FLMトピックス

交流会で新たな視点!企業の壁を超えて、現場の課題を共に考える

記事公開日:2023年5月12日

 富士通ラーニングメディア(以下、FLM)は人材育成のパートナーとして、それぞれの企業のニーズに沿ってサービスをご提供しています。人材戦略の重要性がますます高まるなか、組織開発支援の領域も新たなサービスに加え、これまでにない形の支援プログラムを開発することで、お客様を多角的にサポートして参ります。

 企業における人材戦略の重要性は、かつてないほど高まっています。人的資本の情報開示義務化は、2023年3月期決算以降の有価証券報告書からいよいよスタート。人事や人材開発に携わる方々に求められる役割も、増しています。私たちFLMは、人事や人材に関わる課題と日々向き合っていらっしゃるお客様をこれまで以上にサポートしたいと、ワークショップ形式の「お客様交流会」を実施しています。企業の壁を超えてお客様同士が課題を共有し、お互いの悩みに共感したり、新しい視点を得たり、次の一歩につながる場になればと考えています。

 毎回活発な意見が交わされる「お客様交流会」ですが、今回は3月に開催した同会の様子をご紹介いたします。正解を導き出すのではなく思いや考えを語り合う中から、課題に対するリアルな声や、新たな発想も見えてきます。

ご参加いただいた皆様
Aチーム
  • 富士ソフト株式会社 ASI事業部第2システム部 今川 幹隆 様
  • 富士電機ITソリューション株式会社 管理本部人材開発センター 福園 由香 様
  • 他、計3名様
(FLMのサポートメンバー)
  • メインファシリテーター:弘 淳(営業担当者)
  • サブファシリテーター:大木 宏昭(営業管理職)
  • 書記:馬場 克明(営業管理職)

Bチーム
  • パナソニック コネクト株式会社 採用部 オンボーディング推進課 田中 美穂 様
  • 株式会社ホンダテクノフォート 総務人事部 人事ブロック 人事企画Gr 齋藤 昭文 様
  • 富士電機ITソリューション株式会社 管理本部人材開発センター 𡈽屋 絵梨子 様
  • 株式会社CLIS 管理本部 新道 功司 様
(FLMのサポートメンバー)
  • メインファシリテーター:松山 亮太(営業担当者)
  • サブファシリテーター:西坂 浩一(営業管理職)
  • 書記:岩下 誉也(営業担当者)

全体進行
FLM ソリューション本部 富士通プロジェクト統括部 人材育成デザイン準備室 室長 伊藤 正泰

Step1:インプットセッション

 当日は6社7名の方にご参加いただきました。今回、業種としてはITソリューション系の企業が多かったのですが、所属やお立場は様々で、採用から人材育成、役員職の方もいらっしゃいました。


 意見交換に入る前に、インプットとしてFLMの伊藤正泰から、2023年2月8日にオンライン開催された「Fujitsu 人材育成セミナー2023」第1部の基調講演(一橋大学CFO教育センター長 伊藤邦雄氏による「企業価値を創造する人的資本経営」*)の振り返りを行いました。なぜいま、人材をコストと見なして管理する考え方をやめ、人材の価値を高めて持続的な企業価値の向上につなげる「人的資本経営」への転換が求められているのか?「人的資本経営」の本質とは何か?実現する上で重要なことは?といった講演の要点を確認していきました。

 また参考として、社員のエンゲージメントを高めるためにFLM社内で行なっている以下の取り組みについても簡単にご紹介しました。

  • サンクスカードによる心理的報酬の与えあい(今回の交流会でも実施)
  • 組織・ひと 名鑑」を使った組織・チーム/プロジェクト・個人の可視化
  • 1on1等を通した、組織と個人のパーパスの関連付け強化
  • 協力会社も含めた調整や新しい業務へのチャレンジによる業務負荷の分散
  • 心理的安全性向上のため、在宅勤務でもオンラインで雑談できる場を設定

Step2:セルフチェック

 そして伊藤邦雄氏の講演の中から特に、人材をめぐる企業の取り組みの有無・成否によって今後予想される二極化についての7つの観点に注目。お客様ご自身や所属されている企業として、「入社3年時までの離職に歯止めをかけられているか」「経営陣が社員のエンゲージメントを重視しているか」などの7項目についてどのくらい「うまくできていると思う」か、5段階で自己評価していただきました。

Step3:ディスカッション

 参加者は2つのテーブルに分かれて座り、それぞれのテーブルにFLMのファシリテーター(メイン&サブ)と記録係の計3名が付いて各ステップの進行をサポートしていきます。テーブルごとに、まず自己紹介をしていただきました。会社の主な業務内容、所属や部署だけでなく、日頃こんなお悩みがあって参加されたといった動機を話してくださる方もいらっしゃり、すぐに打ち解けたムードになりました。次に、先ほどのセルフチェックの結果から、各テーブルでディスカッションするテーマを抽出します。その結果、両テーブルでは合わせて5つの課題が話し合われました。

  1. 人を大切にする会社とは?
  2. 入社3年目での離職問題
  3. 離職への歯止め
  4. スキルの可視化/経営連動性
  5. エンゲージメント調査・対策


 各議題に沿って両テーブルで続いたやりとりは、現場で日々人材にまつわるお仕事に携わっている方々同士でなければわからない、本当にリアルで濃密なものでした。その中でも特に、両テーブルで関心の高さが窺えたのが、離職問題。そして各議題の中でつねに根深い問題として見え隠れしたのが、社内に潜む様々なギャップでした。

入社3年目離職問題、流動化の波は止まらない?

 今や入社3年以内に約3割の人が離職すると言われています。労働人口の減少が進む中で、入社して以降長い時間を掛けて育ててきた社員がようやく戦力になるかどうかのタイミングで出ていってしまうのは会社としては痛手です。参加者の方々からは、離職を防ぐために大事なこととして、働きがいや自分の存在意義を感じられること、頑張ったら称賛をもらえること、社員各々のパーパスが会社のパーパスと合致していること、コミュニケーションが取れていること、適切な報酬があることなど、様々な意見が出されました。そして話はさらに最近増えている「カムバック社員」の話題へ。

カムバック社員を、歓迎できるくらいに発想の転換を

 一度は離職したものの再び入社を希望する「カムバック社員」。ある参加者の方の会社では、その対応をめぐって社内で見解が分かれているといいます。

 年齢が高い上層部の人たちは、一度出ていった社員に対して厳しい目を向け、採用をしようとしません。しかし考え方を変えてみると「他所でステップアップして戻ってきてくれた」とも捉えられるのではないか?というご発言に対して、今は人材の流動性が高い時代なので、ある程度辞めていく人がいることは、前提として受けとめるべきではないか。出ていく人の流れを止めようとすることも大事だけれど、出ていく人をいつか戻ってきてくれることを願いつつ見送れないだろうか。いっそ退職者にカムバックを呼びかけるくらいのことをしても良いのではないか、といった意見が出されました。

キラキラ職場と、社内に存在する様々な格差

 離職と関連して、社内の格差も両方のテーブルで話題に上りました。同じ社内でも将来性に期待がかけられている仕事の多い部署は、とてもキラキラしていて、エンゲージメントの数値も高い。社員の多くは自分たちがキラキラ輝いていると感じられるところで働きたいと思っている。しかし反対に売り上げが減っていたり、新しいニュースがなくてあまり目立たない仕事を続けている部署もあります。経営者目線に立てば、そういう部署はいずれカットしてしまえばいいと思うのかもしれないけれど、目の前のお客様、目の前の仕事に対してどうすればよいのか。モチベーションをどうすれば持てるのか。答えはまだ見えません。

 世代間や、部門間、あるいは立場の違いによって生まれる社内ギャップは、様々な場面で問題になっています。例えば人材情報を可視化するといって、様々なスキルデータを作ったのに、上の世代には見ようとしない人もいるとのこと。デジタルのデータには目を向けず、好きか嫌いかなどの主観で相手を評価してしまうというケースもまだあるそうです。

データだけではわからない、人の問題には正解がない

 しかし人材情報のデータを見るだけでは、わからないこともたくさんあります。データ上では同じレベルのスキルや経験値の社員でも、なぜか仕事のパフォーマンスでは差が開くことがあるとのこと。パフォーマンスが低い方の人について、仕方がないとそのまま諦めずに、何が合っていないのかを一緒に考え職種の違う部門へ異動させたところ、活躍できるようになった例もあると言います。スキルの見える化ができたからといって、データだけで人材の価値を全て判断してしまうことはできないという実感を得られるエピソードでした。


 ある議題の中で出てきた「人の問題には、正解がないじゃないですか」という言葉は、とても印象的でした。複雑で難しく奥の深い「人の問題」。例えば上司一人が社員と向き合い、判断し、責任を負うというのでは荷が重すぎます。多面的なフォローやサポートが大切だというお話は、人材戦略全てにわたって言えることかもしれません。

Step4:サンクスカード【ミニ体験会】

 ご参加いただいたお客様同士で「ありがとう!」を伝えたい方に、「サンクスカード」を贈っていただきました。この「サンクスカード」は、社内コミュニケーション活性化のために、FLM内で始めたツールです。受け取ると頑張ったかいが感じられ、贈る側もうれしい気持ちになると、いま、富士通本体をはじめ富士通グループでも多くの企業が活用しています。前述の伊藤邦雄先生も、「日本企業にはもっと称賛の文化の醸成が必要ではないか。」とお話しされていましたが、このような小さな心理的報酬も、実は人的資本を高めることに繋がります。実際に贈る側と受け取る側、両方の気持ちが実感できる機会ですので、ワークショップの最後に体験していただきました。

Step5:ラップアップ

 最後にそれぞれのタブレットから本日のアンケートとして感想を書いていただきました。「他社の事例を聞くことができて参考になった。」、「貴重な意見交換ができた。」、「自社内での活動に取り組む勇気をいただいた。」、「本音トークで思わぬ共感もあり、めげずに頑張ろうと思います。」、「サンクスカードはとても気持ちが盛り上がりました。」など、交流会の意義を感じられる言葉がたくさん寄せられ、大変うれしく思います。今後交流会で扱ってほしいテーマや情報も、たくさん書いていただきましたので、またぜひ次回へ繋げて参ります。ご参加いただいた皆様、誠にありがとうございました!

富士通ラーニングメディア担当者からのメッセージ

 ソリューション本部 富士通プロジェクト統括部
人材育成デザイン準備室 室長
伊藤 正泰

 人材に関わるお仕事をされている方々の役割は、今後ますます重要性が増すことが予想されています。このような時、私たちFLMはお客様が抱えていらっしゃる現場でのお悩みや課題を共有することが大切だと思い、このような「お客様交流会」を企画し、今回で3回目を迎えました。
 企業の人事部門や人材に関わることは、これまで情報が外に出ないよう社内に閉じられていた部分が多いですが、今後は情報の開示が求められていることもあり、外からの視点を意識されることも多くなるかと思います。「お客様交流会」を通じて、気づきやご自身のお仕事に対するフィードバックを得ていただけましたら大変光栄です。


ナレッジサービス事業本部 本部長
三原 乙恵

 企業はこれから人材戦略だけでなく、人材戦略を実行・実現していく道筋まで注目される時代になります。例えば新しい制度を打ち出したら、その制度を現場の社員へ浸透させること、その結果どのような効果が生まれているか検証することなども必要とされます。
 人事や人材に関わるお仕事の領域が広がっていくと、様々な不安を感じられることもあるかもしれませんが、私たちは常にお客様に寄り添って、一緒に課題を見つけながら、人と組織が共に成長するご支援をできればと思っています。


※ 本記事の登場人物の所属、役職は本交流会開催時のものです。