AI分野で世界最高峰の国際会議「NeurIPS 2022」に、全ての説明・アクションの可能性を提示するAI技術と複雑な要求仕様を満たすAIモデル生成技術の2件が採択
2022年11月29日
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富士通は、AI分野で世界最高峰の国際会議である「NeurIPS(Neural Information Processing Systems)2022」に、AIの研究成果が2件採択されました。「NeurIPS」は全世界の大学や研究機関、企業などから論文が投稿され、今回は約25%のみが採択されたAI系の最難関国際会議です。
今回、米国 Duke University(デューク大学)との共同研究成果「全ての説明・アクションの可能性を提示するAI技術」と、Indian Institute of Science(インド理科大学院)との共同研究成果「複雑な要求仕様を満たすAIモデル生成技術」が採択され、「NeurIPS 2022」にて発表をします。
NeurIPS 2022の概要
- 学会名:Neural Information Processing Systems(NeurIPS)
- 開催日:2022年11月28日~12月9日
- 開催場所:米国ルイジアナ州ニューオリンズ
- ①論文タイトル:Exploring the Whole Rashomon Set of Sparse Decision Trees
- (著者)富士通:高木 拓也
デューク大学:Rui Xin, Chudi Zhong, Zhi Chen, Cynthia Rudin
ブリティッシュコロンビア大学:Margo Seltzer
- ②論文タイトル:Cost-Sensitive Self-Training for Optimizing Non-Decomposable Metrics
- (著者)富士通:竹森 翔、河東 孝、梅田 裕平
インド理科大学院:Harsh Rangwani, Shrinivas Ramasubramanian, Venkatesh Babu Radhakrishnan
① 全ての説明・アクションの可能性を提示するAI技術について
Exploring the Whole Rashomon Set of Sparse Decision Trees
富士通とデューク大学は、AIモデルからデータを説明する際にユーザーが重要な説明を見逃さず発見を導く技術を開発しました。
データから構築できるAIモデルとして、モデルの動作や予測の生成方法などを説明できるホワイトボックスモデルを用いることがあります。しかし、その説明自体が誤った説明を導いてしまう、また、ユーザーにとって分かり切っている知識であれば、新たな知識発見やアクションにつながらないなどの問題がありました。
機械学習分野では、高精度に予測できる一方で異なる説明を与える複数のモデルが存在する状況がよくあります。このようなモデルの集合は、芥川龍之介の小説を原作にした映画『羅生門』において、ひとつの事象から複数の証言や解釈が得られるという状況になぞらえ、「羅生門集合」と呼ばれています。しかし、与えられたデータから「羅生門集合」を構築することは、計算時間が莫大にかかるため実現できていませんでした。
今回、最も高い精度を持つモデルとほとんど変わらわない精度を持つモデルを全て列挙する決定木モデルの「羅生門集合」を構築することにより、全ての説明・アクションの可能性を提示するAI技術を開発しました。この技術は、候補となる全てのモデルを実際に構築するのではなく、既に構築済みのモデルより精度が大幅に悪くなることが確実なモデルを効率的に除外し、「羅生門集合」を高速に列挙します。
これにより、複数のモデルの説明を統合し、モデルの違いに左右されない説明を抽出できるだけでなく、多くの説明からユーザーが知らない知識やユーザーが望む特徴量を用いた説明を抽出するなど、細かなニーズにも対応できます。
今後、マーケティングではお客さまによる想定外の行動や新ルールの発見、生産現場では高い生産効率に繋がる生産ラインの特徴を発見するなど、知識発見分野での活用拡大に取り組んでいきます。
- 技術の詳細:NeurIPS2022にて「決定木の羅生門集合構築AI技術」について発表します
(富士通研究所 TECH BLOG)
開発者コメント

デューク大学
Rui Xin
(ルイ・シン)
デューク大学
Chudi Zhong
(チュディ・ヂィオン)
デューク大学
Zhi Chen
(ジー・チェン)
富士通 人工知能研究所
高木 拓也
(Takagi Takuya)
ブリティッシュコロンビア大学
Margo Seltzer
(マーゴ・セルツァー)
デューク大学
Cynthia Rudin
(シンシア・ルーディン)
我々のプロジェクトでは、人間の発見プロセスをAIで実現する技術の開発に取り組んでいます。今回の技術は説明可能なAIから、新たな発見へ導くことを可能にする重要な成果となります。今後は本技術をさらに発展させ、幅広い領域の発見プロセスをAIにより飛躍的に向上させるサービスを展開することで、社会に貢献していきます。
② 適合型AIモデル生成技術について
Cost-Sensitive Self-Training for Optimizing Non-Decomposable Metrics
富士通とインド理科大学院(IISc)は、ユーザーの求める複雑な仕様を自動で満たす深層学習モデルを作成する技術を開発しました。
深層学習を含む機械学習では、例えば不良品の検出率を最大にするなどのユーザーが望む仕様をAIに指示し、入力したデータの中からユーザーの求める仕様が実現できるような法則をAIが学習します。
しかし、近年ユーザーが深層学習に対して求める仕様は、誤検出率を一定以下に抑えたうえで検出率を最大化するなど複雑化してきています。そのような複雑な仕様をそのままAIに指示した場合は、微分不可能性と言われるデータから法則を探すことができなくなる状況になるため、AIが法則を学習することができません。そのため、従来ではユーザーの求める仕様をAIが法則を探すことができるものに妥協して指示しモデルを作成していたため、ユーザーの求める仕様を適切に満たすモデルを作成することができていませんでした。
今回、IIScの深層学習に関する高度な知見と富士通が開発していた適応型AI技術の知見を組み合わせ、深層学習モデルに学習させる過程で妥協した仕様を本来の仕様に近づくように指示の修正を繰り返すことで、最終的に求める仕様となるように学習させる技術を開発しました。これにより、従来は直接構築することが困難であった複雑なユーザーの仕様を実現する深層学習モデルを構築することが可能になりました。
今後は、当技術を製造分野やヘルスケア分野へ活用する検討に取り組んでいきます。
- 技術の詳細:NeurIPS2022にて「最適化が困難な指標のためのコスト考慮型自己訓練学習手法」について発表します
(富士通研究所 TECH BLOG)
開発者コメント

インド理科大学院
Harsh Rangwani
(ハーシュ・ラングワニ)
インド理科大学院
Shrinivas Ramasubramanian
(シュリニヴァス・ラマシュブラマニアン)
富士通 人工知能研究所
竹森 翔
(Takemori Sho)
富士通 人工知能研究所
河東 孝
(Kato Takashi)
富士通 人工知能研究所
梅田 裕平
(Umeda Yuhei)
インド理科大学院
Venkatesh Babu Radhakrishnan
(ヴェンカテッシュ・バブ・ラダハクリシュナン)
我々のプロジェクトでは、共同研究を通じて環境やユーザーが求める仕様の変化に高性能に対応する最先端のAI技術の研究開発を行っています。今回の技術はユーザーの求める仕様通りの深層学習モデルを作成する技術ですが、この範囲にこだわらず、環境やユーザーの要望の変化に対応しながら社会課題を解決する技術を開発していきます。最先端のAIに関する研究成果を難関国際会議などで発表し、幅広い領域のサービスに適用を進めることで社会に貢献していきます。
関連情報
・インドに新たな研究拠点を設立し、インド工科大学ハイデラバード校やインド理科大学院と先端AI技術の共同研究を開始
(2022年4月18日プレスリリース)
本件に関するお問い合わせ
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