ニューサウスウェールズ州環境遺産局様

ドローンで撮影した画像を人工知能で認識して追跡が困難だった絶滅危惧種を見守る

広大で、でこぼこした地形のオーストラリアに生息する絶滅の危機にある動植物の追跡調査は、困難を極めていた。そこで、富士通と固有種の見守りプロジェクトはドローンの専門知識を有するカーボニックス社とともに、毎秒5枚撮影するドローンと撮影した写真を人工知能(AI)のソフトウェアで画像解析を行うことで絶滅危惧植物を検知している。

このテクノロジーは時間と費用を効率化しながら絶滅の危機にある動植物の追跡と見守る方法を変えてくれました。

NSW Office of Environment and Heritage
Saving our Species program
Partnership Manager
Tania Pettitt

背景

より高性能、費用対効果の高い手法で絶滅危惧種を見守る

固有種見守りプログラムは、ニューサウスウェールズ州環境遺産局で絶滅危惧種の保護を最も重要な役割としており、2016年から2021年の5年間で1億オーストラリアドル(約78億円)を使ってニューサウスウェールズ州の固有種の保護にあたっています。固有種見守りプロジェクトでは、今まで培った研究科学の中から実用的かつベストプラクティスを使って絶滅危惧種とその生息地にメリットがあるように活動をしています。固有種の見守りプログラムの任務はなによりもまず自然環境の保護ですが、人の入らない野生の土地を相手にした仕事は簡単ではなく、絶滅危惧植物の確認といった単純な調査にも数千ドルを要するヘリコプターの運用や危険な山登りが必要でした。

オーストラリアには絶滅危惧種とされる動植物が1,800種以上あり、うち約1,000種がニューサウスウェールズ州に生息しています。環境遺産局は、固有種の見守りと同時にウチワサボテンのような外来種の根絶にもあたっており、そのための最新技術を常に求めていました。

「例えば、ゴールバーン川国立公園にあるダンガー山には、希少な低木アカシアやデイジーが自生していると見られていました」と固有種見守りプロジェクトのPartnership ManagerであるTania Pettitt様は説明します。「徒歩による現地調査では一日かけてもこういった絶滅危惧種の踏査は難しいのですが、ヘリコプターを使用すれば1万オーストラリアドル(約80万円)近くかかります。」

富士通は、固有種見守りプロジェクトと長年にわたりサステナビリティのパートナーシップを組んでいる背景から、環境保全プログラムチームに対してドローンが撮影した画像にジオタグをつけてAIに送り、機械学習によって絶滅危惧種の植物を検知させるという斬新なアイデアを提案しました。「富士通は、環境保全プログラムのメンバーとして自然保護に熱心に取り組んでいます。ドローン運用の提案を受けたとき、実証実験を行うにはハンターバレーが最適だと思いました」とPettitt様は話します。「あの地区には希少な植物と動物がどちらも生息しており、ドローンですばやく正確にしかも効率よく調査することができるからです。」

経緯

自律飛行AIドローンで絶滅危惧植物と有害植物を検知

富士通はオーストラリアのドローンメーカー、カーボニックス社と提携して同社の翼長3メートル、垂直離着陸と時速100キロの飛行が可能なドローンを使用することに決めました。装着された重量5キロのハイパースペクトルビデオカメラは、毎秒5枚の写真撮影が行え、希少種の植物を見つけだすため上空から森林の下を透視することができます。

2日間の調査で5,000枚の画像を撮影し、植物の位置情報を示す詳細な地図と共に、画像を富士通の高性能AIで解析したところ、絶滅危惧植物とともに駆除すべき有害植物も検知されました。そして森林警備隊が、その位置情報をもとに植物種の生息状況を確認しました。

「富士通のエンジニアやカーボニックス社のドローンパイロットとともに2日ほど現場に出向きドローンを飛ばしました。すぐに撮影画像が送られてきて、AIを搭載した富士通のシステムが、我々が提供した教師データを基にアカシアとデイジーを見つけてくれました。これまではどこにそれらが生息しているのか全く見当もつかなかったのですから、これは大成功と言えます」とPettitt様は説明します。

「暑さや乾燥が長引く夏は、デイジーが枯れているのではないかと心配していました」と、同プログラムでSenior Team Leader, Ecosystems and Threatened Speciesを務めるLucas Grenadier様は話します。「今回の実証実験で、希少種の生息数が特定できたので、今後希少種を遠隔から見守っていきたいと思います。」

効果と今後の展望

斬新なアイデアの提案が優れたサステナビリティの取り組みとして表彰

富士通のDigital Owlによって、絶滅危惧種の調査は正確で効率的なものになり、さらにコストも削減できるようになりました。また、固有種の保護に重要な剪定や雑草防除、野生のヤギに食べられないようフェンスを囲う等の検討に必要な情報を与えてくれたことで様々な施策を実施していくことが可能になりました。こうした成果によりオーストラリアのARN Innovation Awards 2018でスマートテクノロジー賞や優れたサステナビリティの取り組みを表彰するCitySwitch Awardsを受賞しました。

「このテクノロジーは時間と費用を効率化しながら絶滅の危機にある動植物の追跡と見守る方法を変えてくれました。富士通の人工知能(AI)が何千もの画像解析を支えてくれています」とPettit様は語ります。「このテクノロジーは植物の生息地を遠隔で検知するだけでなく、他の領域にも応用できると思っています。固有種見守りチームは他の動植物の生息地観測にDigital Owlを活用できるのではと期待しています。」

「今、気候変動が在来の動植物に大きな影響を与えています。私たちは、絶滅危惧種を守る最前線に立っているのです。富士通Digital Owlのような最新ツールが、次世代に主要な希少種を残すことをより確実なものにしてくれました」とGrenadier様は締めくくります。

ニューサウスウェールズ州環境遺産局

所在地Level 14, 59-61 Goulburn Street, Sydney(オーストラリア)
設立2011年
ウェブサイトhttps://www.environment.nsw.gov.au/(英語)Open a new window

[2019年掲載]

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