「BtoBのECサイト」とは、法人向けのECサイトのことです。「BtoBのECサイト」の活用法について、富士通総研 田中 秀樹が解説します。
ECサイトと言うと楽天やAmazonのような消費者向けのECサイト(BtoC)をイメージするかもしれませんが、市場規模は法人向けのECサイト(BtoB)の方がBtoCを遥かに上回っています。今までの営業スタイルを変えてBtoBのECサイト構築に取り組む企業が増えてきました。
経済産業省の推計によると、2011年のBtoBの EC市場規模(インターネットを対象とした狭義の市場)は171兆4,070億円で、BtoCの8兆4,590億円と比べて約20倍の巨大市場となっています。
このように市場規模が大きい理由は、BtoBでは原材料や仕入れ商品等の調達で、EDI(Electronic Data Interchange)と呼ばれる受発注の情報を電子的に交換する仕組みが利用されているためです。決まった取引先と決まった商品を受発注するような固定的な取引では、効率化のためにEDIが導入されます。一方、調達頻度が低いものや、消耗品、工具等の間接材などの取引は従来セールスパーソン経由で取引する形が主流でしたが、徐々にECサイトを利用した取引が増えてきました。では、どのようなECサイトがあるのでしょうか。
まず一例として、「MonotaRO.com」は工場などで使われる間接資材を販売するECサイトです。ネジ1本から工具、梱包用品、事務用品に至るまで、工場や現場で必要になる300万アイテムを品揃え・販売しています。このECサイトを利用するユーザー数は100万ユーザーを超え、売上は2009年の142億円が2012年には287億円と3年で2倍に拡大しています。
BtoBでは調達側の業種や部署を絞り、その担当者が必要とするものを揃えたワンストップを強みにしたECサイトが存在感を示し始めました。MonotaRO.com以外では、総務関連の「アスクル」や、アパレル専門の仕入れサイト「Buyers Club」、美容業界向けの「BEAUTY GARAGE」などがあります。
このようなECサイトを主力としてビジネスを行う企業だけでなく、メーカーや卸がチャネルの一つとしてECサイトに乗り出すケースも増えてきました。大口と主力商品はEDIで取引している企業でも、小口や消耗品はFaxや電話で受注している場合があります。ただ、Faxや電話では手間がかかりミスも発生しやすいので、この業務を効率化するためにEDIとは異なる仕組みとしてECサイトを構築する企業が増えています。
BtoBでECサイトの利用が増えている背景には、調達側の変化があります。皆さんは欲しい商品があった時、インターネットで商品情報を見たり、価格を調べることがあるかと思います。これと同じことをBtoBの調達担当者も行うようになりました。
従来、BtoBの調達においてはセールスパーソン経由で取引する形が一般的でした。電話だけでは信頼が得られず、遠くであっても面談するのが当たり前といった商習慣の業界もありました。ただ現在は業務を効率的に行うため、Webサイトを使って商品情報を探す調達担当者が増えています。
Web広告研究会の調査結果によると、BtoBサイト閲覧後の変化として、「信頼感が増した(25.2%)」、「たびたびサイトを訪問するようになった(16.5%)」といった回答が上位に入っています。このことからも、Webサイトがその後のビジネスに大きな影響を与えていることが分かります。
サイト閲覧後の行動
公益社団法人日本アドバタイザーズ協会Web広告研究会「BtoB企業サイト目的別満足度評価」より作成
BtoBのECサイトを構築するにはどのような点に気をつければよいのでしょうか。BtoBの取引といっても、調達を決めるのは企業内の個人です。このため、BtoCのアプローチを応用することができます。
BtoCのサイトを企画する際は、誰(ターゲット)をどんな状態に導くのかを決め、誘導のシナリオを考えていきます。その際、ペルソナ(Webサイトを利用する仮想の人物像のこと)を設定して消費者の立場から必要なコンテンツやサービスを考えることが重要になります。BtoBのECサイトを企画・構築する際もペルソナから始めてみてください。ただ、BtoBのECサイトの場合は調達プロセスに複数の階層の人が関わることが多いので、ペルソナも複数の役職や意思決定者を想定するとより良いサイトが出来るでしょう。
商品や技術力に自信があったり、セールスパーソンによる営業中心の会社だと、紙のカタログをそのままWebサイトの商品ページにしてしまうケースも見られるようです。その延長でECサイトを構築しても大きな効果は望めないでしょう。調達担当者の立場で必要なコンテンツやサービスを考え、ECサイトを企画・構築してください。
(株式会社富士通総研 田中 秀樹)
株式会社富士通総研(FRI)
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