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【第7回】新設プラントにおけるRAM分析実施事例

この章では日揮で実施したLNGターミナル建設工事における RAM 分析を紹介する。図4.1 において、「公開データベース」→「故障分析」→「信頼性ブロックフロー図」→「プロセス設計、再設計」の手順に従って実施した設計段階の検討としてのRAM分析である。この分析により、設計された機器やその構成が十分な稼働率を確保できるかどうかを検討する。

1.前提条件

  1. 稼働率
    稼働率は、全運転期間における対象設備の運転期間を指し、以下の式で定義する。

    稼働率[%] = (全運転期間-停止期間) / 全運転期間 x 100

    なお、全運転期間には、保守準備時間や再スタート時間も含む。

  2. システム効率
    システム効率とは、システム(設備やプラント)の設計生産量に対する予想生産量の割合である。

    システム効率[%]=予想生産量 / 設計生産量 x 100

  3. クリティカリティ
    クリティカリティは、システム効率低下に対する各機器の影響の程度を示す指標であり、ボトルネックとなっている機器を特定する。 クリティカリティは評価結果の考察に利用する。

  4. 対象機器
    ガス出荷に必要な機器、システム等を抽出し、分析対象となる信頼性ブロックフロー図を作成した。
  5. plcmNo7-1

    表 5.1 機器構成(プロセス側)

    plcmNo7-2

    表 5.2 機器構成(ユーティリティ側)

  6. 故障確率データ
    機器の故障確率データは、下記データベースから適切な値を設定した。

    公開データベースOREDA (Offshore Reliability Data)
    製造者データベース
    日揮所有データベース

    故障確率の分布は全て指数分布に従うとした。指数分布は物体の強度を表すワイブル分布の特殊な形であり、偶発的な故障を表現する確率分布として使用されている。

2.保全スケジュール

製造者推奨の定期保全、及び法規上要求される検査を考慮した機器の保全スケジュールを想定し、シミュレーションに組み込んだ。保全中は対象の機器を稼働させることが出来ない。また、電源系統は複数系統に分けて構成されているが、電源系統の保全時は、該当する系統から電気を供給されている機器は稼働不可となる。

3.分析結果とその考察

3.1分析結果

分析の結果、稼働率とシステム効率は以下となった。

  • 稼働率 = 99.98 %
  • システム効率 = 99.95 %

クリティカリティを表5.3に示す。

plcmNo7-3

表 5.3 ガス出荷クリティカリティ

3.2分析結果の考察

  1. 稼働率の評価
    海外におけるLNG基地からのガス出荷の事例では、目標値99.5%に対し、分析結果として99.6 - 99.8%の結果が報告されている。本検討ではこの海外事例の以上の結果である99.98%という稼働率を達成しており、LNG基地のガス出荷として十分なレベルにあるといえる。

  2. 評価結果の要因
    前述のように、ガス出荷は稼働率99.98%、システム効率99.95%と高い値になっている。まず、高稼働率の要因について述べる。

    1. LNGプライマリポンプ
      冗長性が十分確保されているため、ガス出荷が高い稼働率に保たれている。
    2. 高圧気化器
      高圧気化器の冗長性が高く、高稼働率を達成している。
    3. ユーティリティ設備
      計装空気設備は冗長化設計であり、全ての系統が失われない限り、運転可能である。この設計のため、高稼働率を保っており、システム効率も高い。
    4. 電源系統
      電源系統は複数系統用意されており、複数並列設置の機器の電気負荷を分担している。したがって、電源系統の保全時もガス出荷を保持できる。

    以上が高稼働率、高システム効率の要因である。

    続いて、システム効率低下に与えた要因について検討する。
    表 5.3のクリティカリティを見ると、主な要因は「LNGセカンダリポンプ」、「海水設備」である。「その他」は上記以外のクリティカリティ要因の総和である。

    1. LNGセカンダリポンプ
      クリティカリティの74.5%を占めており、内訳は、「保全あるいは故障による電源系統の喪失(32.1%)」、「ポンプの故障(33.1%)」、「ポンプ保全(9.3%)」となっている。電源系統の1系統を保全する場合は、ポンプ2基が使用不可となり、このときポンプがさらに1基故障するとガス出荷量に影響が出る。このため、稼働率やシステム効率の低下に直結する要因として、このポンプのリティカリティが大きくなったと考えられる。
    2. 海水設備
      クリティカリティの10.6%を占めており、その中でも大きな要因は、「保全あるいは故障による電源系統の喪失(6.8%)」、「LNG気化器用海水ポンプの故障(3.0%)」である。しかしながら、電源系統の1系統の故障時でも、2基の海水設備ポンプが稼働可能である。


    以上から、クリティカリティの主要因となるLNGセカンダリポンプに対して、電源系統の保全時、あるいは故障時における運転に留意することにより、システム効率の低下を抑えることができると考えられる。

    上記のように、プラントを運転する前に、設計内容・条件と故障データベースからRAM分析を実施し、プラントの稼働率、さらに稼働率を下げる要因の特定とその対応策や改善策を検討することができる。

 

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