富士通が令和4年度「第70回電気科学技術奨励賞」を2件受賞
AI体操採点システムと大規模AI高速化技術において
2023年1月23日
富士通の「AI体操採点システムの実用化」と「大規模AI高速化技術の研究」が、このたび、公益財団法人 電気科学技術奨励会主催の第70回電気科学技術奨励賞を受賞しました。
贈呈式は、11月25日(金)に学士会館(東京都千代田区)にて行われました。
電気科学技術奨励賞について
公益財団法人 電気科学技術奨励会が主催し、昭和27(1952)年から、日本の電気科学技術に貢献した功労者をたたえ顕彰し、電気科学技術奨励賞を贈呈しています。
受賞内容
① 3Dセンシング・技認識技術によるAI体操採点システムの実用化
・受賞者
矢吹 彰彦 (富士通 研究本部 Gプロジェクト シニアリサーチエキスパート)
佐々木 和雄 (富士通 Digital Solution事業本部 スポーツビジネス統括部 シニアディレクター)
井谷 司 (富士通 研究本部 Gプロジェクト プロジェクトディレクター)
・技術概要
AI体操採点システムは、3Dセンシングと技認識の両技術で構成されています。3Dセンシングは、LiDAR (Light Detection and Ranging)方式の3Dレーザセンサによって取得された3次元点群から、深層学習と人体モデルへのフィッティングにより人の動きを3次元でデジタル化して3D骨格座標を求める技術です。技認識は、国際体操連盟との連携によって採点ノウハウをデジタル化した採点規則を参照して、3D骨格座標の時系列情報から実施技を自動判定する技術です。
当社は、国際体操連盟・日本体操協会との連携により、体操競技における正確かつ公平な審判採点を支援するため、AI体操採点システムを実用化しました。2016年から国内外でのデータ取得や実証試験を経て、2019年に国際体操連盟により4種目に関する正式採用が承認され、同年10月のシュトゥットガルト世界体操競技選手権大会より公式運用が開始されました。現在は全10種目の適用に向けた技術開発を進めるとともに、他競技・他分野へのビジネス展開を目指しています。
・受賞者コメント
左から、佐々木 和雄、矢吹 彰彦、井谷 司
矢吹 彰彦 シニアリサーチエキスパート
AI体操採点システムの技術は、器械体操の2回宙返り4回ひねりといった運動の限界に挑戦する、1300種以上の技を採点レベルの精度で認識できる世界初のものです。本システムを世界選手権の場で実用化したことを、日本の電気科学技術への貢献として評価していただき大変光栄に思います。今後、採点だけでなく、競技を理解して楽しむことや練習の場で活用することで社会に貢献できるよう開発していく所存です。
佐々木 和雄 シニアディレクター
今回、このような名誉ある賞をいただくことができ大変光栄に思います。開発当初から、その技術難易度の高さに苦労することも多かったのですが、チームメンバーの頑張りでここまでたどり着くことができたと思います。メンバーとこの喜びを分かち合いたいと思います。
井谷 司 プロジェクトディレクター
一瞬の間に3回、4回ものひねりや回転がなされるなど、非常に高速で複雑なトップアスリートの動きを正しく捉えて認識するという高い難易度の課題に対し、メンバー全員の努力とチームワークで多くのキーとなる技術を開発し、実用に結び付けることができました。メンバーでこの名誉ある賞の受賞を喜び、分かち合うとともに、さらに活用の幅を広げられるように努めてまいります。
関連情報
・国際体操連盟と富士通、体操競技の採点支援システムの実用化に向けて提携(2017年10月8日プレスリリース)
・「第49回世界体操競技選手権大会」で富士通の採点支援システムを正式導入(2019年10月2日プレスリリース)
・「AI体操採点システム」のAI技術をウェルビーイング領域へ適用する実証を開始(2021年10月8日プレスリリース)
本件に関するお問い合わせ
② Society5.0の実現を支える大規模AI高速化技術の開発と実践
・受賞者
笠置 明彦 (富士通 研究本部 コンピューティング研究所 プロジェクトマネージャー)
山崎 雅文 (富士通 研究本部 コンピューティング研究所 プリンシバルリサーチャー)
田原 司睦 (富士通 研究本部 コンピューティング研究所 プロジェクトマネージャー)
・技術概要
Society5.0は仮想空間と現実空間を高度に融合させたシステムにより経済発展と社会的課題の解決を両立させる社会であり、目指すべき未来社会の姿として提唱されました。このSociety5.0を実現するために、AI技術は必要不可欠な技術分野です。しかし、AI技術の開発で生じる膨大な計算需要に対して、LSI(大規模集積回路)の微細化による従来のアプローチだけでは性能向上が頭打ちとなり、十分な計算能力を供給できなくなります。
我々はこの課題に対し、大規模にコンピュータを束ねてAI技術開発を行う分散並列深層学習技術を継続的に開発し、富士通製のスーパーコンピュータ「富岳」やABCI(AI Bridging Cloud Infrastructure)(*)といった計算機基盤で世界最高速のAI処理速度を達成しました。
- *ABCI:国立研究開発法人産業技術総合研究所様が構築・運用する、世界最大規模の人工知能処理向け計算インフラストラクチャ
・受賞者コメント
左から、山崎 雅文、笠置 明彦、田原 司睦
笠置 明彦 プロジェクトマネージャー
この度、このような名誉ある賞を頂き大変嬉しく存じます。富士通研究所がこれまで培ってきた大規模計算機に対するHPC (High Performance Computing) 技術がAI分野に対して花開いた結果だと感じております。今後もこの技術を富士通の強みとし、様々な社会課題の解決に向けて励んでいきます。
山崎 雅文 プリンシバルリサーチャー
私は半導体事業とSE職に携わった後、研究所に異動しました。研究所で最初に取り組んだものが、ディープラーニングの大規模な学習処理の高速化でした。近年のディープラーニング技術を応用したAIの発展には驚くばかりですが、この分野でスパコン(HPC環境)を活用した、大規模学習処理への貢献について評価頂けたことをとても嬉しく思っております。様々な場面で一緒に挑戦していただいた多くのメンバーのご協力に感謝しております。ありがとうございました。
田原 司睦 プロジェクトマネージャー
このような素晴らしい賞を頂き大変光栄に思います。本研究では失敗も多かったですが、粘り強く取り組んだメンバーと、技術を温かく見守り支えていただいた皆様のおかげで、一つの形とすることができました。どうもありがとうございます。今後も、大規模・高速処理だからこそできる技術の開発と応用に努め、社会に還元していくことを目指します。
関連情報
・Deep Learning学習処理の高速化技術を開発(2016年8月9日プレスリリース)
・世界最高速を達成!ディープラーニングの高速化技術を開発(2019年4月1日プレスリリース)
・機械学習処理ベンチマークMLPerf HPCにて最高レベルの速度を達成(2020年11月19日プレスリリース)
・スーパーコンピュータ「富岳」が機械学習処理ベンチマークMLPerf HPCで世界第1位を獲得(2021年11月18日プレスリリース)
本件に関するお問い合わせ
contact-comp-aihpc@cs.jp.fujitsu.com
EEA (European Economic Area) 加盟国所在の方は以下からお問い合わせください。
Ask Fujitsu
Tel: +44-12-3579-7711
http://www.fujitsu.com/uk/contact/index.html