お客様インタビュー

潜在能力を可視化、社員の意識を変えて100年企業を目指す

~社内大学で社員の可能性を伸ばす~

大興電子通信株式会社
SEイノベーション本部 磯野亮様(左)、コーポレート本部 山田有様(右)

記事公開日:2023年7月21日

 「100年続く企業となる」――。創立70周年を迎えた大興電子通信株式会社は、未来に向けて大きな目標を打ち出しました。目標を達成するためには、人材の育成と企業文化の変革が必須です。そこで同社ではプロジェクトを立ち上げ、まず社員に自らの可能性を理解してもらうため、戦略的人材アセスメントツール ”ProfileXT(プロファイルエックスティー)” を実施しました。その上で主にSE部門を対象とした社内大学「DAiKO アカデミー」を設立し、新たな教育を始めています。システムインテグレーターという事業で、何より重要なのは人です。変化の激しい環境の中で30年後にありたい姿をどのように設定し、求められる人材育成にどのように取り組もうとしているのか。同社で人材育成プロジェクトを率いるコーポレート本部CANVAS推進部長の山田有様とSEイノベーション本部業務ソリューションシステム部システム課長の磯野亮様に伺いました。

100年企業に向けて、受け身の姿勢から脱却を図る

──創立70周年を迎えた御社にとって、100年企業とは30年先の姿です。先の読みにくい状況の中で、未来像をどのように描いていらっしゃるのでしょうか。

山田様:当社は1953年、「大興通信工業株式会社」として6名で創業しました。それ以降、富士通グループのパートナー企業第1号として、コンピュータの発展とともに業績を伸ばし、1974年に現在の「大興電子通信株式会社」へと社名を変更。創業から70年を経て、電子や通信だけに留まらない多種多様な事業を行うようになり、この変化はこれからも加速していくでしょう。そのため単純な現状分析に基づいて、その延長線上に30年先を予測するのは難しいと考えました。

コーポレート本部CANVAS推進部長 山田有様:
1998年入社。SE職を経て、2016年から人材育成を担務。
また中期経営計画や長期ビジョンの策定を担当。
2022年より経営企画部門にて長期ビジョン “CANVAS” の推進を担う。

──確かに3年先の状況を想定するのさえ難しいです。

山田様:そうですね。ですから予測ではなく、お客様にとって自分たちがどういう存在でありたいかと考えを突き詰めていきました。これまでの私たちは「お客様が社会へ価値提供するための効率的な手段」の提供に努めてきました。けれども100年企業となるためには、その一歩先へ踏み出すべきだと考えたのです。すなわち単なる手段の提供者にとどまらず、お客様と共に社会に価値を提供する、あるいはもう一歩踏み込み、私たちが率先してお客様を価値提供へと導けるような存在でありたいと考えたのです。

磯野様:すでに2030年を一つの区切りとする長期ビジョン策定プロジェクトである “CANVAS” を始めています。プロジェクト立ち上げに際して、40代を中心に10年後も当社にいる社員を集めて、未来にありたい姿を検討しました。そこで描き出されたのが従来とは異なる未来像、つまり自分たちの強みを活かしてお客様と伴走するのはもちろんのこと、時にはお客様のビジネスの変革を先導したいという強い思いだったのです。この思いを実現するためには、請負業務を主とする従来とは異なる未来像を描く必要があります。そのためにはこれまでの当社にみられた同質性から脱却して、多様性に富んだ強みを備える必要があると考えました。

──システムインテグレーターの業務は、どうしても受け身になりがちですが、そこからの脱却を目指すわけですか。

山田様:受け身で仕事をこなす分には、同質文化でもよかったのです。ところが実はお客様は、私たちに受け身の対応だけを求めているわけではありませんでした。10年後に当社とどのように付き合いたいかと尋ねて回ると、「もっと(お客様の)システムをリードしてほしい。一緒に新しい何かを創り出すような取り組みにも挑戦してほしい」と何社ものお客様から同じようなお言葉をいただいたのです。このインタビューが、請負業的な体質から一刻も早く脱皮する必要があると痛感したきっかけです。

社員のポテンシャルを示す客観的なデータが行動変容を促す

SEイノベーション本部 業務ソリューションシステム部 システム課長 磯野亮様:
2004年入社。SE職として卸売業向け販売管理システムの開発を担当したのち、
2018年より業務ソリューションシステム部にて会計・人事・給与パッケージの導入に従事。
また、2017年からSE人材育成活動にも携わる。

──従来のSEから新たなSE像への転換を図る、これは決して簡単なテーマではないと思います。

山田様:SEのチームでは基本的にリーダーがプロジェクトマネージャーを務め、部下はリーダーの指示に従って動きます。だからつい「仕事とは何か」「何のために仕事をしているのか」という本質的な問いを深く考えなくなってしまう。そうなると「お金のために仕事をする」という表層的な価値観にとらわれてしまい、他者貢献の視点が欠けがちです。いわゆる「今だけ・お金だけ・自分だけの『三だけ主義』」から社員を脱皮させる社内文化の醸成が、私の課題でした。

──他者貢献のためには、まず自分に何ができるのかを知る必要があるのではないでしょうか?

山田様:ええ。そのために戦略的人材アセスメントツールの “ProfileXT” を導入しました。社員にまず考えてもらったのが「世の中に対してどのような貢献をしたいか」です。貢献するためには、自分の強み・弱みを客観的に理解した上で、仲間とともに成長する姿勢が必要です。まずは「ありのままの自分」を受け容れ、人に負けない強みを磨き続ける。そのために自分を深く知る仕組みとして、 “ProfileXT” が最適と考えました。

“ProfileXT” では人材のポテンシャルを「思考スタイル」・「行動特性」・「仕事への興味」の計20の尺度で数値化
ポテンシャルの測定結果を基に「人材と職務との適合率」を数値化

──実際に “ProfileXT” でご自身を測定した結果は、どうだったのでしょうか。

磯野様:それまでは行動特性を客観視する術がなく、部下はもちろん、自分自身に対しても基本的にすべてを主観的に判断していました。ところが “ProfileXT” を使えば、客観的に言語化された行動特性の評価を見ることができる。結果の中には自覚していた評価とは異なる部分もあったのですが、その点についても改めて深堀りして考えてみると、最終的にはなるほどと納得でき、非常に参考になる評価だと思いました。私以外のメンバーも、みんな結果には納得しています。

山田様:結果が「良い・悪い」ではなくフェアなスコアとして表現される点も評価しています。しかも各自がどのような特性を持っているのかだけでなく、秘められた潜在能力までを示してもらえる。まず、自覚しているか仲間が知っている自分自身の強みが客観的に示されるため、背中を押されるような感じで自信が持てます。さらにはいわゆる「ジョハリの窓」でいう未知の窓、つまり自分も周りの人もわかっていなかった強みまで気づかせてもらえる。このような気づきは、行動変容への強力な後押しとなります。マネジャーとしてもメンバーの特性が明らかになれば、メンバーがチャレンジするテーマをこれまでとは別の視点から提案できます。

理念を実現する社員を育成するための仕組みづくり

──御社の理念を実現できる人材を育成するための取り組みとして、社内大学「DAiKO アカデミー」を立ち上げています。これも思いきった挑戦ではないでしょうか。

山田様:これまでにも、さまざまな研修を行ってきましたが、残念ながらこれまでは教育に対する私たちなりの哲学が欠けていたようです。そのため教える側が満足するだけの教育に終わりがちでした。100年企業を目指す上で必要なのは、社員一人ひとりの潜在能力を踏まえた上で、その成長を後押しする教育です。そのために富士通ラーニングメディア(FLM)の力を借りてまず社内で社員が成長するための伴走役(チューター)を育成し、そのチューターが社員を育成する「DAiKO アカデミー」を立ち上げました。

──とはいえ自社内でカリキュラムまで組み上げるのは、並大抵のことではないと思いますが。

山田様:まず主宰する私たち自身が、どれだけ自信を持てるかが決定的に重要なポイントだと考えました。その点で何よりありがたかったのは、FLMが私たちに寄り添うサポートをしてくださったことです。FLMが主導して進めるのではなく、あくまで私たちが使いこなせるように支援してくださいました。チューター教育やチューターによるアカデミー生教育に関しても、システムの裏側を支えている根拠や理論までをていねいに解説してくださったおかげで、理解が深まりました。

磯野様:もとより私たちが育成を目指している人物像や、導入する教育の仕組みなどの全体像までを理解してもらった上で提案してくださっています。アカデミーの前段階となる “ProfileXT” についても、私たちのプロジェクトの全体像を理解した上で、ベストな運用法を一緒に深く考えてもらえました。チューター、アカデミー生ともにお互いが、 “ProfileXT” で示された相手の潜在能力までを理解できている。こうした状況で育まれる心理的安全性を確保した上で、学ぶ土壌がつくられています。

意識を変え、行動を変えて、100年企業を目指す

──実際に「DAiKO アカデミー」がスタートして、どのような手応えを感じていらっしゃいますか。

山田様:チューター1人にアカデミー生が3人というユニット体制での学びが始まっています。社会人基礎力をつけた上で、各自が自らのポテンシャルを引き出して、お客様の役に立てる人材となるのがゴールです。結果が出るまでには紆余曲折があると思いますが、SE部門のトップに背中を押してもらえたのは心強く思いました。

──FLMのサポートについてのご感想をお聞かせください。

磯野様:まず当社を深く知ろうとするところからスタートしていただけた点を、何より感謝しています。「なぜ、それをやるのか」を理解した上で、「どう、やるのか」を一緒に考えていただけました。私たちに伴走してくださっているなと、強い安心感を覚えました。

山田様:私たちとしては、経営指標のどれをとっても、それを実現するのは人でしかないわけです。つまり100年企業をめざす当社の事業は、人が創り出していくしかない。そのためには、人を育成する体制を整備しなければなりません。その意味で「DAiKO アカデミー」は、未来像を描く上で欠けていたピースを埋めるために欠かせない存在です。FLMのサポートも受けてアカデミー生が変わり、その変化が社内全般に広がり、大興電子通信がこれから大きく成長していく。そんな未来像が見えています。

富士通ラーニングメディア担当者からのメッセージ

ビジネスプロデュース本部
小作 泰我

今回、DAiKOアカデミーの構想段階からお声がけいただきました。私どもFLMのことも大興SE人材育成チームの一員とみなし、ディスカッションしてくださったと感じています。SE部門のトップや現場を牽引してこられた方々が、理想とするSE像や人材育成への思いを言葉を尽くしてお話くださいました。その思いにお応えすべく弊社内で検討を重ね、「チューターがアカデミー生を育成する」プログラムをご提案しました。長期ビジョンの実現という大きなテーマでのご支援に携われることに、責任とやりがいを感じています。これからもチームの一員として、人材育成の新しいあり方を皆様と共に創ってまいります。


※ 本記事の登場人物の所属、役職は記事公開時のものです。