「支える」技術

デジタルアニーラ

デジタルアニーラは、新しいコンピュータです。今までのコンピュータで計算すると時間がかかってしまう問題も、とても速く問題を解くことができます。

デジタルアニーラって?

デジタルアニーラって?

富士通で開発した新しい計算方式を、デジタル回路を使って実現したコンピュータ(計算機)のことです。

  • 現在(2018年11月)、富士通のクラウドサービスとして、デジタルアニーラを提供していますが、オンプレミスサービスとして、上のイラストのような計算機(イメージ)としての提供も考えています。

  • オンプレミスサービスって、どういうことですか?

  • サーバ、ネットワーク、ソフトウェアの設備をお客様先に設置してサービスを提供する形態です。(例えば、お客様のデータセンターに設置して、サービスを提供したりすることです)

「デジタル回路を使って実現」っていうけど、私たちのパソコンとどう違うの?

私たちは、パソコンを使ってどんなことがしたいかにあわせて、ソフトウェアをインストールしてますよね。例えば、「計算してグラフ化したい」「イラストを描きたい」「発表資料を作りたい」など。デジタルアニーラはソフトウェアをインストールしません。すでにデジタル回路に富士通で開発した計算方式が組み込まれています。そのデジタル回路と新しい計算方式によって一番良い組み合わせを求めることができるのがデジタルアニーラです。

  • つまり、デジタルアニーラはすでに計算式が組み込まれているから、「できること」が決まっている、ということですね(各個人用に組み立てられない)。それだと、デジタルアニーラがどれくらスゴイことができるのか、よくわからないのですが・・・

  • はい、デジタルアニーラは「一番良い組み合わせを求めることができる」ということなのですが、具体的な例で説明しますね。

何ができるの?(組合せ最適化問題)

  • 「組合せ最適化問題」って、どんな問題ですか?

  • 「条件を満たす組み合わせの中で、もっとも良い成績をだしてくれるものを求める問題」を指します。具体的に「運送業」の例で説明します。

運送屋さんがトラックに今日の配達分の荷物がくずれないように、隙間なく全体的に荷物の高さが低くなるように(安定するように)積むにはどうしたらよいか、という問題です。今は配達員の経験に左右されますが、事前にどのように積めばよいのかがわかると時間短縮になって大助かりです。

  • 荷物の積み方だけでなく、他にも色々あります。例えば

    • ネットワーク設計問題(交通・通信網、石油・ガスのパイプライン網)
    • 配送計画問題(郵便・宅配便・店舗や工場への製品配送)
    • 施設の位置問題(工場、店舗、公共施設)
    • スケジューリング問題(作業員の勤務シフト、スポーツの対戦表)
    • 災害復旧計画問題(救助、救援活動、物資輸送) など
  • スゴイ・・・、たくさんあるんですね!

量子コンピュータとどこが違うの?

「組合せ最適化問題」って聞くと、最近話題の「量子コンピュータ」ですか?

  • 「量子コンピュータ」ではありません。できることの一部が重なりますが、実現方法が違います!

  • 量子コンピュータ

    「自然現象(量子の物理現象)」を使って答えを探すしくみを使っています。例えば、「光」や「絶対零度(−273.15℃)」近くまで冷やした物質の中で起こる現象などを使って開発されたりしています。とても計算速度が速いのが特長です。

  • デジタルアニーラ

    既存のコンピュータと同じように「0」と「1」で計算するデジタル回路を使って常温で動く計算機で、複雑な問題を解くことができます。すでに富士通のクラウドサービスとして提供しています。

  • 「デジタル回路」って、普段私たちが使っているコンピュータの中にあるCPUのこと?

  • CPUもデジタル回路の一種です。

CPU:Central Processing Unit の略。 パソコンには必ず搭載されている部品で、 各種装置を制御したり、データを処理します。

  • そのデジタル回路に、はじめから組み込む新しい計算方式が、既存のコンピュータとの違いを表すポイントなんですね。

どんな風に解を求めているの?

デジタルアニーラの特徴である「アニーリング方式」を説明します。アニーリング方式は、「最初は色々と探すけれど、徐々に最適解の可能性が高い方だけに絞り込み、最後にたどり着いた答えが最適解とする」というものです。このしくみを「アリの行動」に例えて説明します。



  • 一匹よりも、たくさんのアリで同時に支店長の周囲を探すから、速いですね!

  • そうなんです。デジタルアニーラは、たくさんの回路が同時に動くので、非常に早く結果を求めることができます。もう一つ特徴があるので、下の黒板にまとめますね。

  • 「思いつきで行動する」とありますが、無駄な動きをしているように感じるのですが・・?

  • いいえ、可能性が無いところへは移動していません。少しでも可能性があるところへ移動しています。

  • それなら最初から可能性が高いところだけに絞り込んで行動した方が速そうですが・・?

  • 最初から絞りこむと、その周辺しか探さなくなります。もしかしたら他に最適解になりそうな答えがあるかもしれません。そのため、最初は広い範囲で探し、徐々に範囲を狭くしていくのです。

  • そのためにアニーリング方式を使っているんですね!納得です!!

実際の計算式

デジタルアニーラの回路が計算している式を紹介します。

評価値を計算する式

デジタルアニーラでは、「組合せ最適化問題」を数値で計算して、「評価値の最小値」を探します。
(アリの例では、アリが移動する判断として「におい」があります。その「においの強さ」が「評価値」を表しています)

  • 組み合わせが「2の8192乗通り」って、そんなに計算が大変なんですか?

  • はい、例えば2の8192乗通りは、1秒間に1兆回(1の後に0が 12個並ぶ数)通りの組み合わせの計算ができるスーパーコンピュータで計算すると、
    log(2^8192/(1兆×3600×24×365))=2446.54
    (1時間は 3600秒、1日は 24時間、1年は 365日)
    つまり、10進数でだいたい「2447桁」年かかります。

  • 2447桁の年数って、ゼロが2446個ってことだよね、
    100000000000000000・・・想像もつかないよ〜

  • ええー!スーパーコンピュータでさえも2447桁の年数だなんて想像ができないですね。宇宙の年齢が138億年くらいと言われてるから、想像できないのも当然ですね〜

デジタルアニーラの強み

  • デジタル回路なので、安定に動作して、常温小型化が可能
  • 8192個のビットが全結合で互いに相互接続
  • 64ビット(1845京)階調の高精度

デジタル回路なので、安定に動作して、常温小型化が可能

デジタルアニーラは、常温で動作できるので、冷やすための装置が不要です。

8192個のビットが全結合で互いに相互接続とは?

結合する数字が大きくなると、色々な「組合せ最適化問題」を解けるようになる、という意味です。8192個のビットを扱うことができます。しかも、それらが互いにすべて影響しあう場合も計算できます。

(アリの例)
平面だけでなく、近くの葉の裏や地下や空など、色々なところも探せるようになります。

64ビット(1845京*)階調の高精度とは?

諧調の数字が大きくなると、より正確に問題を解けるようになる、という意味です。ビットとビットの影響の強さを、64ビット階調という高い精度で表現できます。問題を計算式にあてはめる際に精密に数値を設定できます。

(アリの例)
わずかなにおいの変化も区別できるようになります。

  • *
    京(きょう、けい)は、
    10の16乗を表す単位です。(一・十・百・千・万・億・兆・京・がい・・・)

応用例(創薬&がん治療)

創薬(分子類似性の計算)

化学・製薬企業の研究所では、新しい物質を発見したり、新しい薬を開発したりしています。例えば、研究員がある薬と同等以上の効能を持った別の薬を創りたい時に、 まずその薬の分子構造が似ているものを、データベース*の中で探し、どれくらい似ているかを計算します(分子類似性検索)。この時、原子単位まで一致しているかを調べられると、非常に類似性の高い検索ができます(つまり、その薬は似ている、ということです)。似ているものから実際の実験に使えば、新しい薬を開発する時間を短縮することができます。

  • データベースとは、大量のデータ(情報)を集めて、コンピュータでデータの追加、削除、検索をしやすい形に整理したものです

がん放射線治療

従来の放射線治療は、複数の方向からがんに向かって放射線ビームを照射します。がんの領域でビームが重なりあうことで放射線量が最大化し、がんを効果的に攻撃することができます。しかし、がんに隣接する重要臓器を被ばくしてしまうという問題がありました。そこで最近では、強度変化型の放射線治療で、がんと隣接する重要臓器の位置関係に合わせて、ビームの強度や照射パターンを細かく調整することができます。それはがんと隣接する重要臓器の位置関係に合わせて、ビームの強度や照射パターンを細かく調整できます。隣接する重要臓器への被ばくを抑えながら、がんのみに高い放射線を照射することが可能になりました。被ばくリスクの少ない放射線治療が受けられるようになった一方で、その治療計画には膨大なコンピュータシミュレーションが必要となっています(治療計画作成の計算量が膨大)。従来、数日から1週間以上かかっていた治療計画の作成を、デジタルアニーラを導入することにより、1日以内に短縮することができる技術の研究に取り組んでいます。

  • がんの治療計画に膨大なコンピュータシミュレーションが必要です。数日から1週間以上かかっている治療計画の作成を、デジタルアニーラを導入すると、1日以内に短縮できる技術の研究に取り組んでいます!

  • すぐにでも治療を始められることを目指しているってことですよね!すごい技術ですね!

(その他)
デジタルアニーラは、富士通グループの石川県にある工場で倉庫部品のピックアップ手順の最適化に活用しています。デジタルアニーラで倉庫に置いてある複数の部品を集荷する人の最短経路を算出し、移動距離を約30%短縮しました。また、棚のレイアウト最適化にも取り組んでいて、部品の配置を変えたことにより、月間の移動距離を約45%短縮しています。


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