見えないものを見ることで、チームの関係性を変える。 “know You” な組織づくりとは【後編】

~企業の競争力を高める秘訣は、働きがいと働きやすさの向上にあり~


記事公開日:2023年8月10日

 富士通ラーニングメディア(以下、FLM)にて、組織カルチャー変革パートナーとして顧客を支援する城能雅也と、チームメンバーの太田紗矢子そして熊谷文美に、変化に適応し競争力を高めていくためのチームのあり方について聞きました。

 前編では、今、企業に求められるコミュニケーションについて、後編では、これからのリーダー像と、チーム力を高めるための具体的なアプローチについて取り上げます。

多様化するリーダーのこれから

──多様化するチームやメンバーと向き合うリーダーには、多様な力が求められそうですね…

城能:若手を中心にWGなどを編成することで組織が望ましい方向に変わっていく、と考える組織も多いようですが、一筋縄にはいかない苦労をよく耳にします。これからは特定の誰かだけではなく、マネージャーも含むチームのメンバーそれぞれが、自らが変わること・学ぶことを通じてともに変化を創り上げていくプロセスや経験が必要だと思います。

 そのために、私自身は組織やチームが協力状態であることを目指し、新たな文化を創りあげていくことに力を注いでいます。その際、メンバーの感情の中に潜む「変化を加速させるアクセル」と「変化を妨ぐブレーキ」の存在を理解し、世代を超えた価値観や心理的状況を受容することが重要かなと感じています。

熊谷:同年代の友人と話していると「会社の先輩の中に、自分のロールモデルにしたい人がみつからないね」とか「『なりたくないモデル』だったら、たくさんいるけどね」といった声をよく聞きます。先輩たちの豊富な経験は尊敬している一方で、それを押し付けられたり、先輩自身の経験だけで決めつけられたりしていると感じるシーンが多いことが原因だと思っています。

城能:今の居場所を良くしたいと願っている私としては、他責や他部門へ期待するのではなく、自分たちの組織やチームにいる人が自分事として動けるような環境づくりを大切にしていきたいです。働きやすさや働きがい、変化への対応力と競争力。働く組織や環境において、これらすべて手に入れたいと願うことは欲張りにも見えますが、メンバーが意思をもって進めていく環境や関係が整えば叶うことだと信じていますし、環境と関係性を作り直すことがマネージャーやリーダーの最も大事な仕事だと思っています。

 また、多くのリーダーから「これまでのやり方が通じなくなってきた」という言葉をよく耳にしますが、それは過去の経験から得てきた “know how” が通じない時代に突入してきたということ。私はメンバー、一人ひとりの意識に目を向けた「共感型組織」である “know You” が増えることを願っています。

「よく聴き、受容し合える(=know Youな)関係づくり」を支援する

──自ら変わるのは、そう簡単なことではないですよね。

太田:自分が変わるためには、その前に、そもそも今の自分がどんな人なのかを知らなければなりません。現状の自分に対する確かな認識があるからこそ、次はこうなりたいと未来像を思い描けるのですから。また、自己変容や変革するためのスキルである対話や内省、自己認識力、批判的思考など、私を含め、誰もが学んでこなかったと思います。これまでの業務の常識が通用しなくなっているからこそ、変化するためのマインドセットや思考の学び直しが求められてきていると思います。私としては、コーチングの技術や考え方が職場で自然と使われるようになっていくことで、逆に「コーチング」という言葉自体がなくなっていくとうれしいです。

熊谷:自分を知るには、過去を振り返ってみるのもよい手がかりになりますね。私は過去の自分を振り返った結果「『一人ひとりにとっての最強で最高の補欠』になりたい」をパーパスとして掲げることにしました。学生時代の部活動の経験を活かしながら、今所属しているチームで何ができるか、どうしたいかと考えたときに生まれた言葉です。

 私たちだけでなく、お客様自身にも「チームに何を補いたいのか」を考えていただくことも大切です。それにより、「チームに欠けていること」が正確にとらえやすくなります。結果的に、学び直すべきことやお客様の組織の中で地に足をつけてやっていくべきことが、よりクリアに見えてくると思います。

──チーム力を高めていくためのアプローチには、どんなものがあるのでしょうか。

城能:方法の一つとして、「感情を起点にしたチーム開発」があります。まず、感情をおよそ8種類に分類して、どんなときに、どんな感情を感じているかを自分自身に問うことで、メンバーに自身を知ってもらいます。自分の感情を知ることは、結果的にセルフアウェアネス(自己認識)やストレスコーピング(ストレス対処)にもつながり、チームメンバーの感情にも自然と意識が向いていきます。

 「感情を起点にしたチーム開発」のきっかけは、お客様から「リモートワークが中心になり、組織内の感情が見えにくくなった」とのお声をいただことでした。私自身もそう感じていた一人でした。お客様と対話を重ねたところ、メンバー一人ひとりの「感情」の重要性に気づき、この課題に力を入れることにしました。感情を起点に “know You” をサポートするようなイメージです。

太田:自分についての理解が深まれば、他のメンバーに対しても「この人自身はどういう状況に置かれているのだろう」と知りたくなります。お互いを知りたい、お互いに貢献したいと思えるマインドセットがチーム内に生まれると、確実にチームに変化が起こります。そのように一歩ずつ学び、変化するチームの体質をつくることをサポートしています。

──メンバーが自分を知り、互いを理解すれば、共感が育まれるのでしょうか。

熊谷:相手を知ろうとする過程で、嫌な感情を抱いてしまうこともあると思います。そんなときには、「嫌だ」と思った自分の感情にもう一歩踏み込み、その理由を掘り下げます。その結果、私は「その人のことが嫌なわけではなく、その人の自己中心的な考えにより、誰かに迷惑をかけることを危惧していた」と気づいたことがあります。自分の気持ちを知ることで、「好き・嫌い」という一時的な感情に左右されずに、相手はなぜそんなことをしたのだろうか、なにか理由があるのかもしれないと、相手を知ろうとする方向に気持ちを切り替えられました。

 チームの関係性によっては、気づいてほしくても気づいてもらえない、言いたくても言えないようなこともあります。そういったチームこそ、どんな人でもポジティブな感情もネガティブな感情も持っているということを理解し、受容することが重要だと思います。共に働くメンバー一人ひとりのそれぞれの感情に、自然と気づき合えるチームの関係性が大切だと強く思います。

──メンバーがお互いを知るということも含め、変化を目指すチームは、どのように組織変革を進めていくとよいのでしょうか。

城能:エンゲージメントという考え方が注目を集めていますが、そもそもこのエンゲージメントを高める目的は、社員にとっての「働きがい」と「働きやすさ」を向上させることで、結果的に企業としての競争力を高めることだと思っています。

 これまで人材育成サービスを提供してきた中で、顧客からの声を分析し、「働きがい」と「働きやすさ」を次の4つの要素「心理的安全性がある」「自主性を発揮できる」「自己肯定感が高まる」「誇りが持てる」にまとめ、職場ごとのカルチャーづくりをサポートしています。

一人ひとりの目を「会社にいる自分」に向け、チームと組織にインパクトを

太田:私たちが提供する具体的なプログラムは、主にチーム開発やキャリア開発が中心ですが、その際に起点となるのは、お客様が「変わりたい」あるいは「変わらなければならない」と健全な危機感や問題意識を持たれていることなんです。

 各事業や業務(組織・チーム)は「組織の戦略・制度」と「人が作り出す文化やスキル」の交差点に存在しており、組織に影響を与え、組織全体のカルチャー変革を実現するための要になります。相互のよりよい循環を作ることが、個と組織の未来につながっていきます。一方でそれぞれの事業や業務を取り巻く市場速度は異なり、全社一律でできること、事業単位でできることに分かれています。複雑化している組織の現状から目を背けるのではなく、それぞれが自分の視点から現状をよく認識し、対話することで、社会・顧客と会社と自分を関連付けて、行動につなげていくことが解決の糸口になっていくように感じています。



──最後に、チームが「変わり」、組織も「変わる」ための考えをお聞かせください。

城能:意思をもって変えていくということは、自分も含めて怖いし、不安になることもあります。変えたい気持ちと変わることへの不安や恐怖との葛藤です。やり方を知ることではなく、一人ひとりをよく知ることで、私の願いを私たちチームや組織の願いに変えて、社会に届けていくための、共感と信頼を得ていくことを突き詰めていくことだと考えます。

 すなわち “know You” から始めていくことが最も大切なアクションだと信じています。変わりたい組織やチームに「働きやすさ」と「働きがい」、「競争力」と「適応力」を。常識に固執せず柔軟にやりきることに伴走する。 これが私たちのミッションです。


プロフィール

 ナレッジサービス事業本部 マネージャー
組織カルチャー変革パートナー 
城能 雅也

 組織カルチャー変革パートナーとして、ビジネス・商品開発/組織カルチャー開発/サステナビリティ/DX/ などの領域を中心に、共創を軸に新しいことを創る分野で多彩な実績を持つ。一貫して新しいサービス領域を開拓し続け、難しい分野も顧客と共にゼロから創りあげる。事業の成長と組織のウェルビーイングの両輪を追求している。


 ナレッジサービス事業本部
組織カルチャー変革担当
太田 紗矢子

 12年間のシステムエンジニアを経て、2022年12月にFLMに入社。
 「友人の良き相談相手になりたい」という想いからコーチングを学び始めたことがきっかけで、「コーチングを人間の当たり前のスキルにしたい」と思うようになった。現在は組織カルチャー変革のプログラムをコーチングの要素を入れながら提案・実施している。


 ナレッジサービス事業本部
組織カルチャー変革担当
熊谷 文美

 新卒で富士通株式会社に入社後、営業部門からFLMへ。FLMでは、営業職研修の講師を担当したのち、組織カルチャー変革を担う現在のチームへ。大学時代のバトントワーリング団体競技日本代表の経験から、組織としてのパフォーマンスを最大化するための組織のあり方や関係性について、「貢献」をキーワードに日々探求中。


※ 本記事の登場人物の所属、役職は記事公開時のものです。