在する鉄に置き換えることで、正極材料の安定生産を可能にします。これにより、リチウム二次電池や、これを用いた電気自動車などの安定生産に貢献することが期待されます。


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