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【第1回】日揮グループが提唱する「プラントライフサイクルマネジメント」の考え方と「戦略的な保全のPDCAサイクル」のご紹介

日揮情報システム(現:富士通エンジニアリングテクノロジーズ)は、「プラントライフサイクルマネジメント(PLCM)」に関する技術情報を、今後12回にわたり、本メルマガに掲載予定です。今回は、第1回目として、日揮グループが提唱する「プラントライフサイクルマネジメント」の考え方と「戦略的な保全のPDCAサイクル」をご紹介します。

1. プラントライフサイクルのコンセプト

日揮グループの主たる業務は、プラントビジネスである。日揮グループの業務対象としての「プラント」は、「広く、大規模社会インフラストラクチャーから生産設備まで含めた設備・施設」を意味する。

上記の意味での「プラント」のライフサイクルに目を転じると、プラントライフサイクルとは、投資計画段階から建設を経て運転、保守、廃棄に至るまでのサイクルであり、短いもので10年、長いもので30年から50年ぐらいである。インフラストラクチャーや大型のプラントは、経済性検討や計画立案による準備段階を経て、建設が始まる。建設が大型になるので、建設への投資金額が注目されやすいが、実際には、建設後の30年から50年にわたる運転・保守にも多額のコストがかかる。

改めて、プラントのライフサイクルと概略年数は、図1.1のように考えられる。つまり、フィジビリティスタディ(投資計画段階)からFEED(Front End Engineering Design、基本構想)、EPC(Engineering基本設計、詳細設計、Procurement調達、Construction建設工事)、建設後の運転・保守(Operation & Maintenance: O&M)からDecommissioning(廃棄)までがプラントライフサイクルであり、その概略年数は図1.1のように、約60年に及ぶ。

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図1.1 プラントライフサイクルのコンセプト

図1.1からわかるように、プラントライフサイクルでは、設備投資に加え、プラント稼働後の30年から50年の長期にわたる運転と保全のコストパフォーマンスが重要である。したがって、投資計画段階においては、設備投資(CAPEX:Capital Expenditure)も重要であるが、運用コスト(OPEX: Operating Expenditure)も劣らず重要であり、この2つのコストのバランスに関する最適化を図ることが求められる。 建設までは、設備投資の金額の多寡に注目が集まるが、建設後の長さを考えると、インフラ建設後やプラント稼働後においては、実際に発生する運転と保全のコスト、つまり、運用コストを最適化することが重要な課題となる。

2. 戦略的な保全のPDCAサイクル

前述のように、プラントライフサイクルの最適化では、運用コストの最適化が、設備投資に負けず劣らず、重要となる。運用コストの最適化には、プラントの運転と保全のPDCA、つまり、運転と保全の計画立案から、実施、作業データの分析に基づく次の計画立案へのサイクルの最適化が重要となる。

日揮情報システム(現:富士通エンジニアリングテクノロジーズ)は、保全管理システムとして、自社開発アプリケーションである「PLANTIA」、また、パートナー契約を結んでいるインフォア社の「Infor EAM」を取り扱っている。このシステムを導入すると、保全計画から作業実施、作業履歴までの保全の業務をカバーすることができる。戦略的な保全PDCAサイクルを考える場合、システムでカバーされる作業履歴、およびこれまでの予算・予備品などの使用実績が、次の保全計画に有効に生かされることが望ましい。 弊社の提案する戦略的な保全PDCAサイクルは図2.1に示すように、保全履歴を「保全分析」と「保全戦略」のフェーズを経て、次の保全計画の立案に利用するサイクルである。

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図2.1 戦略的な保全PDCAサイクル

このサイクルで中心となるリスク分析手法が、RAM(Reliability, Availability, Maintainability: 信頼性, 稼働率, 保守性)、RCM(Reliability-Centered Maintenance:信頼性中心保全)、RBI(Risk-Based Inspection: リスク基準型検査)である。

RCM、RBI、RAMは、保全におけるリスク分析手法であり、これらの手法は、保全や運転の実績・およびそのデータを分析し、計画立案を行い、保全・運転の実施を行うサイクルを含む「戦略的」保全・運転サイクルを実施するベースとなるものである。このイメージを図2.2に示す。

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図2.2 戦略的な運転・保全作業ステップ

今後、本稿を含めて12回にわたり、読者の方々の参考になることを願いつつ、RCM、RBI、RAMのコンセプトと、日揮グループの遂行するプロジェクトに実例に基づく具体例を紹介する。 これらの手法は有名な手法であり、各方面で紹介されているので、今後の日揮情報システム(現:富士通エンジニアリングテクノロジーズ)の紹介は、できるだけ、具体的な例をベースとして、RCM、RBI、RAMの実例イメージが理解できるように行う予定である。

 

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