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八木橋ゼミナール 第12回 「自治体におけるパーソナルデータ」(活用編)

今回のテーマは、「パーソナルデータ」の続編です。
パーソナルデータのデータ活用推進のキーワードである「PDS(パーソナル・データ・ストア)」や「情報銀行(インフォメーション・バンク)」などの状況について、解説をしましょう。
今回は、マイナンバー制度の利用拡大(本ゼミナールの第2回第3回を参照)にはじまる、政府の取組等について、概ね時間順に、動きを説明していきます。2015年の「代理機関」の提案から今まで、「情報信託機能」なども新たに登場し、分野も健康医療から民間まで広がっています。
説明の範囲が広いので、以下、ゆっくりと読んでください。

なお、PDSや情報銀行等は、ルーツや経緯が異なるものが混在して、検討に取り込まれています。
それぞれの概念や動向等については、次回に紹介します。

2018年4月27日掲載

マイナンバー制度の利用拡大と「代理機関」の提案

マイナンバー制度の利用拡大について、健康医療分野では、次の3ステップで説明されています。(注1)

「第1ステップ」の利用拡大が個人情報保護法もあわせた法改正(2015年9月改正法成立)。

「第2ステップ」がマイナンバー制度を利用した「医療保険の資格確認」(2014年12月「中間まとめ」)

「第3ステップ」が資格確認の仕組みを利用した「医療連携や研究分野に番号を活用」とされ、その「地域創生に必要となる医療ICT基盤(案)」として、「代理機関」が提案されました。

提出された「医療ICT基盤の構築」及び「次世代医療ICT化推進」を実現することを目的とした協議会の第1回の議事(注1)で、「次世代医療ICT基盤の構築で要になる「代理機関」の機能が極めて重要」と提示されています。

(注1) 内閣官房 IT総合戦略室「IT戦略本部における取組について」 健康・医療戦略推進本部 次世代医療ICT基盤協議会(第1回)IT総合戦略室資料Open a new window(2015年4月2日)

この「代理機関」については、健康・医療分野だけではなく、「IT利活用基盤」として、医療・農業・金融・就職等のサービスにおいて、新たな情報流通と付加価値提供の仕組み(注2)が想定されていました。

提出された新陳代謝・イノベーションWGで、「代理機関」について、向井内閣官房内閣審議官(当時)が説明(注2)しています。

「情報をどうやったら流通させることができるかということで、本人に代理して情報を流通させるものが必要なのではないか。分野によって若干異なるが、例えば医療などは、公的に情報を集める必要がある可能性が高いので、支払基金のような機関が取り扱うことで実現可能と思っているし、一方で、民間の情報のやりとりについては、民間の情報のやりとりを促進するような法整備が必要なのではないかと考えている。」

なお、新戦略推進専門調査会のマイナンバー等分科会(注3)でも同様の検討がなされています。

(注2) 内閣官房 IT総合戦略室「IT利活用促進に向けた取組について」 産業競争力会議 新陳代謝・イノベーションWG(第8回)資料3Open a new window(2015年4月28日)

(注3) 新戦略推進専門調査会 マイナンバー等分科会(第9回)資料5Open a new window(2015年5月20日)

この検討は、「新たなIT利活用環境の整備」として、「世界最先端IT国家創造宣言(2015改定)」(注4)に反映されました。以下に抜粋します。

「マイナンバー制度やパーソナルデータに関する法律の見直し等により、様々な分野において「IT利活用基盤」が整いつつある中、これらの基盤を最大限に活用し、国民生活の安全・安心・公平・豊かさの実現と産業振興を推進する。そのため、安全・安心に情報の流通を担う代理機関(仮称)の創設、マイナンバー制度等を活用した各ライフイベントに応じた申請等の手続の電子化・ワンストップ化、シェアリングエコノミー等の新たな市場を活性化させるための措置について検討を行い、次期通常国会から順次、必要な法制上の措置等を講ずる。」

(注4) 世界最先端IT国家創造宣言(2015改定版)p.9Open a new window(2015年6月30日)

「代理機関」は次世代医療基盤・匿名加工医療情報へ

この情報基盤の検討について、IT総合戦略本部の規制制度改革分科会に新しく「情報通信技術(IT)の利活用に関する制度整備検討会」(注5)が設置され、関係者ヒアリング、パブコメが行われました。

検討の過程で、代理機関(仮称)のあり方、類型化、法整備の必要性、認定基準などが検討されました。その結果は、「中間整理」(注6)としてパブコメも反映してまとめられました。

このIT総合戦略本部の検討に併行して、冒頭に登場した、健康・医療戦略推進本部の次世代医療ICT基盤協議会が検討を進めました。検討の状況が、未来投資会議(注7)で報告されています。

(注5) 情報通信技術(IT)の利活用に関する制度整備検討会(第1回)Open a new window(2015年10月30日)

(注6) 情報通信技術(IT)の利活用に関する制度整備検討会 第Ⅱ期中間整理Open a new window(2016年5月20日)

(注7) 内閣官房 健康・医療戦略室「次世代医療ICT基盤の構築-次世代医療ICT基盤協議会の議論の状況」 未来投資会議 構造改革徹底推進会合「医療・介護-生活者の暮らしを豊かに」会合(第4回) 内閣官房(健康・医療戦略室)提出資料(1)Open a new window(2016年12月7日)

ここで、「代理機関」についての検討の結果が「とりまとめ」(注8)られました。以下、「はじめに」からの抜粋です。

「日本再興戦略2016において、「医療等分野の情報を活用した創薬や治療の研究開発の促進に向けて、治療や検査データを広く収集し、安全に管理・匿名化を行い、利用につなげていくための新たな基盤として「代理機関(仮称)」を実現するため、次世代医療ICT基盤協議会等において「代理機関(仮称)」に係る制度を検討し、その結果を踏まえて、来年中を目途に所要の法制上の措置を講じる。」こととされた。このため、次世代医療ICT基盤協議会のもと、この医療等情報の利活用を推進するための新たな基盤の在り方について検討を行った。」

とりまとめ本文では、「代理機関」という呼称は無くなります。「医療等情報の利活用を推進するための新たな基盤」として、「高い情報セキュリティを確保し、十分な匿名加工技術を有するなどの一定の基準を満たし、医療等情報の管理や利活用のための収集・加工(匿名化を含む)・提供を安心・確実に行うことができる組織」を公的に認める仕組みを設け、認定を受けた組織を「医療情報匿名加工・提供機関(仮称)」とする制度が提案されました。

これを法制化したのが「次世代医療基盤法案」(注9、本ゼミナールの第10回参照)です。

医療分野における「代理機関」の名称は、「認定匿名加工医療情報作成事業者」となりました。

(注8-1) 次世代医療ICT基盤協議会 医療情報取扱制度調整WG とりまとめOpen a new window(2016年12月27日)
(注8-2) 内閣官房 健康・医療戦略室「とりまとめの概要」「とりまとめ関係資料」 地方公共団体が保有するパーソナルデータに関する検討会(第3回)資料3-1、3-2Open a new window(2017年1月31日)

(注9) 医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関する法律(次世代医療基盤法案)Open a new window(2017年5月12日公布)

「PDS」と「情報利用信用銀行制度(いわゆる情報銀行)」

医療分野以外の「代理機関(仮称)」の検討はどうなったのでしょうか。

この情報基盤の検討について、前述した情報通信技術(IT)の利活用に関する制度整備検討会の結果の「中間整理」(注6再掲)で、「将来に向けた検討」として、以下の3点が整理されました。

  1. 「本人が自らの意思で、自らのデータを保有する事業者から他の事業者に自らのデータを流通させる仕組み」
    仕組みとして、PDS(注10)の技術面の動向を踏まえつつ、PDSに関する課題の抽出、解決策を検討。

(注10) Personal Data Store:個人が自らのデータを蓄積・管理、活用するための仕組み。

  1. 「個人に関するデータを安全・安心に事業者等に預けて活用する仕組み」
    今後、個人が管理するデータが膨大になり、そのデータを事業者等に預けて本人のために活用する事業形態が出現することが想定(情報利用信用銀行制度)。その制度的課題、仕組み等について将来に向けた検討。

(注11) 情報利用信用銀行: 個人から情報のコントロールを預託され、個人に代わってデータを蓄積・管理、活用し、個人に便益を還元する仕組み。

  1. 「データ取引の市場の形成」 データ取引を提供するサービスについては、そのビジネスモデルも含め今後の進展状況を注視しつつ、ガイドラインの策定や、健全なデータ取引の市場形成に必要な制度のあり方を検討。

この結果は、「世界最先端IT国家創造宣言(2016改定)」(注12)に反映されました。重点項目「データ流通の円滑化と利活用の促進」で、医療分野等の「代理機関(仮称)」に並んで、次の記載がされます。

「データ流通における個人の関与の仕組み(個人が自らのデータの提供先等を管理できるシステム)や、健全なデータ取引の市場形成の在り方、個人が自らのデータを信頼できる者に託し本人や社会のために活用する等の新たな仕組み(情報利用信用銀行制度構想(いわゆる情報銀行))について、データを活用する事業者の権利関係(知的財産権等)にも配慮しつつ、技術・制度の両面から、課題の抽出や解決策の検討を推進。」

(注12) 世界最先端IT国家創造宣言(2016改定版)p.14Open a new window(2016年5月20日)

データ流通環境整備そして「情報信託機能」の認定へ

IT総合戦略本部において、前述の「情報通信技術(IT)の利活用に関する制度整備検討会」、「パーソナルデータに関する検討会」等が再編され、新たに「データ流通環境整備検討会」が置かれ、前述の3点の検討を行う「AI、IoT時代におけるデータ活用WG」(注13)が設置されました。(同時に「オープンデータWG」も設置されました。)

この検討の結果は、半年後に「中間とりまとめ」(注14)にまとめられました。

そして新たな成長戦略「未来投資戦略2017」(注15)で、具体施策「データ利活用基盤の構築―パーソナルデータの利活用」に組み込まれました。以下に抜粋します。

「個人の関与の下でパーソナルデータの流通・活用を進める仕組みであるPDS(Personal Data Store)や情報銀行、データ取引市場等について、その具体的なメリットの「見える化」に配慮しつつ、観光や医療・介護・ヘルスケア等の分野における官民連携実証事業の推進等を通じて先駆的な取組を後押しするとともに、具体的プロジェクトの創出に取り組む。あわせて、こうした実証事業や諸外国における検討状況等を踏まえてデータ流通・活用を更に促進するため、情報銀行やデータ取引市場について、個人の関与の下で信頼性、公正性、透明性を確保するための制度の在り方等について検討し、本年中に結論を得る。」

(注13) データ流通環境整備検討会(第1回)Open a new window(2016年9月16日)

(注14) AI、IoT時代におけるデータ活用WG「中間とりまとめ」データ流通環境整備検討会(第2回)Open a new window(2017年3月15日)

(注15) 「未来投資戦略2017-Society5.0 の実現に向けた改革-」p.83Open a new window(2017年6月9日)

また、これに並行して、総務省の諮問機関である情報通信審議会が、「IoT/ビッグデータ時代に向けた新たな情報通信政策の在り方」について検討し、2017年2月から、情報通信政策部会 IoT政策委員会 基本戦略WGの下に「データ取引市場等サブWG」を設け、データ取引市場を運営する者及びそこに参加するプレイヤーである情報信託機能を担う者に関するルールの在り方について検討を行い、その結果が「第四次答申」(注16)として、次のようにまとめています。

「パーソナルデータの活用と個人情報のコントローラビリティの確保を同時並行的に促すためには、パーソナルデータを個人の許諾したルールに沿って提供し対価を得る代理人的機能として、いわゆる「情報銀行」(情報信託機能)が検討されている。総務省では、情報信託機能を有する「IoTおもてなしクラウド事業」(注17)が議論されている。実証実験を通じて、その機能検証を行うとともに、情報の信託先である情報信託機能の信頼性担保の必要性、第三者提供に係る同意取得の在り方に関する制度上の課題が明確化された。」(同 p.13-14)

「検討の結果、データ取引市場及び情報信託機能を担う者それぞれについて、一定の要件を満たした者を社会的に認知するため、民間の団体等によるルールの下、任意の認定制度が実施されることが望ましいという結論を得た。こうした検討結果を踏まえ、情報信託機能については、必要なルールを更に具体化するための実証事業を継続するとともに、2017年中に、任意の認定制度やルールの在り方について検討し、年内に認定業務に着手することを目指す。データ取引市場については、2017年中に、取引市場に係るルールの形成及びそれに基づく認定業務に着手することを目指す。」(同 p.17-18)

これらを受け、総務省および経済産業省で、「情報銀行」について民間団体等における任意の認定制度を創設することを目指し、「情報信託機能の認定スキームに関する検討会」(注18)が立ち上げられています。

(注16) 情報通信審議会 第四次中間答申(2017年7月20日)Open a new window

(注17) いわゆる「情報銀行」(情報信託機能)に係る実証実験として、2015年度より継続して実施。観光分野において、機能検証とともに情報銀行の信頼性担保の必要性、第三者提供に係る同意取得について制度上の課題を明確化。
(注17-1) 「総務省におけるデータ活用促進の取組」データ流通環境整備検討会 AI, IoT時代におけるデータ活用WG(第6回)資料1Open a new window(2016年12月9日)
(注17-2) なお、最新の状況は、総務省「IoTおもてなしクラウド事業について」 総務省「2020年に向けた社会全体のICT化推進に関する懇談会 都市サービス高度化WG(第8回)資料8-1Open a new window(2017年11月6日)

(注18) 総務省「パーソナルデータの流通・活用について(「情報銀行」に関する検討の紹介)」Open a new window(2017年12月7日)
経済産業省 IoT推進コンソーシアム(第18回データ流通促進WG)「Society5.0・Connected Industriesを支えるルールの高度化」Open a new window(2017年12月7日)

富士通の取組

以上のような経過で、検討が現在に至っています。

富士通は、行政・民間に向けて、こうしたPDSや情報銀行への取り組みを進めてきています。
以下に、PDS製品と実証の取組の一部を紹介しておきます。内容については、次回に解説しましょう。

データ活用社会の推進、デジタル社会への変革が進んでいきます。ひきつづき、注視していきましょう。

【PDS製品】
FUJITSU Cloud Service K5 パーソナルデータを管理「Personiumサービス」

【PDSを実現する「おもてなしクラウド」実証事業】
PRESS RELEASE 「利用者自身の属性情報を仲介するプラットフォーム「OPaaS.io」の運用開始 - おもてなしサービスの実現を支援」 一般社団法人IoTサービス連携協議会, 富士通ほかOpen a new window(2017年2月22日)

【情報銀行の実証事業】
PRESS RELEASE 「パーソナルデータを活用した情報銀行の実証実験を開始」 富士通株式会社,イオンフィナンシャルサービス株式会社Open a new window(2017年7月14日)

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