アジア開発銀行のブロックチェーン技術を用いたクロスボーダー証券決済システムの実証実験に貢献

2023年6月15日

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アジア開発銀行(ADB:Asian Development Bank)は、富士通、ConsenSys Software Inc.(以下、ConsenSys)、R3、SORAMITSU Helvetia AG(以下、SORAMITSU)と共同で進めてきた実証実験“Project Tridecagon”の成果レポートを発行しました。“Project Tridecagon”は、分散型台帳技術/ブロックチェーンを使い、アジア・太平洋地域におけるクロスボーダー取引の効率性や安全性の向上を図る実証実験です。

当社は、本実証実験において、各国での利用を想定して実験的に構築された分散型台帳技術/ブロックチェーンベースの金融システムを接続するクロスボーダー証券決済の仕組みを、当社のブロックチェーン連携技術「ConnectionChain」や関連OSSプロジェクト「Hyperledger Cacti」を活用して構築しました。

実証実験の背景

現在、ASEAN+3(ASEAN加盟10か国に日中韓の3か国を加えた13か国)のクロスボーダー証券取引は、有価証券を投資家に代わって管理するカストディアン業務を担う機関や、海外送金を行う際に送金を中継するコルレス業務を担う銀行など、様々な金融機関を介して処理されています。仲介する金融機関の数が多いことから、取引コストや決済にかかる時間が増大し、取引と決済の間にタイムラグが生じています。このタイムラグによって引き起こされる市場リスクや決済リスクは、アジア諸国間の取引において問題となっています。

この問題に対しADBは、取引の効率化に期待して、クロスボーダー証券取引への分散型台帳技術/ブロックチェーンの適用可能性を検証することを目的とした“Project Tridecagon”を立ち上げました。

実証実験における富士通の役割

本実証実験において当社は、各国の中央銀行や証券決済機関での利用を想定して、ConsenSys、R3、SORAMITSUが実験的に構築した分散型台帳技術/ブロックチェーンベースの金融システムを当社の「ConnectionChain」によって連携することで、クロスボーダー証券決済を実証しました(図 1)。

分散型台帳技術/ブロックチェーンを活用したクロスボーダー証券決済では、ある国での「証券トークン」と「自国通貨トークン」による証券決済の際、自国通貨トークンに相当する額の「外貨トークン」を他の国からクロスボーダーに送金するため、3種類のトークンを連携する必要があります。しかし、これまでの分散型台帳技術/ブロックチェーンを使った実証実験の多くは、異なる台帳上の2種類のトークンの取引を連携するものであり、適用が困難でした。

この実証実験を可能にしたのが、当社のブロックチェーン連携技術「ConnectionChain」です。ConnectionChainは、自身もブロックチェーンをベースとする技術であり、複数の異なるブロックチェーン上のスマートコントラクトや様々なWebAPIシステムを、当社が独自に開発したスマートコントラクトの機能によって安全かつ柔軟に連携可能にします。本実証実験のようなブロックチェーンベースの金融システム同士の連携だけでなく、WebAPIベースの既存の金融システムと新たに構築したブロックチェーンベースの金融システムの連携も可能です。これにより、ブロックチェーンベースの金融システムとの連携による既存の金融システムの機能拡張を容易に行うことができます。

また今回、様々な分散型台帳技術/ブロックチェーンを用いて実験的に構築された金融システム上の異なるトークン操作をConnectionChainから容易に実行可能とするため、「Cacti Ledger Plugin(LP)」を利用しました。Cacti LPは、当社がコア開発メンバーとして参加しているOSSプロジェクト「Hyperledger Cacti」の成果物であり、様々なブロックチェーン基盤のトークン操作を抽象化して差異を減らすことでトークン操作を容易にするブロックチェーン接続モジュールです。

図1 実証システムの概要図

開発者コメント

  • データ&セキュリティ研究所
    萱場 啓太
    Kayaba Keita

  • ソーシャルソリューション事業本部
    小林 大樹
    Kobayashi Daiju

  • ソーシャルソリューション事業本部
    白崎 裕介
    Shirasaki Yusuke

  • ソーシャルソリューション事業本部
    花森 利弥
    Hanamori Toshiya

  • データ&セキュリティ研究所
    藤本 真吾
    Fujimoto Shingo

  • ソーシャルソリューション事業本部
    山岡 慧
    Yamaoka Kei

我々は、2017年という早い段階からブロックチェーンの相互接続性の向上に着目し、ConnectionChain/Cactiの研究開発や実証実験に先駆的に取り組んできました。今回、クロスボーダー証券取引という社会的なインパクトの大きい実証実験に我々の技術で貢献することができ、うれしく思っております。今後も、我々の開発した技術で、通貨、証券、環境価値などのあらゆる価値の交換を安全かつ便利にすることで、社会の発展に貢献していきます。

本件に関するお問い合わせ

研究本部 データ&セキュリティ研究所
fj-tw3-pr-web3cc@dl.jp.fujitsu.com

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