社会・お客様の変化と富士通の変革
今年はCOVID-19による制約も少しずつ解除され、人々が直接会える機会も増えてきました。このように明るい兆しが出てきた一方で、地政学的リスクの高まりやインフレなどの新たな問題も発生しており、世界は依然、先の見通しがつかない不安定な状況が続いています。
人々が安心安全で豊かな生活をおくれる未来のために、国際社会で合意されたことが、2030年をゴールとする国連の持続可能な開発目標であるSDGsの達成です。ゴールまで残り10年を切った今、私たち一人ひとりが地球の抱える問題を自分ごととして受け止め、行動を起こしていくことが求められています。
世界のビジネスリーダーの意識も、変化しています。
当社が世界9か国で行ったビジネスリーダー1,800人を対象とする調査によると、1,000人以上の方が2年前と比べて、経営におけるサステナビリティの優先度が高まっていると認識されています。(※1)
私たち富士通も「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていく」というパーパスのもと、サステナブルな世界の実現に向けて、主体的に貢献していくために動きだしています。
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富士通が目指す、サステナビリティ・トランスフォーメーション
今、私たち企業に求められているのは、自社の活動そのものを環境・社会・経済により良いインパクトを与えるものへと変革すること、つまりビジネスを通じての、サステナビリティ・トランスフォーメーションの実現です。そして、この実現においては、デジタルイノベーションが大きな役割を果たすと確信しています。
「Fujitsu Uvance」は、2030年の社会のあるべき姿を起点に、その実現にむけて起こりうる社会課題を皆様とともにクロスインダストリーで解決していくための取り組みです。「誰もが夢に向かって前進できる、サステナブルな世界をつくる」というビジョンのもと、社会課題を解決するクロスインダストリーの4つの分野と、それを支えるテクノロジー基盤の3つの分野、合計7つの分野から構成されています(図1)。Fujitsu Uvanceを通じて、業種の垣根を越えて企業をつなぎ、それぞれの強みを大きな力に変え、地球や社会をより良いものにしていく。これが、私たち富士通が目指すサステナビリティ・トランスフォーメーションです。ここで、具体的な取り組みを2件ご紹介します。
サーキュラーエコノミーの実現(帝人株式会社)
まず、サーキュラーエコノミーの実現に向けた取り組みです。
日本の大手化学メーカーである帝人株式会社(以下、帝人)は、企業は人間の幸せのために存在するという考えのもと、「クォリティ・オブ・ライフの向上」を企業理念に掲げ、高機能素材の製造からヘルスケア、環境といった多様な領域のビジネスをグローバルで展開しています。
帝人と富士通は事業を通じて社会課題を解決するというお互いの取り組みに深く共感し、それぞれの強みである「素材」と「デジタルテクノロジー」の化学反応を起こすことで、社会に対する新たな価値の提供を目指す共同プロジェクトを開始しました。
帝人が持つ、素材の温室効果ガス排出量算定やリサイクルに関する知見と、当社のブロックチェーン技術を用いてプラットフォームを構築します。そして、メーカーやプロダクトオーナー、回収・リサイクル業者などのバリューチェーンにおける環境負荷に関するデータの追跡・収集を行います。これによって、リサイクル素材の環境価値の信頼性を高め、その活用を促進していきます。
トラステッドな都市づくりの実現(Hexagon社)
次に、リアルなデータを活用した都市づくりへの取り組みをご紹介します。
世界人口の増加に伴い、都市部の人口もますます増加すると予想される中、気候変動といった地球規模の課題への対応から、日々の暮らしにおける安全性の向上まで、都市の担う役割はさらに重要性が高まっていきます。都市には、人や社会のあらゆる活動が集約され、そこから日々膨大なデータが発生します。これを適切に活用することで、持続可能性の高いトラステッドな都市の実現が期待されています。
世界最大手の測量機器メーカーであるスウェーデンのHexagon社は、地図や都市のデータに基づくシミュレーションサービスをグローバルに展開しています。
Hexagonの持つIoTプラットフォームや、多様なデータをもとに都市を3次元で可視化するツールと、当社のデジタルツイン技術などを組み合わせ、交通や物流、都市インフラや防災など、スマートシティに関するモデルを構築します。それをもとに都市情報に関するリアルタイムダッシュボードなど、課題解決に必要なソリューションを企業や公共機関に提供します。
すでにドイツのミュンヘン市では、このソリューションによってシェアード・モビリティの理論実証を行っています。
リアルなデータを活用した自然災害の高度なシミュレーションによる防災機能の強靭化や、配送ルートの最適化による消費エネルギー削減などの早期実現を目指します。
2030年に向けた富士通のデジタルイノベーション
これまでにご紹介した取り組みを支えているのは、デジタルテクノロジーです。富士通では、重点的に取り組むべき5つのデジタルテクノロジーを定めています。コンピューティング、ネットワーク、AI、データ&セキュリティ、そしてコンバージング・テクノロジーです。
データの迅速かつ最適な活用は、全ての企業にとって、最優先で取り組むべき課題です。より多くの企業に、データ活用に必要なリソースを必要な時に活用いただけるよう、スーパーコンピュータや量子コンピュータなどの高度なコンピューティング技術をクラウドサービスで提供する「Computing as a Service(CaaS)」を開始します。
これまで負担となっていたコンピューティング技術の導入における投資や、専門技術者の確保などの負荷を軽減し、幅広い分野におけるデータ活用の促進を目指します。
全ての企業が、社会課題を解決する力を持っている
私たちの暮らす地球は、地域間の格差や人権問題、貧困、生物多様性など、いまだ多くの問題を抱えています。
富士通は、農作物の効率的な生産や飲料水の安心安全な普及の支援、絶滅危惧種の見守り、人種や性別に対するバイアスの排除など様々なことに取り組んでいますが、残念ながらまだ十分な貢献はできておりません。
次の世界を担う世代は生まれたときから社会課題に直面し、それを自分ごととしてとらえています。その世代が力を発揮していく場は、社会課題解決に取り組む企業にこそあります。
全ての企業が、社会課題を解決する力を持っており、それらの企業が共感をもって力を合わせ、ともに取り組むことが求められています。その姿勢が、企業の持続的な成長につながるものと確信しています。
富士通は、強いテクノロジーを追求しながら、世界のサステナビリティ・トランスフォーメーションに、皆様とともに取り組んでまいります。
富士通のパーパスと皆様のパーパスの共感の輪が広がることを、心より望んでおります。
関連情報
- Fujitsu ActivateNow 2022オンデマンド配信 ※2022年10月31日18:00までご視聴いただけます
- Fujitsu Uvance
- [フジトラニュース] 帝人×富士通~SXの実現に必要なポイントとは