見えないものを見ることで、チームの関係性を変える。 “know You” な組織づくりとは【前編】

~組織のコミュニケーションとマネージャーの在り方~


記事公開日:2023年8月10日

 DX(デジタルトランスフォーメーション)が求められている中で、多くの企業は「変わらなければ未来はない」「新しいことに挑戦していきたい」という危機意識や期待感を持っているのではないでしょうか。同時に、生成系AIなどのテクノロジーの進化を筆頭に世の中がとてつもないスピードで変化していく一方で、組織の風土や文化が緩やかにしか変化しないことにジレンマを感じる企業も少なくないはずです。

 富士通ラーニングメディア(以下、FLM)にて、組織カルチャー変革パートナーとして顧客を支援する城能雅也と、チームメンバーの太田紗矢子そして熊谷文美に、変化に適応し競争力を高めていくためのチームのあり方について聞きました。

 前編では、今、企業に求められるコミュニケーションについて、後編では、これからのリーダー像と、チーム力を高めるための具体的なアプローチについて取り上げます。

求められるコミュニケーションは伝達型から共感型へ

──テレワークやDX、人事制度の変革など、働き方を取り巻く環境が多様化してきている印象がありますが、実際にはどのような変化が起こっているのでしょうか。

城能:現在の働く環境は、オンラインにリアルにと様々な選択ができるようになりました。コロナ禍によってオンライン中心にならざるを得なかったときは、「かつての勤務形態時に見えていたもの」が見えなくなったことで、働き方に関して見直すべき点など、前向きな気づきも多くあったように思っています。

 DXにおいても、既存業務の改善・高度化、新ビジネスの創出など、推進上の課題は多岐に渡っています。その中で変えるべきもの、変えないものについて対話を繰り返しながら、関わってゆく人同士が納得した協力状態を創り上げることが最も重要です。

 また、デジタル人材やDX人材は不足していると言われます。もちろん育成は必要だと思いますが、ないものに目を向けていくのではなく、まずは、今いる人を協力状態にしながら変革の方向性を描くことから少しづつ始めていくとよいと思います。組織が協力状態になることは、高い生産性と創造性が発揮できる職場につながっていくと私たちは考えています。

──起きている変化に伴って、リーダーシップのあり方も変わってきているのでしょうか。

城能:会社のトップがビジョンや指示を言葉で「熱く」語ることで、みんなが動きやすくなりますよね。「トップダウン」のリーダーシップは、変革には欠かせないと思います。一方で変革の対象・起点は、業務であり事業です。業務や事業は市場変化の速度によってそれぞれで、現場の納得感を推進力とする「ボトムアップ(現場単位で構想すること)」の動きが重要性を増しています。

ナレッジサービス事業本部 マネージャー
組織カルチャー変革パートナー 城能雅也

太田:私は前職で、情報システム会社のSE(システムエンジニア)として働いていました。SEは基本的にプロジェクト単位でチームを成して業務をこなしていきます。チームで過ごす中で、「プロジェクトを進めるためには、プロジェクトリーダーが1人でチームを引っ張ってもだめなんだ」、「メンバーが自主的に動いて初めて、チームは機能するんだ」と、実感しました。

ナレッジサービス事業本部
組織カルチャー変革担当 太田紗矢子

城能:個人と組織の関係性を考える上で、私が注目しているのが「チーム」という小さな単位の組織と、その要となるマネージャーの成長です。私自身は、組織変革をリードしてくために、中長期的な目的をチーム全員と対話し、個人のやりがいを生み出し、組織により大きなインパクトをもたらすことを目指しています。

 既存の業務を遂行しながら、新しい領域へチャレンジもしたい。社会や顧客に対して価値ある仕事をしたい。そんな思いを抱くチームメンバーが置かれている状況や価値観は一人ひとり異なっています。多様化しているチームでビジョンを実現していこうとする際に、「個人の成長」と「組織の成長」を両輪でどのように実現するかを、私含め悩んでいる方は多いのではないかと思います。組織・人材戦略と事業戦略を両輪で考えることが大切なのだと、日々のお客様との会話の中でも感じ取っています。

ナレッジサービス事業本部
組織カルチャー変革担当 熊谷文美

──個と組織の成長には、マネージャーはもちろん、個であるチームメンバーも含めた全員が変わってゆく必要がありそうですね。

熊谷:私はかつての上司から「これからは君たちが変わっていかなければならない」というメッセージが発信されたとき、「変わるのは私たちだけなの? 上司は変わらないの?」と違和感を覚えたことがあります。お客様からのリクエストで、「若手に主体性がないから変えてほしい」と言われた際も同様の違和感を抱くことがあります。組織が変化していくことに対して前向きであったとしても、「全員で変わっていこうとしない」ことに違和感を抱く若手が潜んでいる職場も多いのではないかと思っています。

共感でつながるチームの要「マネージャー」の存在

──変革を推進するチームのマネージャーは、チームメンバーとどう向き合っていけばいいのでしょうか。

城能:組織によって様々ではありますが、肌感覚としてデジタル化や変革をリードする組織においては、若手マネージャーも増えてきている印象があります。悩みも多く聞こえてきています。マネージャーとしての役割は、チームを多様化させ、それぞれがもつ持ち味やポテンシャルを活かすことにつきると思います。価値を生み出す源泉である人への投資が注目を集めている背景そのものですが、マネージャーの「チームと向き合うマインドやスタンス」が組織のこれからにつながっていくのではないでしょうか。

 私の場合は、「あなたのことをよく知らない」と思うようにして人と向き合おうと決めています。無意識に持ってしまう先入観や固定観念、決めつけを排除することで、一人ひとりの背景や思いを汲み取った対話がしようとすることをと心がけています。私は、変革につきまとう一人ひとりの感情を起点としたチームづくりにヒントがあると思っています。



【後編に続きます】

※ 本記事の登場人物の所属、役職は記事公開時のものです。