プロジェクト事例:AI電力需要予測ソリューション
電力小売事業者様向けPoC(概念実証)実施事例

プロジェクトの背景・経緯
お客様は電力需要予測業務において、予測精度、業務負荷、属人化という3つの課題を抱えていらっしゃいました。
- 予測精度
高精度な予測を実現するためには、最新かつ膨大なデータ収集と緻密な分析が不可欠であり、相応の時間と労力がかかります。当日の電力調達のために、朝から気象情報や使用実績などの最新データを収集し予測を行っていましたが、分析に十分な時間を確保できず、予測精度向上に課題が残る状況でした。
- 業務負荷
限られた時間とリソースの中で出来るだけ精度良く予測業務を行う必要があり、担当者の負担が大きい状況でした。
- 属人化
予測精度は担当者の経験やスキルに左右されるため、予測精度にバラつきが生じやすく、ノウハウの共有や後任者の育成が困難な状況でした。
こうした背景から、業界全体でAIを活用した予測精度向上へのニーズが高まっています。これらの課題を解決するために、当社ではAI電力需要予測ソリューションをお客様に提案し、過去実績や気象情報などのデータを用いたAI予測モデルの作成、PoC(Proof of Concept)(注5)による効果検証を実施いたしました。
プロジェクトのポイント
プロジェクトの効果
AI電力需要予測ソリューションの導入により、従来の担当者予測と比べて予測精度が7%(91%→98%)向上しました。これは過去データに基づきAIが学習・最適化を重ねた成果であり、その有効性を示すものです。この精度向上により、インバランス料金の大幅な削減が見込まれ、コスト削減効果が期待できます。 また、AIによる予測業務の自動化は、担当者の負荷を軽減し、より高度な分析・戦略立案に時間を使えるようになります。本ソリューションを活用することで、担当者のスキルや経験に左右されず、誰が予測しても同様の結果が得られるため、業務の属人化を解消できます。 加えて、AIは過去データから地域特性、需要家属性、イベント等の複雑な要因を考慮して予測を行うため、新たな知見の発見にも繋がります。これらの知見は、より精緻な電力調達計画や料金設定を可能にし、競争優位性の確立に貢献できると考えています。
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【定量的な効果】
- 予測精度7%向上(91%→98%)
- インバランス料金の削減
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【定性的な効果】
- 業務効率化
- 属人化の解消
- 高度な予測分析の実現
プロジェクトメンバーインタビュー
最初にお客様とお話しした際、AIに対する期待とともに、本当に効果があるのかという不安も感じていらっしゃるのが伝わってきました。 そこで、まずはPoC(概念実証)をご提案し、実際にAIがお客様のデータでどれくらい予測できるのか、試していただくことにしました。 PoCを進める中で、お客様のデータや業務について私自身も深く理解する必要があると感じました。お客様の担当者の方々と何度も意見交換を重ね、課題やニーズを共有したことで、よりお客様に合ったAIモデルを構築することができたと思います。PoCの結果、予測精度が向上し、コスト削減効果が見込めることが分かり、お客様にもご納得いただけました。 今回の経験を通じて、お客様との信頼関係が重要であることを改めて感じました。これからも、お客様との信頼関係を大切にしながらニーズを丁寧にヒアリングし、最適なソリューションをご提案することで、お客様の事業成長に貢献していきたいと考えています。
注釈
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注1説明可能なAI:
AIの判断根拠を人間が理解できるようにする技術のこと。 -
注2電力小売事業者:
発電事業者から電力を調達し、一般家庭や企業などの需要家に対して電力を販売する事業者のこと。 -
注3地域特性:
地形、気候、産業構造、業務形態など、その地域ならではの特徴や性質のこと。 -
注4インバランス料金:
電力の需要と供給のバランスが崩れた際に発生する料金のこと。 -
注5PoC(Proof of Concept):
概念検証。新たなアイデアやコンセプトの実現可能性、得られる効果などを検証すること。