医学的知見と画像解析との融合による3次元類似症例画像検索技術が「映像情報メディア学会 第51回技術振興賞」を受賞
2024年8月6日
左から、武部 浩明、宮崎 信浩、森脇 康貴
医学的知見と画像解析を融合させた「3次元類似症例画像検索技術」が、このたび、一般社団法人映像情報メディア学会の第51回(2023年度)技術振興賞 進歩開発賞(研究開発部門)を受賞しました。本技術は、医療現場の業務効率化を支える高度な画像検索技術です。
贈呈式は、5月31日(金)に機械振興会館(東京都港区)にて行われました。
技術振興賞 進歩開発賞(研究開発部門)について
映像情報メディア学会の技術振興賞 進歩開発賞(研究開発部門)は、映像情報メディアに関する研究・開発等で著しい功績をあげた個人または団体に授与されるものです。
受賞内容
「医師の診断を支援する3次元類似症例画像検索技術の開発と新型コロナウィルス診断への実応用」
受賞者
宮崎 信浩 (富士通 コンバージングテクノロジー研究所 プリンシパルリサーチャー)
武部 浩明 (富士通 コンバージングテクノロジー研究所 プリンシパルリサーチャー)
森脇 康貴 (富士通 コンバージングテクノロジー研究所 シニアリサーチャー)
授与された賞状と受賞盾
技術概要
国内の医療分野における画像診断では、数少ない医師が大量の医用画像をチェックする必要があり、医師の業務負担が大きいことが深刻な課題となっています。中でも、診断数のかなりの割合を占める肺炎などを含む、びまん性肺疾患*と呼ばれる疾患群は異常陰影が臓器全体に広がり、その異常陰影の広がり方によって複数の病名が考えられます。そのため、病名判断の参考となる異常陰影の立体的な広がり方が類似する病名付きの過去症例(以下、類似症例)を医師が探すためには、豊富な専門知識や経験が必要となり、人手による作業に多大な時間を要していました。
我々は、本課題を解決するために、臓器内の解剖学的な構造に着目した独自の画像解析手法を考案し、類似症例を医師と同様の見方で瞬時に検索できる3次元類似症例画像検索技術を開発しました。
本技術により、びまん性肺疾患などの判断が難しい症例では、最大で50分程度要していた医師による類似症例の検索作業を数秒程度に短縮しました。類似症例の病名などを判断する際の参考としても活用できます。また、膨大な画像を見る医師の負荷軽減だけでなく、検査当日に患者に結果を伝えることが可能になり、結果を聞くために日を改めて再来院する患者の負担軽減にも寄与できます。
- *びまん性肺疾患:左右両側の肺全体に病変が広がっている疾患の総称で、多様な疾患が含まれる
3次元類似症例画像検索技術の全体像
受賞者コメント
宮崎 信浩
武部 浩明
森脇 康貴
この度、このような名誉ある賞をいただくことができ大変光栄に思います。本件は、画像診断における医師の見方を画像解析でアルゴリズム化した独創的な技術に関する研究成果です。本受賞は、私たちだけでなく、医学的な観点よりコメントいただいた現場の医師をはじめとした様々な専門家にご尽力いただいた結果だと感じております。今後も、現場の専門家と連携して社会課題の解決に向けた研究開発に励みます。