国際体操連盟様

採点支援システムでスポーツの世界を変える

体操や新体操などの競技を統括する国際団体である国際体操連盟は、3Dセンシング技術を用いた体操競技の採点支援システムの実用化に取り組んでいる。動きが速く、技の種類も多い体操競技の採点支援システムが実現できれば、他の競技にも応用が見込める。更に、その先の最終的なゴールとして、デジタル技術によって人々を幸せにする「スポーツによる産業革命」の実現を見据え、富士通との共創を推進。

富士通は「冗談を本当に実現する会社」です。企業が発展するということはそういうことだと思っています。「スポーツによる産業革命」実現の鍵を握っているのが富士通です。目先の利益にとらわれずに、夢を語り合える企業に出会えて良かったと思っています。

国際体操連盟
会長
渡辺 守成 様

背景

2020年の実用化に向けて進められる体操競技の採点支援システムへの挑戦

2017年10月、国際体操連盟様(以下、国際体操連盟)は、体操競技の採点支援システムの実用化に向けて、富士通と提携することを発表しました。

きっかけは富士通が作っていたゴルフスイングの診断ツールでした。当時の日本体操協会の専務理事で、現在、国際体操連盟で会長を務める渡辺守成様は「ツールを見た瞬間に『これは体操競技の採点にも使える』と直感しました」と当時を振り返ります。

こうした発想の背景にあったのは、体操競技の採点についての難しさです。次々と新しい高度な技が生み出される体操競技では、審判員による採点は簡単ではありません。演技の進行と並行して手書きで採点シートに記入するという従来の手法は、審判員に負担が大きいだけでなく、誤った採点は試合の長期化や選手・ファンの不満を招くことになるので、公正な採点が必要になります。

渡辺様は「常に選手が第一です。納得のいかない点数で悩んでいる選手を救いたい、と日頃から思っていました。また、公正な採点は体操という競技に対する信用も高めます。競技団体としてのガバナンスも重要です」と話します。渡辺様のこうした課題感からデジタル技術を活用して採点を支援するという発想が生まれました。

経緯

富士通独自の3Dレーザーセンサーが夢の世界を現実の世界に変える

器具を持たずに、全身で運動する体操の場合には、器具にセンサーをつけて身体の動きを捉えるアプローチは使えません。身体にマーカーをつけて動きを捉えるモーションキャプチャーという技術もありますが、体操のような激しい動きではマーカーが外れてしまうなど、選手がマーカー装着の違和感で普段どおりの演技ができないという問題があって、試合での利用は現実的ではありませんでした。

しかし、富士通には身体の動きを離れたところから捉える独自の技術がありました。それが「3Dレーザーセンサー」を使った3Dセンシング技術です。この技術を活用することで、選手に負担をかけることなく、演技中の動きをリアルタイムに把握できる可能性が見えてきました。この3Dレーザーセンサーは、富士通研究所が自動車向けに開発した周囲にいる人を検知するレーザー技術を応用しました。1秒間に約200万点のレーザーを選手に向けて照射し、レーザーが返ってくるまでの時間によって、身体の位置や体勢を捉えることができます。

このセンサーと、医学的リハビリテーション向けに開発された「骨格認識ソフトウェア」を融合させることで、リアルタイムに骨格の位置を推定し、手足の位置や関節の曲がり具合、ひねりの回数などを把握します。その結果と技のデータ辞書を人工知能(AI)に機械学習させてマッチングして、技を判定することができます。

この3Dセンシング技術を使えば、マーカーなどの付加的な要素は必要なく、選手は普段どおりの演技ができます。技が決まった瞬間に、技の名前や難度、点数などがモニターに表示される仕組みの構築を目指し、国際体操連盟と富士通の共創が始まりました。

「このシステムが完成すれば、誤審がなくなるかも知れません。スポーツ界の長年の夢が叶うのです」と渡辺様は期待を語ります。

効果と今後の展望

デジタル技術で人を幸せにする
スポーツによる産業革命につなげたい

現在開発中の採点支援システムは体操向けのものですが、他の採点競技からも熱い視線が注がれています。「体全体を使う体操競技で実用化できれば、当然、他の競技にも応用できます。すでに他の多くのスポーツ団体から早く実用化して欲しいと言われています」と渡辺様は話します。誤審のない公正な競技の実現や観戦の楽しみを増やすことや、選手のトレーニングにも革新をもたらすことができるなど、スポーツ界からの期待は高まっています。3Dのセンシングデータによって、より効果的なトレーニングが可能になり、新しい技の開発や怪我の予防も期待できます。

さらに大きな期待は、競技の枠を超えて広く他の分野に応用することです。「スポーツの次のステップはヘルスケアです。スポーツは基本的に健康になることを目指してするものです。それをテクノロジーが支援できます」と渡辺様は語ります。効果的にスポーツをすることは、高齢化社会を迎えて注目されている健康寿命を延ばすことにも役立ちます。「テクノロジーは利便性を向上させることのみではなく、生活や心を豊かにして、人々を幸せにすることにも使われるべきです。テクノロジーとスポーツが融合することで、広く世界の人類に貢献できます。それがスポーツによる産業革命です」と渡辺様は大きな夢を語ります。

大きな挑戦だけに、安易な道ばかりではありません。これからも多くの壁にぶつかるはずですが、「壁は乗り越えるだけでなく、迂回したりすればよいのです。失敗したら私の責任ですし、成功すれば富士通のチームの功績です。失敗を恐れることなく、思い切って取り組んで欲しいと思っています。富士通は、それができるチームだと信じています」と渡辺様は熱い思いを語ります。

国際体操連盟

所在地Avenue de la Gare 12A 1003 LAUSANNE(スイス)
加盟国146カ国 (2019年時点)
設立1881年 (ヨーロッパ体操連盟として設立)
ウェブサイトhttp://www.gymnastics.sport/site/ (英語)Open a new window

[2019年掲載]

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