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研究者の夢

最先端のコンピューティング技術の恩恵を多くの人の生活の中に取り入れたい

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2023年3月28日 掲載

パソコンの知識を武器にする

小学生の頃、母の友人のパソコン教室で、パソコンを習い始めました。
パソコンの基本操作や速くタイピングする遊びをたくさんしてきました。
元々、文字をきれいに書くのは苦手で、パソコンでのタイピングで文字を出力できるのは、手で書くことがなくなりラッキーだと思いました。
この時点でなんとなく、パソコンの仕事は未来に旋風を巻き起こすと感じ、武器にしたいと思いました。
学習すればするほど、パソコンに強い興味が湧き、関連する仕事に就きたいと考えていました。

将棋が私に教えてくれたこと

幼少期に、将棋にもはまっていた時期があります。
戦法を覚えることも楽しかったですが、自分が覚えたことを友人に教え、一緒に将棋を楽しんだ体験の方が記憶に残っています。
高校に入り、物理と化学が得意と気づきました。
特に理論に基づいて実践をすることが好きでした。
分かりやすい例では、摩擦力を大きくすることで、推進力を高めて速く走るというコツを実践するような日々の生活に関連することに魅力を感じました。
人に教える感動も覚えたおかげで、大学で何を学ぶか想像以上に悩みました。
コンピュータの専攻に進むか、科学の教師になるか、決めるのがとても難しかったです。
最終的に、情報工学を専攻しましたが、将棋で知った自分の知識や技能を他の人に教える感動は忘れることなく、現在に繋がっていると思います。

国際学会発表の経験

大学院のころ、グラフィックスプロセッシングユニット(GPU)(*1)を3Dゲームの描画速度を上げる用途以外に適用する研究が盛んでした。
私も、GPUの数値計算を汎用化させる研究をしました。
当時、卒業要件を満たすのに必死だったため、明確に自分の研究が社会にもたらすインパクトを意識することはありませんでしたが、国際学会で論文(*2)が採録された際に、自分の研究技術分野において最先端を歩んでいるという実感が初めて湧きました。
論文発表する時、会場には国内外の有識者が集まり、自分の講演内容を集中して聞いてくれた経験は、自信に繋がりました。
この感覚が得たことが、今後の研究の方向性と、自分の研究開発がどのようなインパクトを与えるかについてもう一度考え始めるきっかけになりました。

ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)開発に携わる

富士通に入社してからはハイパフォーマンスコンピューティング(HPC) (*3)の分野で活動をしていました。
入社直後は特定の分野にのみ精通している状況でしたが、業務でスーパーコンピュータ(スパコン)のアプリケーションの高速化等を行う際に必要な知識がかなり不足していたため、まずHPCの分野で活動できるようになることが大きな課題でした。

そんな中、2016年に開催されたTOP500というスパコンのコンテストで起こった事件が印象的でした。
スパコンを起動させるために、High-Performance Linpack(HPL)を動かさないといけないのですが、HPLの起動から終了まで13~15時間という長い時間がかかります。
この間に、どの関連パーツに不具合が起きても、全てやり直すことになります。
動かしはじめて、10時間過ぎたところで、エラーが発生してしまい、起動をやり直すことになりました。
エラー訂正が完了するまでひたすら対応し続けました。

エラーというのは、色んな状況が考えられます。例えばハードウェアの冷却が間に合わず、温度が高くなりすぎてスパコンがシャットダウンしてしまうことに繋がることもあります。
スパコンは、まさに「生き物」と思いました。人間のように体のどこかの内臓が悪くなったら、全体パフォーマンスが下がったりするのに似たような感じです。
もちろんその後にエラーの発生源を特定し対策を行い、HPLの運行が無事に機能し、スパコンを世の中に見せることができました。
当時の競合と比較しノード数が多く計算が速かった(*4)ので、良い評価を得て商談は大成功でした。

それから、商談でもスパコンを動作させる機会は何度もありました。
私のコンピューティング技術のノウハウを周囲へ伝えることで、プロジェクト内の歯車が回り出すという貴重な経験を得ました。
チームでさまざまな課題を乗り越えた先に日本一や世界一(*5)といったタイトル獲得に向かうのは新鮮な感覚でした。
1位を獲得した時は、素直に喜びを感じ、それが仕事のモチベーションに直接に繋がっています。

最先端のコンピューティング技術をより多くの人に届けたい

研究開発において、先が見えていて一直線に進んでいても、予想外に遠回りしていたとしても、私の足が常に前に向かって走り続けられているか確認することを大切にしています。
前に進めば誰よりも先に頂きに辿り着くこともあるし、別の発見に遭遇することもあると信じています。
過去には、ディープラーニング分野はコンピューティングの高速計算が必要だと見込んで、AIの勉強もし始めました。
AIを動かすための簡易的なフレームワークを試しにつくってみましたが、当時はプログラミングのリファレンスが確立されていなかったので、フレームワークの開発が非常に難航しました。
結局お披露目することなくお蔵入りしました。
しかし、そのようなことを続けていくうちに、何が必要か理解し、目的をしっかりと達成できました。
方向性が見えない時でも、とりあえず進んでみたことが良かったと今でも思っています。

現在、私はComputing Workload Broker(*6)の実現を目指す量子とHPCハイブリッド計算技術開発(*7)に取り組んでいます。
具体的には、量子計算の領域で実用的な課題解決に向けて挑戦し、誰もが専門知識無しで最先端のコンピューティングを利用できるようにすることを目指しています。
最先端のコンピューティング技術のノウハウを何かしらの形でより多くの人に届けることが私の夢です。
そして、私のパーパスに合うプロジェクトだと感じています。

コンピューティング技術は、AI、量子、ネットワーク技術などの領域と掛け合わせることで革新的な技術を生み出すことができます。
踏み込んでみないと分からない数多くの領域に臆さずに踏み込める強さが研究を続ける上で大事なことだと考え、今日も前を向いて、今できることを精一杯やりたいと思います。

笠置 明彦
Kasagi Akihiko
コンピューティング研究所
大学院 工学研究科卒
2015年入社
私のパーパス
「最先端のコンピュータの恩恵を多くの人の生活の中に取り入れる」
休日は子どもと散歩に出かけたり、料理をしたりしています。得意料理は筑前煮です。

編集後記

編集担当:コミュニケーション戦略統括部 白 湘一

富士通スーパーコンピュータ「京」「富岳」は、最先端テクノロジーを結集し開発されたものである。彼は入社してからコンピューティング技術の開発を担当し、コンピューティング専門分野以外、AI、量子など新しい領域の学習もし続けてきた。彼は教師の夢もあったが、現在は違う形でチームメンバーにナレッジの共有を推進している頼もしいリーダーであり、これからも最先端技術を人々に送り続けていくことを楽しみにしている。

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