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八木橋ゼミナール 第11回 「自治体の官民データ活用」

今回のテーマは、「パーソナルデータ」の続編の予定でしたが、それに先立ち、「官民データ活用推進計画」、「IT新戦略」「デジタル・ガバメント実行計画」「オープンデータ推進ガイドライン」などの新たな動きについて、紹介します。

2018年2月15日掲載

地方の官民データ活用推進計画に向けて

「世界最先端IT国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」(以下、略称「官民データ計画」、2017年5月決定)に従い、地方公共団体は「官民データ活用推進計画」を策定すること(都道府県は2020年度末までの義務規定、市町村は努力義務)とされています。

このため、「地方公共団体の官民データ活用推進計画策定の手引(注1)が、「計画の雛形」(都道府県版37頁、市町村版51頁)を含めて公表されました。

(注1) IT戦略本部 地方の官民データ活用推進計画に関する委員会「とりまとめ等」Open a new window(2017年10月10日)

全体のトーンは、各版の「はじめに」の末尾に、次のように書かれています。

「本手引を御提供することにより、地方公共団体において、効率的に計画策定に取り組んでいただくとともに、地方の特性や実情に合わせて、本手引で紹介した施策から必要に応じ任意に選定して取り組んでいただける(スモールスタート)ことを期待しています。」

団体ごとの個別施策の計画策定の前提である、5分類の「基本的な方針」について、以下に示しておきます。

  1. 手続における情報通信技術の利用等(オンライン化原則)
  2. 官民データの容易な利用等(オープンデータの推進)
  3. 個人番号カードの普及及び活用(マイナンバーカードの普及・活用)
  4. 利用の機会等の格差の是正(デジタルデバイド対策等)
  5. 情報システムに係る規格の整備及び互換性の確保等(標準化、デジタル化、システム改革、BPR)

IT新戦略の策定に向けた基本方針

こうした基本の方針に関連して、政府が「IT新戦略」を策定する方針を示しました。
これは、中央の関係省庁については、政府CIOのもと、「官民データ計画」により、進捗しているところ、国民目線に立った行政サービスのデジタル改革について、「民間部門や地方の取組の広がりへとつなげていくべく、IT新戦略を策定する」(注2)としたものです。

(注2) IT戦略本部 (第72回)「IT新戦略の策定に向けた基本方針について」Open a new window(2017年12月22日)

示された基本方針は短い(4頁)ですが、その概略の内容を以下に紹介します。

1. 行政サービスのデジタル改革断行(デジタル・ガバメント実行計画の決定、法整備等)

(1) 行政サービスの100%のデジタル化
(具体的な取組として、個人のライフイベント(転居、死亡・相続等)、法人のイベント(法人設立等)、社会保険・税手続における提出書類のデジタル化・民からのデータ連携等)

(2) 行政保有データの100%のオープン化
(観光・移動分野で官民ラウンドテーブルを開催)

(3) デジタル改革の基盤整備
(基本ルールの構築(語彙・コード・文字等の標準化)、医療・農業分野でのデジタル改革・データ連携)

2. 民間部門のデジタル改革及びIT・データ活用ビジネスの推進
(農業・物流・港湾等の連携プロジェクト、データを用いた健康・病気予防の強化の関係省庁連絡会議の開催)

3. 地方のデジタル改革(上記1項の取組の地方への展開として、以下の取組を行う)

(1) 地方の行政サービスの原則デジタル化

(2) オープンデータの推進・活用
(原則オープン化)

(3) IT・データ活用による行政・生活サービスの高度化
(自動運転移動サービス、シェアリングエコノミーなど)

この基本方針に沿って、オープンデータのガイドラインや推奨データセットの策定(注3、後述)、次項の「デジタル・ガバメント実行計画」の策定、「官民ラウンドテーブル」の開催(注4)、など、順次、推進されています。

(注3) IT戦略本部 データ流通環境整備検討会「オープンデータ関連資料」Open a new window(2017年12月22日)

(注4) IT戦略本部 データ流通環境整備検討会「オープンデータ官民ラウンドテーブル(第1回)Open a new window(2018年1月25日)

このIT新戦略については、IT戦略本部の専門調査会の下に「IT新戦略起草委員会」を設置し、夏までに策定するとしています。

デジタル・ガバメント実行計画

デジタル・ガバメント推進方針(2017年5月決定)の方向性を具体化し、実行する「デジタル・ガバメント実行計画(注5)が決定、計画期間は2018年1月16日から2023年3月31日までとされました。

(注5) IT戦略本部 eガバメント閣僚会議「デジタル・ガバメント実行計画」Open a new window(2018年1月16日)

実行計画には、具体的な取組と計画が示されています。
以下、一部を抜粋して紹介します。

第3章「利用者中心の行政サービス改革」のところに記述された「具体的な内容」について紹介しましょう。

3.2 横断的サービス改革(行政サービスの100%デジタル化)

「各府省は、所管する各手続について、以下の4項の見直しを検討する。見直しに当たっては法令の改正まで含めた検討を行い、一括整備法案の策定等の所要の措置を講ずる。」

(1) 業務改革(BPR)の徹底、制度そのものの見直しに取り組む

(2) 手続オンライン化の徹底、手続きの廃止を含む制度・法令の見直し、民-民手続におけるオンライン化を推進、官民双方が社会全体のデジタル化に向けた意識改革を行っていく。

(3) 添付書類の撤廃、住民票・戸籍証明、登記事項証明書(商業法人)の添付省略

(4) ワンストップサービスの推進、住所変更手続きの廃止、介護ワンストップ、死亡・相続ワンストップ

3.3 個別サービス改革
(15項目が提示され、別紙「個別サービス改革事項(詳細)」が添付されています)

「横断的な取組に加え、国民・事業者等に対して大きな影響を持つ重要分野については、政府全体で進めるべき取組として先行的にサービス改革を実施する。15の各施策について、個別サービス改革を推進する。」

なかでも、自治体に関連が深そうな個別サービスでは、以下のようなものがあります。

  • 項1) 金融機関×行政機関の情報連携(預貯金等の照会)
    (別紙「詳細」に、「2018年夏を目途に実証実験、2019年前半に方向性をとりまとめる」とあります)
  • 項5) 住民税の特別徴収税額通知の電子化等
  • 項6) 電子調達サービスの利便性向上
  • 項9) 旅券発給申請方法等のデジタル技術による多様化
  • 項12) 公的年金関連サービスのデジタル化
  • 項15) 自動車保有関係手続のワンストップサービスの充実 など

第6章「地方公共団体におけるデジタル・ガバメントの推進」では、以下の5項が、KPIとともに示されています。

(1) 官民データ活用推進計画の策定
KPI: 都道府県における官民データ活用推進計画の策定状況(2020年度末までに全都道府県での計画策定を達成)

(2) 行政手続のオンライン利用促進
KPI: 地方公共団体におけるオンライン利用促進に向けた方策の取りまとめ(2018年3月まで)

(3) クラウド利用の推進
KPI: クラウド導入市区町村数(2017年度末までに約1,000団体)
KPI: 地方公共団体の情報システムの運用コストの圧縮(3割減)

(4) オープンデータの推進
KPI: 地方公共団体におけるオープンデータ取組率(2020年度までに100%)

(5) 情報セキュリティの確保
KPI: ガイドラインの改定
KPI:各地方公共団体における情報セキュリティポリシーの見直しの際の支援

今後の一層の具体化とそれぞれの個別事項の推進について、留意が必要です。

地方公共団体オープンデータ推進ガイドライン(改定版)推奨データセット

「官民データ計画」で、地方公共団体が保有するデータのオープンデータ化の推進に取り組むことが示されており、その一環で、オープンデータのガイドライン等が改定、「推奨データセット」が新たに策定されました。(注3、前出)

(注3、再掲) IT戦略本部 データ流通環境整備検討会「オープンデータ関連資料」Open a new window(2017年12月22日)

提示されたものは、以下の改訂版3編と新規の4編です。

  • 「地方公共団体オープンデータ推進ガイドライン」(概要、本編)【改定】
  • 「オープンデータをはじめよう~地方公共団体のための最初の手引書~」【改定】
  • 「オープンデータをはじめよう~簡易手引書~」【新規】
  • 「推奨データセット」(項目定義書、フォーマット標準例、活用が見込まれるアプリ例)【新規】

その他の「官民データ活用社会」に向けての留意事項

前回の「個人情報保護」の説明で触れなかった、個人情報保護法で除外されていた「地方公共団体」については、地域の特性に応じ、別途それぞれの団体の条例によって、個人情報の取扱いに関する規律が定められることになっています。

都道府県、市町村、特別区、一部事務組合や広域連合など、各地方公共団体が制定することとなっています。

この改定については、個人情報保護法、行政機関個人情報保護法の改正に準じた見直し(注6)が必要です。

(注6) 総務省 「地方公共団体が保有するパーソナルデータの効果的な活用のための仕組みの在り方に関する検討会(第1回)」(2017年7月6日)(資料3)「個人情報保護条例の見直し等について」(2017年5月19日通知)の概要Open a new window

この件に関しては、「官民データ活用推進基本法」で、「国の施策と地方公共団体の施策の整合性の確保」等(第19条)が規定されているところです。
各団体がどのように対応が進んでいるか、それぞれの地方公共団体の個別の状況になります。

さらに、医療機関の対応等については、都道府県と市町村だけではなく、一部事務組合や広域連合などの特別地方公共団体が経営体の場合についても、同様の条例の整備(注7)が必要になります。

(注7) 「個人人情報保護法制2000個問題」内閣府 規制改革推進会議投資等WG 第3回Open a new window(2016年11月15日)

全国規模で考えれば、前回(注8)紹介した「匿名加工医療情報」の仕組み(注9)が、実際に動き出す時までには、各団体の整備が出来ていれば良いということかもしれません。

(注8) 第10回ゼミナール「自治体におけるパーソナルデータ」参照

(注9) 内閣官房 「医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関する法律」(次世代医療基盤法案)Open a new window(2017年5月12日公布)

拡がっていくテーマ

民間も含めたデータ活用推進のキーワードである「パーソナルデータストア(PDS)」「情報銀行(インフォメーションバンク)」「情報信託機能」などについては、次回に解説しましょう。

富士通は、行政・民間に向けて、こうしたPDSや情報銀行の対応を含めた、広範なデータ活用社会の推進のための取り組みを進めています。
マイナンバー制度を基盤にした、デジタル社会への変革が進んでいきます。ひきつづき、注視していきましょう。

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