広島県大崎上島町様
離島に生きる人々の暮らしを支える新たな交通・物流手段の創出へ
少子高齢化の進行や都市への人口集中により、地方圏では人口減少が加速しています。これらの地域では、採算悪化や人員不足などから公共交通機関が廃止され、地域に暮らす人々のクオリティ・オブ・ライフの低下が懸念されています。こうした社会課題を見据え、富士通はオンデマンド交通サービスと自動運転技術を組み合わせた、新たな交通・物流サービスを提案。広島県大崎上島町において、島内の“生活の足”として、さらには島内を訪れる観光客の移動手段としての有効性を検証する実証実験を行いました。
少子高齢化が進む中、住民の日常生活を支える公共交通機関の維持が大きな課題となっていました。先進のICTを駆使した新たな交通・物流手段の確立に、住民一人ひとりが大きな期待を寄せています。
大崎上島町長
高田 幸典
背景
存続が危ぶまれる、島民の“生活の足”を維持するために
「離島の町はどこも同様だと思いますが、私たちの町でも“生活の足”をいかに維持するかが課題となっていて、町に住み続けたくない理由として『交通の便が悪い』が8割を占める状況でした」と語るのは、大崎上島町の町長を務める高田幸典氏です。「公共交通機関としてはバスがありますが、人口減少に伴う採算低下に加えてドライバーの高齢化などもあり、その存続が危ぶまれています。このため1人1台の自家用車が必須という状況でしたが、運転免許を返納される高齢者も増え、日常の買い物や通院などのための新たな公共交通機関の必要性を痛感していました。そうした中、富士通から実証実験の打診を得て、島を挙げて期待感が高まりました。」
富士通では、ICT を活用した地域課題解決の重要テーマとして、かねてから地域特性に応じた次世代交通サービスの創出に注力してきました。その一環として、交通サービス事業者と利用者との最適なマッチングを図る「FUJITSU Future Mobility Accelerator オンデマンド交通サービス」を開発。全国の自治体向けに提案するとともに、自動運転など先進のモビリティ技術との融合による新たな交通サービスの研究開発を続けています。
その早期実現に向けた実証実験を検討していたところ、2020年に国土交通省がICTなど先端技術を駆使して離島地域の課題解決を図る「スマートアイランド推進実証調査」の公募を開始。これを活用した実験をいくつかの離島に提案した結果、大崎上島町での実施が決定したのです。
経緯
地域の自治体や交通機関、研究機関とのエコシステムを構築して
実証実験に当たっては、地域の産学官とのエコシステムを構築。大崎上島町、さんようバス株式会社、広島商船高等専門学校、富士通総研を構成員とする「大崎上島町スマートアイランド推進協議会」を設立しました。
2020年12月に行われた実証実験では、2つのサービスの有効性を確認しました。1つは、自動運転車両による送迎サービス。利用者がネットや電話で予約すると、指定された時間・場所に自動運転車両が迎えに来て、島内の2つの港の間を送迎します。もう1つは、自動運転車両による配送サービスです。2港周辺の事業者が利用者から宅配品の注文を受けると、ネットや電話で配送サービスを予約。自動運転車両が宅配品を受け取り、利用者の自宅まで配達します。
両サービスとも、富士通のオンデマンド交通サービスやコールセンターサービスに、ベンチャー支援プログラム「FUJITSU ACCELERATOR」を通じて協業する PerceptIn Japan 合同会社の「自動運転プラットフォーム」を組み合わせて実現したもので、2人乗りの小型車両を利用して低予算で実現できるのが特徴です。
効果と今後の展望
少子高齢社会のクオリティ・オブ・ライフを支えるために
今回の実験で、自動運転による送迎サービスを利用した島民からは、「これが実用化されたら素晴らしいと思う」「自分でハンドルを握らなくても移動できることに驚いた」「自動運転の車に乗るのは初めてで緊張したが、乗り心地は悪くなかった」などと好評を得られました。大崎上島町スマートアイランド推進協議会では、今回の実証実験で得られた成果や課題を踏まえ、実施エリアや用途、パートナーを拡大した継続的な検証を計画中です。
「このサービスが実現されれば、バスの終了後に港に着いても自宅まで安全に帰宅できるなど、生活の利便性が大いに高まります。また、観光客の移動手段としても活用できれば、島の新たな魅力として経済活性化に寄与することも期待できます」と高田町長は実現への期待を語ります。「そのためには、補助金の獲得や法整備など、技術面以外にも多くのハードルがあります。今後も富士通の情報力やエコシステム構築力などを活かしたトータルなサポートに期待しています。」
こうした期待に応えるべく、富士通は、引き続き自治体や企業、大学などと連携しながら、離島に暮らす人々の生活を支える「MaaS(Mobility as a Service)」の実現を目指します。同時に、医療・福祉や防災、産業振興など、離島が抱える多くの社会課題を見据え、それらの解決に寄与できる ICT ソリューションの実現に注力していきます。
広島県大崎上島町
業種 | 地方自治体 |
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所在地 | 日本 |
人口 | 7,297人(2021年4月) |
Website | https://www.town.osakikamijima.hiroshima.jp/ |
[2021年掲載]
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