「プラットフォームビジネス」とは、「他のプレイヤーが提供する製品・サービス・情報と一緒になって、初めて価値を持つ製品・サービスを提供するビジネス」のことです。「プラットフォームビジネス」の意味について、LINEの事例を交えながら富士通総研 田中 秀樹がご紹介します。
スマートフォン向けのメッセージングアプリ「LINE」の登録ユーザー数は2013年11月に3億人を突破しました。1億人を突破するまでは、2011年6月のサービス開始から19ヶ月間かかりましたが、2億人から3億人までは4ヶ月間という短期間での到達でした。このユーザー数急増の裏には「プラットフォームビジネス」という成長の仕組みがあります。
「プラットフォームビジネス」とは、「他のプレイヤーが提供する製品・サービス・情報と一緒になって、初めて価値を持つ製品・サービスを提供するビジネス」のことです。たとえば、「LINE」はコミュニケーション用のチャットや無料通話などのサービスを提供していますが、LINEだけでは価値がなく、ユーザーというプレイヤーがメッセージを交換することで初めて価値を持ちます。さらに、ユーザーに「スポンサードスタンプ」などを提供する「広告主」というプレイヤーが加わることで、さらにコミュニケーションプラットフォームとしてのLINEの価値をあげています。
プラットフォームビジネスを行なっているのはLINEだけではありません。Apple、Amazon、Google、楽天といった企業もプラットフォームビジネスで急速にビジネスを拡大させています。なぜプラットフォームビジネスは急成長を可能にさせるのでしょうか。
プラットフォームビジネスには「ネットワーク効果」が働きやすいという特長があります。ネットワーク効果とは、その製品やサービスのユーザーが増えれば増えるほど、それぞれのユーザーがその製品・サービス自体から得られる効用や価値が大きくなることを指します。
たとえばLINEの価値は、アプリの使いやすさやスタンプの面白さ、スムーズにアクセスできるといったサービスそのものの質だけではなく、自分の友だちがメンバーになっていてコミュニケーションできることによる部分が大きいといえます。
LINEのユーザーが1人しかいないと、LINEの価値はほぼゼロに等しいですが、ユーザー数が多ければ多いほどコミュニケーションの可能性が広がり、LINEの価値は大きくなります。これがネットワーク効果です。さらに、ユーザー数が増えると、広告メディアとしての価値が上がり、広告主も増えるという効果もあります。
また、プラットフォームビジネスではネットワーク効果が働いた特定の製品・サービスが急成長してシェアが高くなる傾向があります。つまり、「ひとり勝ち」現象が起こりやすいのです。ひとたびユーザー数の拡大サイクルに入ると増加スピードが加速し、LINEのようにユーザー数が爆発的に増える結果となります。
LINEは「モバイルメッセージングサービス」としてスタートしました。当初は自らをプラットフォームとは呼んでいませんでしたが、ユーザー数が約5,000万人に達した頃に「プラットフォーム化」を宣言しました。このことから、ユーザー数の拡大サイクルに入ったのでプラットフォームビジネスを意識するようになった、と思う人がいるかもしれません。
「実は、最初からプラットフォーム化はビジョンとして持っていました」とLINE株式会社 舛田執行役員は書籍『プラットフォームビジネス最前線』のインタビューの中で語っています。プラットフォームビジネスとしてLINEを確立させるために、「ユーザー数の規模」、「提供するサービスが効果的につながる」、「収益化できる」、の3点を条件にして、サービスや施策を試行錯誤しながら追加してきたそうです。
LINEのような事例から、プラットフォームビジネスとは億単位のユーザー数を抱える大規模なもの、と思うかもしれませんが、規模は大きくなくても個別のカテゴリーで成功しているプラットフォームビジネスは決して少なくありません。自社が製品やサービスを提供しているカテゴリーでもプラットフォームとして、ひとり勝ちをするチャンスは見つかるはずです。
Webサイトのサービスを考える際は、自社のリソースだけで考えるのではなく、他社やユーザーをプレイヤーとして上手に巻き込み、それらの力を借りて成長する、「プラットフォームビジネスの視点」で考えると短期間で利用が広がるサービスが生まれるかもしれません。
(株式会社富士通総研 田中 秀樹)
株式会社富士通総研(FRI)
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