マスク着用に対応した富士通の顔認証技術が米国NIST評価で世界トップレベルを達成

顔認証ベンダテスト（FRVT）について

数多ある顔認証技術の認証精度を公正に評価する目的で、NISTが顔認証ベンダテスト(FRVT) を主催しています。FRVTでは、様々な人種や年齢を含む100万を超える人物の顔を用いて、パスポートやビザによる本人認証など、幅広いアプリケーションに適用される大規模な顔認証エンジンの評価を行っており、国内外問わず100を超える団体が参加しています。
富士通は、顔画像を用いた本人確認を目的とした評価に参加し、2021年8月に実施されたマスクを着用した顔画像での精度評価結果において、世界第3位かつ、国内ベンダの中ではトップの順位を獲得しました。

自然なマスク合成技術で顔認証の精度がUP！

今回、マスクを着用していても高精度に顔認証できる技術を開発しました。一般的な顔認証技術では、マスク着用時に顔の大部分が隠れるために顔の見え方が変わり、正しく認証されないケースが生じてしまいます。そこで、マスクをしていない顔画像に対してマスクを合成した顔画像を生成して学習する技術を開発したことで、マスクの有無による見え方の差異を吸収してマスク着用時でも高精度な顔認証を実現しました。
開発技術により、屋内の公衆の場でもマスクを外すことなく顔認証による本人確認を実現できます。

顔画像にマスクを合成する技術

■開発者コメント

・先端融合技術研究所　松濤 智明 シニアリサーチャー

マスク着用時の顔認証の需要が高まる中、世界中の顔認証ベンダが参加する公正な評価で好成績を収めることができ、とてもうれしく思っています。研究開発は、富士通研究開発中心有限公司（FRDC）のメンバーが顔認証モデルの学習を担当し、私は顔認証全体のアルゴリズム開発を推進しました。
メンバー全員が密に連携して研究に取り組み、結果が出せたと思います。これからも皆で協力して、さらに上位を目指します。

・富士通研究開発中心有限公司（FRDC）　Meng Zhang 研究員

一般的な顔認証技術は、ディープラーニングを用いることで良い精度を得られるようになりましたが、マスクを着用した顔に対しては、精度が低下するという課題がありました。そこで私たちは、顔の姿勢や照明環境を保ったままマスクを着用した任意の顔画像からマスクを着用していない顔画像へマスクを合成する技術を考案し、従来のデータ増強手法よりも自然なマスク着用画像を学習データに追加できるようにしました。
さらに、マスクによって隠れた部分を無視しながら、認証に有用な特徴に重みを与えるように学習することで、マスク着用時でも高い認証精度を達成できました。今回のFRVTの結果は、チームの全員が協力して知識を高め合った結果だと思います。

・富士通研究開発中心有限公司（FRDC）　Guo Song 研究員

ディープラーニングを用いた顔認証技術の精度を改善するために、マスク着用時と非着用時の双方を含む大規模顔データセットを構築しました。さらに、このデータセットに対応した新しい学習方式を開発しました。
これらの開発技術が功を奏してFRVTでの好成績につながったと思っています。
私たちは緊密な連携が取れている良いチームで研究を行っており、大きな進歩を達成することができました。

今後について

マスクを着用した状態で、カメラに正対しなくても認証できる顔姿勢により、ロバストな顔認証技術の開発を進めていきます。さらに、マスクを着用したまま利用可能なキャッシュレス決済などに適用し、ニューノーマル時代の生体認証技術として活用範囲を広げていきます。

関連情報

・非接触でクリーンなマルチ生体認証技術を開発 （2021年1月21日プレスリリース）

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