ビジネスを加速させる富士通のAI技術をご紹介

Fujitsu ActivateNow 2022 AIがテーマのセッション特集

私たちの生活やビジネスに欠かせない役割を担い、DXやSXのコア技術となりつつあるAI。
本記事では、Fujitsu ActivateNow 2022で行われた「富士通のAI技術」をテーマにしたセッションについて2つご紹介します。

目次
    1. ビジネスを加速させる富士通のAI技術
    2. 「予測型経営」 AIを活用した意思決定の高度化

ビジネスを加速させる富士通のAI技術

私たち富士通は、5 Key Technologiesという名のもと、5つの技術領域に研究開発リソースを集中することを宣言しています。それぞれの技術領域での研究開発はもちろんのこと、5つの技術領域を組み合わせて包括的な価値提供ができるように技術のインテグレーションも進めています。

富士通の5 Key Technologies

特にAIは我々の生活やビジネスに欠かせない役割を担う、DXやSXのコア技術であり、富士通の5つの技術領域の中でも中核をなしています。また、富士通のAIは他の技術領域と組み合わせることで、さらなる大きな価値を創出できる点もポイントです。

富士通株式会社 フェロー 富士通研究所 研究本部長の岡本 青史は、講演の中でAIの中でも特徴的な3つの技術である「ヒューマンセンシング」、「説明可能なAI」、そして「因果発見」について説明しました。

富士通のAI技術

1.Human Sensing

ヒューマンセンシング技術は映像から人の行動を認識するDeep Learningをベースとしたものですが、このDeep Learningには以下の2つの課題があります。

①学習データの準備に多大なコストと時間を要する
②本当に現場で使えるようにするためのカスタマイズが難しい

これらの課題で現場適用を断念したユーザの方も多いのではないでしょうか。富士通は、人の行動は約100種類の基本動作から構成されるという研究成果に着目し、まずこの100種類の基本動作を高精度で認識する技術を作りました。そして、基本動作を自在に組み合わせることで様々な人間の行動の推定を可能にしました。すなわち、お客様は学習データを準備することなく、必要な行動認識ソリューションを簡単に短期間で導入することができるようになります。

  • スマートストア化事例
    店頭での人の動きを正確に認識できれば、例えば、買い物客が商品棚に手を伸ばした頻度を見える化し、最適なレイアウトや品揃え計画に活用したり、セルフレジにおける不正を検知したりできます。またお客様の購買の心理状態を把握することで最適な接客に役立てられる等、様々な効果を挙げることができます。

2.説明可能なAI (Wide Learning)

AIが何故その答えを出したのか、AIの判断根拠を人に分かり易く説明する技術は、AIの業務適用において極めて重要です。そこで富士通は説明可能なAIを発表し、研究開発、技術開発、適用実績を積み重ねてきました。この説明可能なAI(Wide Learning)はそれらを集結した技術で以下の2つの特徴を持っています。

①判断の根拠を網羅して重要なものだけを説明
②判断根拠を説明するだけでなく、どうすれば解決できるのか、最適なアクションを提示

  • 製造業での歩留まり改善の適用事例
    ものづくりの歩留まりに対しては長い年月をかけて改善を重ねるお客さまも多くいらっしゃいますが、Wide Learningを適用して仮説を網羅し、不良品の予測モデルを構築したところ、不良品の根本要因となる仮説がいくつも見つかりました。さらに、予測するだけでなく、不良品の発生を抑える機械制御の方法を提示・説明することにも成功しています。このように、富士通の説明可能なAIは、判断根拠を示すだけでなく、取るべき最適なアクションの提示・説明をも行うことができるのです。

製造現場以外にも、以下のように様々な領域で実績を有しています。

説明可能なAIの事例

3.因果発見

AIの技術の進展に伴い、AIは予測・認識ができるだけでなく、人が知りえないインサイト(洞察・見通し)の発見も可能になっています。富士通の因果発見は世界にも類のない2つの特徴を持っています。

①規模:従来の因果グラフは計算量の問題を抱えており、数百変数が限界。それと比べて富士通では数万変数の因果グラフを扱うことが可能。これにより発見の規模が格段に向上する。
②個別因果探索技術:従来の因果探索では当たり前の結果しか出てこないことが頻発する(=これではインサイトとは言えない)。富士通の技術では特定の条件下で現れる極めて重要な因果関係を探索することが可能。

  • ゲノム医療の事例
    がん細胞は、抗がん剤のような薬剤が投与され続けると耐性を獲得し、増殖・再発することがあります。薬剤耐性の原因を明らかにすることで、患者一人ひとりに対する薬剤の効果を特定することができるため、効果的な抗がん剤の開発が可能になります。しかし薬剤耐性の分析には膨大な計算が必要となります。我々は因果発見技術を富岳の上に実装し、従来では4000年かかると言われていた全遺伝子間の因果探索を1日で完了させ、これまでは知られていなかった遺伝子と薬剤耐性との間の因果関係を解明しています。

因果発見は、これ以外にも材料開発や金融などの多くの分野でさらなる貢献が期待されています。

「予測型経営」 AIを活用した意思決定の高度化

ここまで、主に事業面でのAI活用事例をご紹介してきましたが、経営においても重要なファクターとなって利用されているケースもあります。

不確実性、混雑性が増すVUCA時代(※1)で、適切な経営判断・意思決定ができることは、いち企業において極めて重要な強みとなります。Ridgelinez株式会社Business Science Principalの 野村 昌弘は、先が見通せない状況下でも、AIを活用して経営・意思決定の高度化を目指す取り組み「予測型経営」について紹介しました。

富士通グループが考える予測型経営

ここではAIによる予測支援事例を2点紹介します。

1.某電機メーカーの部門売上予測支援

一つ目は売上高の予測の事例です。実際のAI予測結果を見てみましょう。下の図は多くの人手を使って算出した売上見込み値とAIによる予測の比較です。わずかですがAIの方が精度高く予測できていることが分かります。ここで肝心なのは予測精度の正確さではなく、AIで予測した結果が社員を総動員して検討した結果と大差が無かったということです。つまり売上高予測をAIで代替してしまっても問題は無いのです。見込みの集計作業・算出をAIに置き換えることで、予算と売上予測のギャップについて、どのような施策を打つべきか等の検討に注力できるようになります。さらにシミュレーション等の機能を駆使すれば、より効果の高い施策立案の実行に注力することができるでしょう。

人手による売上高予測とAIによる予測の比較

2.衣料品を取り扱う製造小売店の商品管理支援

商品を売るためには、顧客が欲しいと思う商品を的確なタイミング・場所に配置・品揃えさせていることが大切です。このマッチング精度が高ければ高いほど、少ない在庫で売上を獲得でき、消化率向上にも繋がります。ここではAIによるビジネス全体の判断の自動化を実施しました。商品、店舗、顧客の特徴の抽出はもちろんのこと、期末に残りそうな在庫を見越した価格コントロール、商品企画段階における顧客マップと商品マップのニーズの一致などです。実現の肝は全自動化ではなく、自動化に適していない部分には重点的に人手をかけた点です。定番商品やメイン商材はお店の顔になる分、念入りにチェックしがちです。しかしそういった商品は自然に売れていきます。品揃えも充実している分、欠品も少ない特徴があります。ですから、ここはAIに任せてよいでしょう。それとは別の尖ったスタイルやスポット商品が結果としてチャンスロスや過剰在庫を生むケースがよくあります。ここには人手をかけて丁寧に行っていくことで全体として売上の最大化に繋げます。

商品管理サイクルの支援

さて、AI予測支援事例を2つご紹介しましたが、忘れてはならないのがAIを活用しても100%正しい先行きは分かりえないという点です。予測精度を高めることが最終目的ではなく、予測が出るのだから、それを活用して業務手法を変えるという考え方が重要です。
そして進め方のポイントは、利用シーンを描き、そこに必要なデータは何か、いかにして入手できるのか、データの管理方法、さらにデータを分析・活用できる組織人材に至るまで一連の設計を怠らないことです。またこのような取り組みをステップバイステップなアジャイルプロセスで行っていくことも、もう一つのポイントになります。

私たち富士通グループの業界専門家から分野専門家、そしてテクノロジーのエキスパートが一丸となって、「予測型経営」実現の支援をさせて頂きます。是非、皆さまのお役にたてれば幸いです。

  • ※1
    :VUCA(ブーカ)とは、「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性)」の頭文字を取った造語で、社会やビジネスにとって、未来の予測が難しくなる状況のことを意味する
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