お客様インタビュー
業務に寄り添った実践的なマニュアルで、タレントマネジメントシステムの価値を引き出す
ニッセイ情報テクノロジー株式会社
NISSAY IT アカデミー 教頭 兼 人財開発室 室長 平井繁行様
記事公開日:2024年6月21日
戦略的な人員配置のため、あるいはメンバー個々の能力を十分に発揮させるため、「タレント」を適切に活用することが今、企業にとって喫緊の課題となっています。ニッセイ情報テクノロジー株式会社では、そういった課題解決の第一歩として、タレントマネジメントシステムを採用。しかしシステムに標準添付されている操作マニュアルだけでは、実際の業務内でシステムを活用するには不十分であることがわかりました。
そこで同社は富士通ラーニングメディア(FLM)に、業務で実践的に活用できるマニュアルの作成を依頼。マニュアルの導入以降、タレントマネジメントシステムはどのように機能しているのか。同社でNISSAY IT アカデミー教頭と人財開発室室長を担う平井繁行様に伺いました。
企業に求められるIT人材、その育成は誰が担うべきか?
──御社が日本生命グループ全体のIT人材育成基盤の構築を担うことになった経緯を教えてください。
平井様:社会環境やお客様の志向が変化する中、日本生命グループでは2019年に「デジタル5カ年計画」を掲げて「お客様の期待を超える体験を提供」することを目指し、グループ一体となってIT・デジタル活用を推進してきました。AIによる商品提案の高度化、Web手続きの拡充、データを活用した新たな商品・サービスの提供など、ご提供する価値のブラッシュアップ・スケールアップに取り組んでいます。
平井様:当然のことながら、IT・デジタルを駆使した新たな価値の提供に向けては、その担い手となるIT人材の育成強化が不可欠でした。同時に、グループ各社の垣根を超えた人脈形成を促し、グループ内シナジーを高めていく必要もありました。そのために、グループ全体のIT人材育成を主導する組織が求められていたのです。
そこで、2019年当時代表取締役社長だった矢部 剛(現・代表取締役会長)が、「ITおよびDX人材を育成するミッションは、グループ内でITを専門としている当社が担うべきではないか?」と発案しました。そして「この際、日本生命グループ全体に寄与できる組織体に変えよう」ということになり、当社のヒューマンリソース部(人事部門)から人材育成領域だけを切り出し、強化して作った組織が、2020年に創設した「NISSAY ITアカデミー」です。
タレントマネジメントシステムを真に活かす、実践的マニュアルの必要性
──IT人材育成に向けた施策の一環としてタレントマネジメントシステムを導入されたわけですが、どんな意図があったのでしょうか。
平井様:タレントマネジメントシステムに、各社員が培ってきたキャリアや実績、スキルなどを入力することで、社員自身のキャリア形成につなげると同時に、その情報を人事や戦略的なプロジェクト配置にも活用する。結果として、社員のキャリアアップにも会社の成長にも寄与する、「前向きに使うツール」にしていくことを目指しています。
NISSAY ITアカデミーのステートメントに「前向きかつ主体的な自己成長」というものがあるのですが、大手企業に勤務している人というのは士気も規範意識も高く、「自身の役割をきちんと果たそう」としている人が大半であると感じます。当社においても、ほとんどの社員は責任感をもって、主体的に自分の仕事に取り組んでいます。しかし「日々ワクワクしながら前向きに仕事や自己研鑽に取り組めていますか?」と問うと、言葉に詰まる社員がいるのも実状です。
仕事というのは本来「前向き」に取り組んだ方が面白くなるものですし、結果にもつながりやすいはずです。この「前向きかつ主体的な自己成長」を実現させるための1つのツールとして、タレントマネジメントシステムをうまく活用してもらいたい。「会社から言われたから入力します」ではなく、自分の今後のキャリアをより豊かにするために使う、悩める若手が先輩のキャリアを参考にする、人事や各事業部がプロジェクトに必要な人材をアサインする、といったように、誰しもがメリットを感じ、成長に寄与するドライバーとして使ってもらうのが理想です。
──その過程でなぜ、既存の操作マニュアルの範疇を超えた独自マニュアルの作成を企図したのですか。
平井様:前向きに新しいシステムを使ってもらうためには、「操作が複雑で面倒だから」あるいは「どう使えばいいかよくわからないから」という基本的な段階でつまずくわけにはいきません。そういったつまずきを回避し、まずはスムーズに使い始めてもらいたいと思いました。また、マニュアルの品質を高めることで、現場からの問い合わせが減り、ミスなく作業できるようになって手戻りも減るので、システムを運用する側の生産性を高めることもできます。より大きなゴールへ向かうための第一歩として、「実践的なマニュアル」の必要性を感じていました。
「目的と背景」を理解するヒアリングで本来の価値を引き出す
──そういった考えに基づいてマニュアルを作成する際、なぜ委託先にFLMを選んだのでしょうか。
平井様:実は今回のマニュアル作成を依頼させていただく以前に、FLMさんには当社の「技術者認定制度」の我々事務局側の運営もマニュアル化していただきました。その際の対応力や完成したマニュアルの品質が素晴らしく、マニュアル作成ならFLMさんだろう、と思い今回のご依頼に至りました。
当時、技術者認定制度の運営フローと作業タスクは、ごく少数の担当メンバーの頭の中だけにあるという感じで完全にブラックボックス化していたのです。当初は、技術者認定制度の運営フローマニュアルを社内で作ろうとしていました。しかし内容があまりにも膨大かつ、作業とアウトプットの依存関係も複雑で、さらには年々制度内容や運営が変わっていたため、どこから手を付けていいかもわからず、担当者は困り果てていました。
そこでFLMさんに相談のうえマニュアル作成を依頼してみたところ、ブラックボックスを見事に可視化し、素晴らしい形で整理してくださったのです。
具体的には、膨大な作業タスクがどのような順序で進んでいくのかということを鳥瞰的にまとめたうえで、それぞれのタスクに対してどういった書類提出が必要かを一覧化。さらに、それぞれのフェーズにはどんなステークホルダーが出てきて、各々どういった役割があるのかということが、誰もが一目瞭然でわかる形にしてくださった。いや素晴らしかったですよ。
──出来上がりが非常に良かった、と。
平井様:完成品のクオリティが非常に高かったというのはもちろんですが、それと同様に素晴らしかったのが、そこに至るまでのヒアリング力でした。「必要なタスクを洗い出してください」「出てくる人を言ってください」などのよくあるヒアリングだけではなく、「これは、次の段階にはどのような影響がありますか?」などタスク間の依存関係まで、丁寧にヒアリングしてくださったのです。
素人ながら実現したいことを伝えると、「こんなイメージですか?」と一旦案を作ってきてくれるので、イメージの擦り合わせもスムーズにできました。また納期が比較的短いなかでの依頼であったにもかかわらず、きわめて俊敏に動いていただけたのも非常に印象的でした。まさにアジャイル的な進め方だったと思います。
──単に「聞いたことをきれいに整理するためのヒアリング」ではなかったということでしょうか。
平井様:全く違いました。FLMさんがやってくださったのは制度の目的と背景を根底から理解するためのヒアリングであり、そういった具体的な言葉こそ出ませんでしたが「御社のために、大変お手数ですが深くお尋ねしているのです」という空気がひしひしと伝わってきました。
そういった丁寧なキャッチボールを経て作られたものだったからこそ、技術者認定制度の事務局側の運営マニュアルは短時間で、きわめて高品質なものが出来上がりました。社交辞令ではなく、もしも「マニュアル作成」という競技があったとしたら、FLMさんは間違いなく金メダル候補だろうと私は思っています。
マニュアル作成を専門家に外注することの大きな価値
──そして新しいタレントマネジメントシステムのマニュアル作成においても、同様のヒアリングと作成が行われたのですね。
平井様:技術者認定制度の運用マニュアルの作成時と同様に素晴らしい対応だったと部下から聞いています。とにかく丁寧で真摯なヒアリングが行われますので、部下は「そういえば、自分はそんなことも考えていたな」といったことがどんどん引き出されていったとのことでした。
私の何倍もの時間、FLMさんからのヒアリングを受けた部下の話をしますと、一度ヒアリングに行くと、何時間も帰ってこないんです。それで私は「ちょっと負担に感じているかもしれないな」などと心配するわけですが、帰ってきた部下は全く疲れていない様子で、むしろスッキリした表情をしていました。自分の中であまり整理されていなかったり、考えてもいなかったりしたことが、FLMさんのヒアリングを受けたことで明確になったのでしょうね。
──まるで優秀なカウンセラーのカウンセリングを受けたかのようですね。
平井様:まさにそうだったかもしれません。そして、そういったヒアリングを経て完成したマニュアルは絶妙な粒度感であり、さすがの構成力でした。ボリューミーすぎることなく、かといって少なすぎて内容がわかりづらいということもない。図表の量や配置も良い塩梅でした。また一度作っていただいたマニュアルをその後自分たちでメンテナンスしやすいような配慮もいただけたり、メンテナンス時の説明文の粒度も前後を参考にできるため、その後の部下の生産性向上にも繋がっています。
マニュアルとは、本来は「初めて見る方でもわかるもの」でなければなりません。ですが、その分野の前提知識がある担当者がマニュアルを作成すると、初見の社員が見るとよくわからないということがよくあります。FLMさんが作るマニュアルは読み手のことを本当に意識していますので、そのシステムに初めて触れる方であっても、初見でスッと理解できるのです。
──新しいタレントマネジメントシステムとマニュアルの導入後、現場からの「操作方法に関する問い合わせ」はありましたか。
平井様:新しいシステムにしたので、大量に問い合わせが来るかと思っていましたが、全く来ていません。たまに、マニュアルを読まない人から問い合わせが入ることはありましたが、「マニュアルのこのページを読んでみてもわからなかったら、もう一度連絡してください」と返すと、その後の問い合わせはいっさい来なくなりますので、マニュアルだけで十分に理解できたのではないかと想像しています。
──マニュアルの完成と導入後、人材育成にはどのような変化が生じましたか。
平井様:タレントマネジメントシステムはいわば、人材育成の土台となるものであるため、わかりやすく定量的に人材育成が良くなったと説明するのは難しいですし、まだタレントマネジメントシステムを活かしきれていないというのが実状ですが、「より大きなゴール」に向かうために、実用的なマニュアルの整備は非常に重要なピースであることは間違いありません。
そういった重要なピースであるにもかかわらず、システムのマニュアル作成は内製で実施しがちです。そうすると不完全なマニュアルが完成してしまい、結局社内の問い合わせが増えたり、システム活用のハードルが高くなることが多いように思います。メンバーや会社の成長を考えるのであれば、そういったマニュアル作成こそ、プロに依頼するべきではないでしょうか。今回のマニュアル作成に投じた外注予算にはきわめて大きな価値があったと、私は確信しています。
富士通ラーニングメディア担当者からのメッセージ
弊社の構成力やスピーディな対応などを過分にお褒めいただきましたが、そもそもニッセイ情報テクノロジー様からのフィードバックが真摯かつ的確であったからこそ、質の高いマニュアルを作ることができたと思っております。また「こういったものを作りたい」というビジョンもきわめて明確であったため、私どもも、そこに到達できるよう頑張りたいと思うことができました。
しつこいぐらいにヒアリングをさせていただきましたが、嫌な顔ひとつせずご対応くださったニッセイ情報テクノロジーの皆様のおかげで良いものを作ることができたと感じています。
弊社は今後も、皆様のご期待に応え続けられる存在であり続けたいと願っています。
本案件を私が前任者から引き継いだのはちょうどコロナ禍のタイミングで、平井様や他のメンバーの皆様となかなか直接はお会いできず、Web会議や電話でのやりとりが続きました。しかしニッセイ情報テクノロジー様は、いわゆるクライアントでありながら、我々と同じ目線でのやりとりを真摯に行ってくださいます。そういった信頼関係が十分に出来上がっていたからこそ、コロナ禍であっても、そして比較的短い納期のなかでも、大きな問題なく完成までこぎ着けることができました。
これからも、日本生命グループの人材育成を支えるニッセイ情報テクノロジー様の良き伴走者として、ご一緒できたならば幸いです。
※ 本記事の登場人物の所属、役職は記事公開時のものです。