一般車載機映像から交通シーンを高精度に再現し、持続可能な安全社会を実現するデジタルツイン映像解析システムが「映像情報メディア学会 第52回技術振興賞」を受賞
2025年7月3日
左から、金武 純、湯本 麻子、藤田 卓志
一般車載機映像から交通シーンを高精度に再現する「移動体映像シーン3次元解析技術」が、このたび、一般社団法人映像情報メディア学会の第52回(2024年度)技術振興賞 進歩開発賞(研究開発部門)を受賞しました。本技術は、未活用だった大量の収集映像データから、新たな価値を創造する高度な解析技術です。
贈呈式は、5月30日(金)に機械振興会館(東京都港区)にて行われました。
技術振興賞 進歩開発賞(研究開発部門)について
映像情報メディア学会の技術振興賞 進歩開発賞(研究開発部門)は、映像情報メディアに関する研究・開発等で著しい功績をあげた個人または団体に授与されるものです。
受賞内容
「一般車載機映像から交通シーンを高精度に再現して、持続可能な社会を実現するデジタルツイン映像解析システムの開発と実用化」
受賞者
Digital Twin Analyzer技術開発チーム
湯本 麻子 (富士通 コンバージングテクノロジー研究所 プリンシパルリサーチャー)*
藤田 卓志 (富士通 コンバージングテクノロジー研究所 リサーチャー)*
金武 純 (富士通 クロスインダストリーソリューション事業本部)*
大下 朋也 (富士通 クロスインダストリーソリューション事業本部 シニアディレクター)
羽佐田 理恵 (富士通 クロスインダストリーソリューション事業本部)
渡辺 康人 (富士通 人工知能研究所 プリンシパルリサーチャー)
西野 雅之 (富士通 エンタープライズ事業本部)
福井 琢 (富士通 人工知能研究所 シニアリサーチャー)
- *代表者
技術概要
近年、ドライブレコーダー等の車載カメラが普及し、一般車両の走行映像を大量に収集できるようになり、その映像から交通シーン(自車や他車の位置や速度、道路周辺の地物位置など)を自動解析したいというニーズが高まっています。
例えば、損害保険業界では、事故解析のために映像を目視確認し、関係者へのヒアリングを行っていましたが、客観的かつ低コストな自動解析技術が求められています。また、自動運転の実現には高精度地図が不可欠ですが、測量車による地図生成・更新には膨大な時間とコストがかかるため、一般車両の映像から交通シーンを解析し、道路周辺地物の変化を把握することが効率的な地図更新につながると期待されています。
しかし、従来の高精度な車載映像シーン解析技術、特に重要な撮影カメラの位置や姿勢を推定する技術は、高価な加速度センサー・ジャイロセンサー・LiDAR・高精度GPSなどのデータが必要で、映像とGPSのみの一般車両データは活用できないという課題がありました。
本課題を解決するため、我々は映像とGPSデータのみから、撮影カメラの位置と姿勢を高精度に推定する独自のVisual SLAM技術「Visual Locator®(以後VLOC)」を開発しました。このVLOC技術は、同ルートの複数回走行映像の比較解析向けに、過去の同一ルートの走行解析結果を活用する機能も持っており、走行ごとに異なるGPSの位置誤差に依らない、高精度な位置姿勢推定が可能です。
このVLOC技術と、映像内の物体をAIで認識する技術を組み合わせることで、従来技術に比べて1/10以下の位置ずれ精度で、0.05秒間隔など高い時間分解能で交通シーンを解析・比較することが可能になりました。
初めて既存の大量の一般車両データを活用できるようになった、これら技術を実用化した「Digital Twin Analyzer®」は、交通事故分析、安全運転教育、自動運転向け地図整備・実験など、幅広い分野への応用が期待されています。現実世界の交通シーンをデジタル上で再現・分析・予測することで、持続可能な交通安全社会の実現を目指します。
受賞代表者コメント
湯本 麻子
藤田 卓志
金武 純
この度は、名誉ある賞をいただき、大変光栄に思います。研究開発した技術を、製品開発チームが一丸となって実用化に向けて磨き上げたことが、製品化、活用、そして今回の受賞に繋がったと思います。支えてくださった皆様、叱咤激励し共に技術を育ててくださったお客様、そして受賞のために力を尽くしてくれた関係者の皆様に、心から感謝申し上げます。
今回のコア技術は、比較的オーソドックスな画像処理ですが、お客様が求める高い説明性ニーズに合致し、ご活用いただけました。今後のAIやデジタルツインの時代においても、多くの情報を手軽に伝えられる映像技術は、ますます重要になるはずです。今回の受賞が、その発展に少しでも貢献できれば嬉しいです。
これからも、社会に役立つ技術開発を目指し、挑戦を続けてまいります。
関連情報
・【業界初】テレマティクス技術を活用した事故対応システム「テレマティクス損害サービスシステム」の提供を開始(2019年8月9日プレスリリース)
・自動車ビッグデータの活用を加速する車載カメラ映像解析プラットフォーム「Digital Twin Analyzer」を販売開始(2020年9月10日プレスリリース)
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