研究者インタビュー

多様な研究員が集結!~最先端AI技術を体験し導入できるFujitsu Kozuchiの開発秘話~

English

AI技術は目覚ましい発展を遂げ、製造、小売、金融、医療など様々な分野での活用が期待されています。しかし、AIの導入は容易ではなく、多くの企業がAIの運用に課題を抱えています。その要因として、AI技術の有効性を検証する機会の不足やAI技術の知識やスキルを持つ人材不足などが挙げられます。こうした課題を解決するため、富士通は先端AI技術を試すことができるプラットフォーム、Fujitsu Kozuchi(研究開発版)(以下、Fujitsu Kozuchi)を公開しました。お客様が取り組む課題に対して、解決策を迅速に見つけられるよう、特定業務の要求に応えるAI技術をいち早く提供します。これにより、迅速に技術検証を行えるとともに、お客様のビジネスの生産性と創造性を高め、課題の解決を支援します。今回はFujitsu Kozuchiの開発、運営に携わる開発メンバー4名に、プラットフォーム公開に至った背景、その魅力や開発における挑戦ついて話を聞きました。

2025年3月11日 掲載

RESEARCHERS

  • 熊野 達夫

    熊野 達夫

    Kumano Tatsuo

    富士通株式会社
    富士通研究所
    人工知能研究所
    AIイノベーションCPJ
    リサーチャー

  • 片山 朝子

    片山 朝子

    Katayama Asako

    富士通株式会社
    富士通研究所
    人工知能研究所
    AIイノベーションCPJ
    リサーチャー

  • 栃折 泰史

    栃折 泰史

    Tochiori Yasufumi

    富士通株式会社
    富士通研究所
    人工知能研究所
    AIイノベーションCPJ
    リサーチャー

  • 内海 哲哉

    内海 哲哉

    Uchiumi Tetsuya

    富士通株式会社
    富士通研究所
    人工知能研究所
    AIイノベーションCPJ
    シニアリサーチマネージャー

最先端のAI技術をいち早くお客様が試すことができる、Fujitsu Kozuchiを公開

Fujitsu Kozuchiを公開する理由を教えてください。

内海:多くの企業がAI技術の本番運用を希望する一方で、先端技術を検証する機会の不足や、AI技術の知識やスキルを持つ人材不足が大きな課題となっています。Fujitsu Kozuchiはこれらの課題を解決するために誕生しました。お客様のビジネス課題に対して解決策を迅速に見つけられるように、特定業務の要求に応えるAI技術を提供します。このプラットフォームを通じて、AI利用の経験が少ないお客様でも迅速に技術を検証することができます。これにより、AIがお客様の生産性を向上させ、創造性を高め、ビジネスに新たな価値をもたらす支援をします。

Fujitsu Kozuchi公開後、お客様への技術提供はどのように変わりましたか。

内海:従来、研究所が開発した最先端の技術を迅速にお客様に提供し、課題解決に役立てていただくことは困難でした。これは、事業化の見通しが立っていない技術をお客様へ提供する仕組みが存在しなかったからです。しかし、最先端のAI技術を迅速にお客様に使ってもらいたいというモチベーションが研究所の中で高まり、AIの研究テーマを集めたFujitsu Kozuchiが生まれました。これにより研究段階の技術でも迅速にお客様が利用できるようになりました。

AI技術をプラットフォーム化することは研究員の仕事の効率化に寄与しましたか。

内海:研究員は、主な研究活動に加え、技術デモ動画や技術紹介資料の作成などといった付随的なタスクも担っています。しかし、これらのタスクに時間を割くほど、肝心の研究活動に時間がとれなくなってしまいます。Fujitsu Kozuchiプラットフォームを構築したことで、技術の実装手順や提供方法を共通化し、研究員が技術デモ動画や紹介資料の準備を効率的にこなせるようにしました。その結果、研究員は研究活動により多くの時間を充てることができるようになり、お客様の課題に対して迅速に解決策となる技術の開発を進めることができるようになりました。

Fujitsu Kozuchiの強み・特徴について教えてください。

内海:やはり富士通の最先端のAI技術を試すことができることです。ビジネスの世界は待ったなしですので、商品化される前であってもAI技術を積極的に試して、ビジネスに取り入れていくことが重要だと考えています。Fujitsu Kozuchiでは、50種類以上の豊富な先端AI技術を公開し、100件を超えるお客様との実証実験を実施しました。技術を試すには専門知識を必要としませんので、AI活用経験の有無を問わず、幅広いお客様にご利用いただいています。AI技術の進歩フィードバックを取り入れて継続的に機能を拡充し、お客様との共創を通じて新たなビジネス創出を目指しています。

内海は、Fujitsu Kozuchi運営のリーダーを担当

公開スピード、セキュリティ、コストのトレードオフに向けて

Fujitsu Kozuchi公開に向けて、どのような課題があり、それを解決するためにどのような工夫をしましたか。

熊野:技術の迅速な公開、セキュリティの確保、そしてコストの抑制が必要で、そのトレードオフに苦労しました。特に、セキュリティを高めることを最優先に進めました。お客様自身のデータを使って技術を試す際に、他のお客様のデータが混在しないようにシステム側で厳格に管理しています。さらに、仮想環境にも対応したサーバ向けのセキュリティ対策を採用し、予期せぬ攻撃に対する予防策として、VPN接続(仮想専用ネットワークを介して安全にインターネットに接続すること)を必須としました。

片山:技術公開のためには、該非判定や名称審査など、多くの社内手続きが必要で、これらの手続きはとても時間がかかります。研究員の仕事が滞らないように、手続きのためのFujitsu Kozuchi共通ドキュメントや規定のひな形を作成して、研究員が研究に集中できるような環境を整えました。

片山は、Fujitsu Kozuchiの利用申請アプリ開発、セキュリティ関連を担当

Fujitsu Kozuchiで多くの技術を短期間で公開できた理由を教えてください。

栃折:AI技術のプロトタイプアプリを利用者に素早く提供するためには、研究員の専門外であるアプリ開発を簡素化し、提供方法に応じた要件を満たすことが必要でした。私自身もアプリ開発者でしたので、アプリのテンプレートがあれば便利だと考え、開発者向けに使いやすいテンプレートコードを整備しました。提供方法に応じた要件を満たすため、まず提供方法の型を決め、そのテンプレートとアプリ開発の標準的な手順を定めることで、迅速な技術提供を実現しました。また、アプリ開発を簡単にする工夫として、専門知識がなくてもPythonで簡単にウェブアプリを作成できるフレームワークであるStreamlitを選定したことで、多くの研究員が利用できるようになりました。

片山:もう一つ理由として、このチームは様々なバックグラウンドを持つメンバーによって構成され、それぞれが互いの能力を補完していることが大きいと思います。内海は以前、AIを使用したシステム運用の自動化や効率化の研究をしており、熊野は事業部での経験があり、私自身はテスト分野のソフトウェアエンジニアでした。メンバーは、社内ポスティングという富士通のキャリア支援制度を利用し、このチームに集まりました。メンバーは、自ら望んだ業務を様々な工夫をしながら進めています。同じ作業でも、指示されて行う場合と、自ら望んだ業務を行う場合では、モチベーションに大きな違いが出ます。その結果、多くの技術を短期間で公開することができたのだと思います。

栃折は、アプリ開発共通化を担当

研究員が紹介するFujitsu KozuchiのAI技術

Fujitsu Kozuchiは、富士通が研究開発した数多くの先端AI技術を搭載しています。ここでは、その中からFujitsu Kozuchi AI AgentFujitsu ナレッジグラフ拡張RAG for Root Cause Analysis技術についてご紹介します。

Fujitsu Kozuchiで公開された技術の中でも、特に「Fujitsu Kozuchi AI Agent」は大きな注目を集めています。

内海:大規模言語モデルの登場によって、AIが人間のように意思決定やタスク実行を行うことが可能になり、AIエージェント研究は飛躍的に進歩しました。この流れを汲む「Fujitsu Kozuchi AI Agent」は、AIが難易度の高い業務を自律的かつ人と協調しながら進めるAIサービスです。利用者の業務を自律的に支援することで、業務効率化や生産性向上に貢献します。Fujitsu Kozuchiでは様々なAI技術を提供していますが、中でもこの技術は、利用者が意識することなく生成AIやAIエージェントによるビジネス変革の恩恵を受けられる世界を目指しています。

ご自身が利用者なら、Fujitsu Kozuchiのどの技術を利用してみたいですか。

熊野:個人的には、Fujitsu ナレッジグラフ拡張RAG技術シリーズの一つである「Fujitsu ナレッジグラフ拡張RAG for Root Cause Analysis」に興味があります。ITシステムの運用管理は常に障害との闘いで、多くの人が苦労しています。大規模で複雑な機器構成のシステムの障害原因を探し出すのは、まさにゴミの山から宝を探すような大変な作業です。この技術は、システムの障害原因の特定を支援するもので、システムのログや障害事例のデータをもとに対策案を提示します。将来的には、AIが障害の根本原因を自動的に特定し対策を行うという、運用が楽になる自動化された未来を期待しています。

技術はどこで体験できるのですか。

栃折:当社からの技術紹介デモやトライアルを通じて、技術を体験していただける機会をご提供しています。興味のある方はぜひこちらからお問い合わせください。さらに、お客様のニーズに応じて技術をカスタマイズし、トライアルすることも可能です。また、Fujitsu Research Portalのウェブサイトで、すぐに試すことができる技術もありますので、こちらもぜひご覧ください。

熊野は、インフラ開発を担当

誰もが快適に使えるプラットフォームを目指して

Fujitsu Kozuchiの今後の展望について教えてください。

熊野:Fujitsu Kozuchiには多くの技術が搭載されていますが、どの技術を選べば良いか、どう組み合わせると一層の価値が得られるのかを判断するのは難しいです。そこで、AIが最適な技術を選定し、複数の技術を組み合わせた場合の効果や価値を分析し、その結果を自然言語で利用者に分かりやすく提示できるようにしたいと考えています。 また、AIエージェントによるアプリケーションの開発自動化にも期待しています。生成AIがなかった頃は、API(Application Programming Interface:ソフトウェア同士が情報のやり取りをするための仕組み)があっても、GUI(Graphical User Interface:ユーザーが視覚的に操作できる要素を用いて、直感的にコンピュータに指示を出せるように設計されたユーザーインターフェース)を作ってアプリとして使えるようにするのは大変でした。しかし、生成AI技術の著しい進歩により、APIを指定するだけでGUIを自動生成できるようになりました。これにより、アプリケーション開発のスピードアップを図り、お客様へ高品質な技術検証環境を迅速にご提供することを目指します。

内海:利用者が、より快適にAI技術を検証できるように支援するサポートエージェントを導入したいと思っています。具体的には、Fujitsu Kozuchiの運用にもAIを取り入れ、障害が起きたら自動的に修復してくれる仕組みを検討しています。これにより、利用者は中断されることなく技術検証を続けることができます。Fujitsu Kozuchiをさらに賢く進化させ、利用者にとって使いやすいプラットフォームにしていきます。

関連情報

商品版のFujitsu Kozuchiはこちらをご覧ください。

当社のSDGsへの貢献について

2015年に国連で採択された持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)は、世界全体が2030年までに達成すべき共通の目標です。当社のパーパス(存在意義)である「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくこと」は、SDGsへの貢献を約束するものです。

本件が貢献を目指す主なSDGs

“No. 8,9,10,11”

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