富士通の「デジタルアニーラ」が2023年度「第36回 先端技術大賞 特別賞」を受賞
2023年7月28日
富士通の「デジタルアニーラシステムの開発と顧客実問題への適用」が、このたび、産経新聞社主催の第36回 先端技術大賞において特別賞を受賞しました。
世の中に存在する様々な社会課題には、多様な制約条件を持った様々な規模の組合せ最適化問題がありますが、複雑な現場の実課題を解決できる「Fujitsu Quantum-inspired Computing Digital Annealer」(「デジタルアニーラ」)の先進性・実用性が評価され、今回の受賞となりました。受賞式は、7月20日(木)に東京・元赤坂の明治記念館で執り行われました。
先端技術大賞について
先端技術大賞は、「先端技術学生論文表彰制度」として、1986年に理工系学生の独創性と創造性をはぐくみ、研究への意欲を高めることを目的に創設されました。その後、「科学技術創造立国」の実現には、産学官の連携や若手技術者の育成が不可欠との考えから、第16回より企業の若手研究者・技術者も表彰対象に加えられ、名称も「独創性を拓く 先端技術大賞」と改められました。主催は産経新聞社、後援は文部科学省、経済産業省、フジテレビジョン、ニッポン放送です。
受賞内容
「デジタルアニーラシステムの開発と顧客実問題への適用
~様々な社会課題に内在する組合せ最適化問題の早期求解を目指して~」
受賞者
- 米岡 昇プリンシパルリサーチャー
- 片山 健太朗プリンシパルリサーチャー
- 橋間 正芳専任研究員
- 中山 寛研究員
- 宮澤 俊之シニアリサーチマネージャー
受賞技術について
工場の生産計画や人員計画の最適化、物流や運送経路の最適化など、現場の実課題の多くに内在する組合せ最適化問題を、高速に解く取り組みが各社で進められています。
富士通は組合せ最適化問題を高速に求解するために「デジタルアニーラ」を開発し提供してきました。「デジタルアニーラ」は、現在の汎用コンピュータでは解くことが難しい組合せ最適化問題を解くことに特化したドメイン指向型(特定の領域に処理能力を特化)コンピューティング技術です。そのアニーリングユニットは8,192ビットの専用チップで構成されています。
しかし、複雑で規模の大きいお客様現場の実課題解決では、より大きな組合せ最適化問題をより速く解くことが求められています。そこで、現場課題で頻出する不等式制約などの制約条件を入力可能とするインターフェースと、大規模問題で制約条件を利用した解探索を行うアニーリングコアを有したデジタルアニーラシステムを開発しました。このシステムにより100,000ビットまでの制約付きの複雑な組合せ最適化問題を高速に解くことが可能になりました。
実課題の例として自動車専用船積み付け問題があります。寄港数・最大積載数・車高など、総当たりでは10の2,000乗通りの組合せになる組合せ最適化の難問の場合、このシステムを用いて求解することにより、自動車専用船の積み付け計画を作成するプランナーの作業時間を年間4,000時間以上削減可能になりました。このように、デジタルアニーラシステムはお客様現場の実課題の解決に貢献することができます。
受賞者コメント
米岡 昇
(Yoneoka Noboru)片山 健太朗
(Katayama Kentaro)橋間 正芳
(Hashima Masayoshi)中山 寛
(Nakayama Hiroshi)宮澤 俊之
(Miyazawa Toshiyuki)
独創性を拓く、と賞のタイトルにありますが、まさにデジタルアニーラ技術は富士通が独自に開発し、今なお研究し続けている技術であるため、特別賞を頂けたことは光栄であり喜びもひとしおです。私たちだけでなく、多くの関係者の尽力により、このような栄誉ある賞を受賞できました。
今回の受賞は、社会問題で頻出する様々な制約を利用して大規模に最適化可能としたデジタルアニーラシステムの開発と、それにより従来は求解が困難であった複雑なお客様の現場課題を解決したことが評価されたと考えております。これからもデジタルアニーラ技術を進化させることで、様々な実社会の課題を解決していきます。
関連情報
・「デジタルアニーラ」で自動車専用船の積み付け計画作成業務を効率化(2021年9月2日プレスリリース)
・Computing as a Service Digital Annealer(デジタルアニーラwebサイト)