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研究者の夢

リアルとデジタルを融合するボーダーレス・ワールドの信頼を高めるネットワークトラスト研究者の挑戦

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2023年9月4日 掲載

水泳を通じて学んだこと

幼少の頃からずっと水泳をやってきました。
きっかけは、兄と一緒にスイミングスクールに通い始めたことです。
プールで泳ぐ兄の姿を見て、自分もうまく泳げるようになりたくて、毎日スイミングスクールに通いました。
1つ1つの練習メニューをこなし、タイムを更新していくことは、本当に充実した日々でした。

当時の夢はオリンピック選手でした。
1988年のソウルオリンピックで鈴木大地選手が金メダルを取った時の映像は、いまだに鮮明に覚えています。
水泳は、目標を持って根気強く取り組むことの重要性を教えてくれました。
今も毎週プールに行きますが、研究業務の良い気分転換になっています。

WiMAX標準化への貢献

入社してから10年以上の間、モバイルネットワークの研究を行ってきました。
富士通はその頃、WiMAXの標準化活動として、技術的な提案や試験などで積極的に参加していました。
標準化活動は国際的な規格であるため、多くの団体や企業が参加し、協力して進めることになります。

私は、富士通が標準化提案する上で必要となる、
仕様の検討とその効果を示すシミュレーションを行う担当の一人でした。
関係者と仕様化の検討を行い、関連する特許を出願し続けました。
特許発明のアイデアを出す過程は、課題の洗い出しから始まり、
アイデアの発想、評価、実現可能性の検討まで様々なステップがあります。

私はその中で、毎週、特許アイデアのブレインストーミングを繰り返し行いました。
メンバーからのコメントを反映してアイデアを積み上げるようにしました。
アイデアを検証してみて実現可能性が低い場合、別の可能性を探ります。
アイデアが新しく、実現可能性が高いものが見つかるまで何度も何度も、繰り返し検討を重ねました。
研究開発において粘り強さは大切であり、それは私の強みになっていると実感しました。
出願までの過程は大変でしたが、自身のアイデアが仕様化されたときは大きな達成感を得られました。

技術をビジネスに繋げるために

その後、強化学習を使用したWi-Fiやセルラの選択技術のアルゴリズム研究のため、
1年間イギリスに留学しました。
異なる文化や新しい知識に触れるという貴重な経験をしたことで、
より幅広い視野を持つことができるようになったと思います。
また、先端の技術に触れ、新しい研究手法や技術力を身に着けることもできました。

しかし留学後、研究成果をビジネスに落とし込む難しさを知りました。
事業部に提案した技術が採用されたものの、製品がなかなか思うように売れず、
研究の意義について考えさせられました。
顧客が本当に必要としているものは何か、改めて考える貴重な経験だったと思います。

次の研究開発では、企業や個人の情報を安全に流通させる技術として、
ブロックチェーンを使った情報流通基盤のVPX(*1)を開発したり、
情報銀行基盤のアーキテクチャを設計したりしました。
社外関係者との情報銀行基盤の検討においては、技術の説明や議論はもちろん重要ですが、
それ以上に得られる効果と、ベンチマークの重要性に改めて気づきました。
それ以降、技術によって得られる効果や価値が何か、
顧客が何を求めているのかを研究開発の中で考えることを大切にするようになりました。

また、研究開発をスムーズに回すために、前回の議論から小さなアップデートであっても、
資料を作って説明することを心掛けました。
この些細な取り組みこそが、研究開発を素早く正しい方向に導くために大切な要素と考えます。
関係者や研究員の意識を合わせることにより、改善の取り組みがスムーズに進み、
結果として価値のある技術が創出できると思います。

ネットワークトラストの実現に向けて

子供の頃、父の転勤のためシンガポール、インドネシアで暮らしたことがあります。
幼い頃に外国で暮らし、外国の友達を持ったことが、
大人になってからグローバルに活躍していきたいと願う理由の一つになったのかもしれません。
現在、私はネットワークトラストの研究開発を強化するため、
今年の6月からイスラエルの研究拠点で勤務しています(*2)。

ネットワークトラストとは、リアルとデジタルが融合したボーダレス・ワールド
において、それらを繋ぐネットワークによってトラストを確保する技術で、
今後のグローバルを跨ぐオンライン上の取引において、重要な役割を占めていくと考えられます。
私はネットワークトラスト実現のための最初の一歩として、データ越境や経済安全保障の観点で、
取引するデータが地理上どこで管理されているのか、
アクセスする相手が信頼できる場所からアクセスしているかを検証できる仕組みを研究しています。
これらにより、データ取引が法的に問題ないかを検証でき、安全な安心なデータ取引を実現します。
所有するデータがどこにあるのか、取引相手がどこにいるかを知ることで、
データが法的に問題ないかを検証でき、必要に応じて対策を講じることができます。

Web3プラットフォームでの取引を広げるため (*3)、デジタル世界における所有権やプライバシー、
トラストなどの課題を解決するための技術が必要とされています。
様々なシステム上に分散して存在する個人や企業のデータを、信頼を確保しながら繋げていくような、
未来のネットワークトラストの仕組みをメンバーと一緒に考えていきたいと思っています。

――ヒトやアイデアをつなぐことで新しい技術価値を生み出すことを目指して。

須加 純一
Suga Junichi
データ&セキュリティ研究所
大学院 電気・電子工学科卒
2003年入社
私のパーパス
「ヒトやアイデアをつなぎ、みんなで明るい未来を創る」
趣味の水泳は、現在も細々ながら続けています。イスラエルでも始めようと考えています。

編集後記

編集担当:コミュニケーション戦略統括部 白 湘一

富士通の研究所見学は、彼が就職するきっかけだった。いくつか部署を回り、それぞれ研究内容の説明やデモを見聞きし、研究員が自由に研究している印象を持ったようだ。また、事業部に異動する研究員の話を聞き、色々なキャリアパスがあるのも良いと感じたという。結局ぶれずにずっと研究開発に携わり、最高の人生を経験していると彼の喜びの声が聞こえた。

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